戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28

プーチンのメディア工作

今日の甲州は霞がかかっておりましたが、それでも朝から晴れておりました。

友人がイギリスから来ておりまして、今日から東京観光を本格的に始めるそうです。京都、大阪、山梨と回ってきているのですが、大阪の人はフレンドリーだけと英語が全然通じなかったと言っておりました。

さて、昨日Twitterのほうで紹介した、プーチンのプロパガンダ工作についての記事の要約です。

===

一つの国家に一つの声:プーチン・ロシアにおける報道制御
by マキシン・ディビッド

●ヨーロッパで実際に戦争が起こるかどうかは議論されているが、すでに言葉を使った戦争はロシアで実行されており、これによってプーチンの人気は増加し、西側の人気は下がっていると言える。

● これはEUがクリミア併合の結果としてドミトリー・キーセリョフという親ロシアのテレビ・ジャーナリストの個人資産凍結を示唆していることからも明白だ。

●クレムリンがプーチンの政権復帰からプロパガンダ活動を積極的に行っていることに気づいているのはEUだけではない。ジャーナリストの権利を保護する団体であるCPJがプーチンに宛てて書いた手紙で示されているのは、ロシアで実際に抑圧が起こっているということだ。

●皮肉な見方をする人々は、このような高いレベルのプロパガンダは、クリミア併合の結果としてロシアの一般市民が被る政治・経済的なインパクトが感じられる前に国民の支持を広く集めておきたいとする、プーチンの狙いによって行われていると見ている。

そもそもクリミアはウクライナの他の地域からの補助金に大きく頼っており、その負担を今度はロシアが背負うことになったのだ。

●ウクライナがあらゆる分野で経済的に問題をかかえていることはよく知られており、もし他の地域が独立するとなると、ロシア国民がその債務を引き受けなければならなくなってしまうのだ。

●現在の経済制裁はプーチン周辺の政治エリートたちを狙い撃ちしたものだが、この効果はまだ下の方まで降りてきてはいない。よって、ロシアにとってみれば、後で問題が出た時のために今のうちからスケープゴートを準備しておくのは合理的なのだ。

●より皮肉ではない見方からすれば、プロパガンダ作戦は「国家を一体化させるための試み」であるとみなすこともできる。

●これはプーチンが去年9月に行った「精神、文化、民族自決がなければ前進できないし、内外の問題にも対処できず、グローバルな競争にも勝てない」というスピーチにも明示されている。つまりロシアの明確なアイデンティティ構築が優先されているというのだ。

●扇動作戦は、プレハーノフとレーニンの伝統にもあるように、民衆の意見を味方につけて主導し、このスピーチに従う形で行われたのだ。

●したがって、西側諸国の悪行はあばかれ、「半分の真実」と、誤った情報を流すキャンペーが開始され、一般国民の恐怖と不満は、政治的な効果を発揮するために活用されることになったのだ。

このキャンペーンの「世界観」では、ロシアの未来はまずい国内の政策や、経済改革の失敗ではなく、むしろホモセクシャル(大抵は小児性愛者として描かれる)、移民、敵対的な西洋諸国の軍隊、ファシスト(ロシアのウクライナにたいするプロパガンダでは常用されている)、そして冒涜者たちに原因があることになる

●このような扇動キャンペーンは、クレムリンとは異なる視点を持つメディアが次々と閉鎖されていることによっても進んでいる。

●たとえば去年の12月にRIAノヴォスチはロシア・トゥデイ(Rossiya Segodnya)にとって代わられ、クレムリン寄りの宣伝家であるキセリョフがそのトップにつくことになり、ボイス・オブ・ロシアと外向けのロシア・タイムス(RT)が編入された。

●RTに関しては、リズ・ウォールというアメリカ人のアンカーが生中継中に、毎日の仕事をこなす上で「倫理・道徳的な面で問題に直面した」と言って辞任している

● このように三つのメディアを一つにまとめて異論を許さない状況にするというのは、当然ならが問題が出てくることになる。

●就任してから最初のスピーチで、キセリョフはRIAノヴォスチが本来果たすべき任務を忘れてしまったということを示唆している。

●彼は、「問題は国営ニュースメディアをどのように位置づけるかということだ。客観性というスローガンの元、われわれは現実の姿を歪曲して自国を外国のように見てしまいがちです。私はこのような蒸留された、疎遠なジャーナリズムの時代は終わったと考えております」と述べている。

●このスピーチを行った後の質疑応答の時に、キセリョフは政府のメッセージとロシアのメッセージをどの区別すればよいのかという点について尋ねられている。

●これについての彼の答えは恐ろしいもので、「父なる国土と政府にたいする態度を区別してください。もしあなたの計画の中に政府を転覆するような狙いが含まれていて、私の計画と一致しない場合は、私があなたに直接教えてあげますよ」というものだった。

●「一致しない場合」の例はすでに明確になっている。独立系のテレビ会社(Dozhd)は何十ヶ月にもわたって攻撃を受けており、ここはロシア政府高官の腐敗を暴いたり、ロシア史におけるいくつかの点に対して疑問を呈したり、キエフやマイダン広場から生中継するなどの報道のおかげで、大手チャンネルとしての資格を失ったり、広告主や衛星放送の放映権を失ったりしており、長期的には生き残れない状態となっている。

