戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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ミアシャイマーの「台湾さようなら」論文:その1

今日の横浜北部はよく晴れまして、ほとんど初夏のような陽気でした。

さて、個人的にいくつかの対外的なイベントが一段落しましたので、少し落ち着いて気になっていた学術論文の要約を。

これは最近ナショナル・インタレスト誌に発表された、ミアシャイマーの台湾に関する論文です。日本でも一部のメディアでは取り上げられてましたね。

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台湾に「さようなら」を言おう
by ジョン・ミアシャイマー

●「中国の台頭が続いている」という事実は、台湾にとって何を意味するのだろうか?

●ただしこれは今日や来年の話ではない。台湾が本物のジレンマに直面するのは数十年先の、経済成長が(確実とはいえないが)続いて、今日よりもはるかに強力になった中国に直面した時の話だ。

●現在の中国は、軍事力の面ではそれほど強力であるというわけではない。軍隊は粗悪であり、米軍にははるかに及ばない存在だ。現在の状態で米国に軍事的に闘いを挑んでしまえば、北京政府にとっては取り返しのつかない失敗につながるだけだ。

●いいかえれば、中国は現在の世界のバランス・オブ・パワーに制約を受けているのであり、しかもそのバランスは明らかにアメリカに有利な方へ傾いている。

●ところがパワーというのは同じ場所に留まっていることはほとんどない。

●ここで本当に重要となる質問は、「バランス・オブ・パワーが台湾とアメリカにとって極めて不利に傾き、中国が現在よりも相対的に遥かに多くのパワーをコントロールしていて、しかもアメリカと同じ規模の経済力と軍事力を備えてしまっているような未来の世界で、一体何が起こるだろうか?」というものだ。

●つまりこれは、中国が現在よりもはるかに制約を受けていない状態にある世界、ということだ。これはありえないように思えるし、不吉な感じがするものであるが、それでも実際にそのような時代が来るかもしれないのだ。

●これは私の確信である。中国の台頭の継続は、台湾にとって大きな結果をもたらすことになり、しかもそのほとんどが台湾にとって悪いものになるはずだ。

●中国は今日に比べて遥かに強力になるだけでなく、しかも台湾を自国の領土の一部にすることについては、引き続き真剣に取り組んでいくはずなのだ。

●さらにいえば、中国はアメリカが西半球で行ったのと同じようにアジアを支配しようとするだろう。これはつまり、アジアにおける米軍のプレゼンスを(消滅させるまでには至らないにしても)低下させようとし続けるということだ。

●もちろんアメリカは、これについて激しい抵抗をするだろうし、中国の台頭する国力を封じ込めようと必死で努力するはずだ。そこから起こる安全保障競争は、どのような結果になろうとも、台湾にとっても都合の悪いものであるのは確実だ。時間は台湾の味方ではないのだ。

●以下でこれから述べるのは、アメリカと中国、そして台湾の間で一体何が起こるのかを予測したものである。

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●ほとんどの台湾人にとって理想なのは、主権を得て国際的にも「独立」を承認されることであろう。これが魅力的なのは、過去の65年間で台湾人の間に(中国とは異なる)「台湾」という強力なアイデンティティが生まれたことに原因がある。

●自分たちのことを「台湾人」とみなす人々は、自分たちの国民国家を当然欲しいと思うものであり、中国本土の一つの「省」になることには。ほとんど意欲を示していない。

●台湾の国立政治大学にある選挙研究所の調査によれば、1992年には台湾在住の17.6%の人々しか自分たちのことを「台湾人」だと感じていなかったという。ところが2013年にはその数が57.5%に上昇しており、明らかに多数派になってきている。「中国人」と答えた人はたった3.6%だったという。

●さらにいえば、2011年に行われた台湾国家安全保障調査によれば、もし台湾が独立宣言を行っても中国本土から攻撃されないことが確約されている仮定した場合、実に80.2%もの台湾人が独立を選ぶ、と答えたという。

●また、別の最近の調査では、台湾人の80%もの人々が、台湾と中国が別々の国であると見なしていることが判明している。

●ところが台湾は、予見できる将来において、公式な独立を獲得することはない。その主な理由は、本土の中国が、そのような結末を看過するわけがないことにある。

●実際のところ、中国は「もし台湾が独立を宣言したら戦争を仕掛ける」と明言している。2005年に制定された「反分裂国家法」では、台湾が独立への動きを示した瞬間に「(北京)政府は非平和的手段やその他の手段をとる」ということを明らかにしている。

●さらに注目すべきことは、アメリカも台湾を主権国家として認めていないということであり、オバマ大統領によれば、ワシントン政府は「一つの中国という政策を完全に支持」しているのだ。

●したがって、台湾が予見できる将来にわたってせいぜい望めるのは「現状維持」であり、これはつまり「事実上の独立状態」であるということだ。その証拠に、前述した国立政治大学の選挙研究所が去年の6月の調査結果によれば、90%の人々が半永久的、もしくは将来のいつかの時点まで現状維持を続けるべきだと答えているという。

●起こりうる中で最悪のシナリオは、北京の主導による中国との統一である。

●もちろん統一というのはさまざまな方法で起こりうるものだ。おそらく最もマシなものとしては、台湾が現在の香港のように、かなりの自治的な状態を保った形での統一であろう。北京の主導者たちは、このような解決法を「一国二制度」と言っている。

●ところがこのような解決法は、台湾人には受けが良くない。ある記者が言うように、「台湾の大多数の人々が、たとえば有利な条件であったとしても統一には反対しております。長期的な追跡調査でも、統一への支持が段々と落ちてきていることが示されています」というのだ。

●端的にいえば、事実上の独立状態というのは、その政治的な状況がどのようになろうとも、「中国の一部になる」よりは、はるかに好ましい選択肢なのだ。

●ところが台湾にとって決定的な質問は、「台頭しつつある中国に直面しても、統一されるのを避け、事実上の独立状態を維持できるのか?」というものだ。

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●では中国の側から見た場合はどうであろうか?彼らは台湾をどのように考えているのだろうか?

●中国の台湾についての見方には、二つのロジックがある。一つはナショナリズムと共に発展したものであり、もう一つは安全保障に関係したものだ。

●ところがこの二つのロジックは、最終的には同じ結論に到達してしまう。それは「中国と台湾の統一」である。

●まずナショナリズムの方の話だが、これは非常にわかりやすい。中国は台湾を自国の一部にすることについて真剣に取り組んでいるからだ。

●中国のエリートたち(と国民)にとって、台湾は決して主権国家になってはいけない存在だ。この場所は古代から中国の聖なる領土の一部なのであり、中国がまだ弱かった1895年に、憎き日本に取り上げられた場所だという

●そしてこの島は、再び中国の一部として統合されなければならないのであり、2007年に胡錦濤は第17回全人代で「両岸は中国国家の再生の過程で再統一される運命にある」と述べている。

●中国と台湾の統一というのは、中国側の民族主義的なアイデンティティの中核をなすものの一つであって、この問題に関して妥協は全く許されないものなのだ。その証拠に、北京政府の正統性(レジティマシー)の中には、台湾の独立国家化を防ぎ、将来的には統一することを確実にする、ということが含まれているのだ。

●中国の主導者たちは、台湾の吸収がなるべく早く行われるべきであり、しかもそれが平和的になされれば良いと主張している。それと同時に、彼らは「いざとなれば軍事力の行使も選択肢の一つである」ということを明確にしている

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まだまだ先は長いので、続きはまた明日。


by masa_the_man | 2014-04-28 22:58 | 日記 | Comments(0)