戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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シュウェラーの新刊:無秩序化する国際関係

今日の横浜北部は晴れ時々の微妙な天候がつづいております。

さて、久しぶりに本の紹介を。

国際関係論では元々ハードコアなリアリストであった理論家のランドール・シュウェラーというオハイオ大学教授が、かなり斬新な理論による未来の国際関係のビジョンを示しております。

Maxwell's Demon and the Golden Apple: Global Discord in the New Millennium
by Randall L. Schweller
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タイトルを直訳すると、「マクスウェルの悪魔と黄金のリンゴ:新世紀における世界の不調和」という感じでしょうか。

ある論文を拡大したもので、本文はたった160ページ。薄いのですが、議論そのものは物理やギリシャ神話などから概念を引っ張ってきて国際関係に当てはめるという、なかなか野心的なもの。

具体的な主張は意外にシンプルで、「今後の国際関係はエントロピーの増大によって無秩序化していく」というもの。

単純といえば単純かもしれませんが、私見ではこの本の「売り」は、なぜ無秩序化なのかという理屈を引っ張って来るやり方と、それがどのように進むのかというロジックの部分を、比較的わかりやすい文体でしっかりと押さえているところにあるように思います。

著者は基本的に世界の秩序が大規模な戦争(覇権戦争)によって作られているとする強固なリアリスト的な見方をベースにしつつ、そこから大きくわけて3段階の論理展開から、世界が無秩序化することを主張しております。その3つとは、

1,大国同士が破壊力の大きい兵器を持っているために「覇権戦争」は起こらない
2,現在の覇権の盟主であるアメリカが衰退している
3,エントロピーによるズレを「覇権戦争」によって修正できないため、無秩序化が進む

というものです。

ギリシャ神話や熱力学第二法則などの応用については、そのやり方がジョン・ボイドが行っていたものに近いなぁという印象を受けましたが、その語り口の軽さ(REMの歌詞や携帯のゲームアプリなどを引き合いに出している点など)は、テーマの難しさにもかかわらず、どちらかといえば取っ付き易い印象を与えてます。

果たしてこの本が売れるかというとかなり微妙ではありますが、国際関係論の理論についての議論に一石を投じているという意味では、斬新な試みによる注目すべき本でしょう。

一般向けではないですし、おそらく翻訳も出ないでしょうが、現在の無秩序だった国際関係をうまく説明している本として、そのスジの専門家は見逃せない好著です。



奥山真司のアメリカ通信LIVE


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by masa_the_man | 2014-06-21 18:06 | 日記 | Comments(0)