●エコー・マスコヴィーという独立系ラジオ局は「ソ連崩壊後のロシアのアイコン」とまで謳われていたが、ロシア政府の総務省と衝突して、今年三月にはウェブサイトが突然ブロックされている。その一ヶ月前には、このラジオ局のトップがクレムリンのPR部門担当者の妻に交代したこともあった。

●ネットは多くの人々のニュースの受け取り方に革命を起こしており、SNSの台頭は多くの国々の一般人が従来よりもはるかに多くの見解にアクセスできるようになったことを意味していた。したがってインターネットの普及率は、国家が扇動やプロパガンダに対抗する際の重要な指標となる。

●ほとんどの調査で判明しているのは、ロシアでは全人口の45%が常にネットを使っているという。

●こうなると、国家のメディアの統制に対抗できる挑戦者が多いわけで、そこには希望があることになる。実際にクレムリンが挑戦を受けているのは間違いない。

●もちろんインターネットをコントロールするのは難しいといえるが、それでもロシアのプロバイダーたちは何度も検閲を受けている

●ロシアではウェブサイトの検閲を容易にする法案(the System for Operative Investigative Activities SORM)によって、国家には七つも情報を阻止する権利を持った機関が存在することになり、実際にウェブサイトを何度もブロックさせている。

●しかもこの効果は甚だしく、その法案が成立してから最初の一年間で、サイトのブロックは1万4000件にも及んでいる。同じようなアメリカの法案(Stop Online Piracy Act :SOPA)の方は、猛烈な非難にさらされている。

●また、クレムリンは2010年から11年にかけての調査でもわかるように、ロシア人の大多数が世界についての情報のほとんどを国営テレビから受けているという事実によって助けられている。

●もちろんロシア国内には反体制派はいるし、元気なことは元気なのだが、それでも独立系のブロガーたちは、国営メディアに比べればその影響力ははるかに小さい。

●以前のようにまだ世界が安定して時期でも、ロシアにおけるメディアの自由度というのはあまり賞賛されるようなものではなかった。

●国連やNATO,OSCEがロシアの今後の対外政策の行方や周辺国におよぼす影響などを議論しているが、それよりも心配なのは、自由に対する抑圧の高まりである。

●現在見ている限りでは、ロシア国内では反西洋的な言説が盛り上がっている。そしてこれがロシア人の大多数の間でこのまま続くことになると、東西の間でまた「カーテン」が敷かれる可能性が出てくる。

●しかも今回の場合はその東西分断の線がはるかに東側になり、しかもそのために不安定で暗いものになるかもしれないのだ。

===

当たり前ですが、プーチンはけっこう「強権」ですよね。ただしこれはあくまでも「民衆からの支持」によって支えられている点も見逃してはならないかと。

まあその「民衆」を動かすところに肝があるのかもしれませんが。

それにしても『自滅する中国』で指摘されているロシア側の世界観というのはやはり当たっているんですね。これを読んであらためて納得しました。


Commented by だむ at 2014-04-17 19:47 x
そういやあれですな、例の「クリミアの美女検事総長がイラストになって大人気」というニュース。

アレで紹介されたイラストの投稿サイトをよく確認してみると、ニュースに紹介されたイラストを投稿したのは日本人がいないんですな。アイスランド在住の中国人とか韓国人とか。それもどこまで本当かはわからんけど。
Commented by sdi at 2014-04-17 23:48 x
>それにしても『自滅する中国』で指摘されているロシア側の世界観というのはやはり当たっているんですね。
この点、同意です。あの本は、対中だけでなく対露でも使えるんですね。昨今の世界情勢にベストフィットな本ですね。ルトワック氏が今回のウクライナ事変の本を出すとしたら、やはり2年後くらいでしょうか?タイムリーなルトワック氏の分析本を読んでみたいのですが、ちょっと無理ですかね。
それにしても、プーチン政権のプロハガンダというかメディア戦略はよく考えられてると思いますよ。ただし、私はプーチン政権のメディア戦略はやはりテレビ、新聞、ラジオなどが中心でネットのほうは二の次なんじゃないかと思います。SNSにしても、SNS独自のニュースというのは少ないです。そのの場合、情報源の信頼性の問題もありますしね。多くの場合、既存メディアの転載が多いんじゃないでしょうか。
あと、私の個人的な印象ですがプーチン政権のプロパガンダはネガキャンは抑え目(あくまで比較的)、指桑罵槐みたいな真似はせずダイレクトアプローチが主かな、と思います。
Commented at 2014-04-22 18:06 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 朽木倒 at 2014-04-27 20:20 x
ロシアの論理(武田 善憲)というまぁ新書なんですが、それによると

ロシアは一部の人間がエネルギーを牛耳り、政治と経済を同時に
ほしいままにしていた。

政治と経済を切り離す為に、政治的には独断的でありながら
事後で説明責任を果たす方針で、かつ「法的」な国家を目指した。

プーチンの8年間はその為にあり、その後を継げる人材として、
同じ「法律家」であるメドベージェフを選ぶ。
↓(ここから私見)
エネルギー産業以外の産業が立ち上がってくれなかった事も
あり、失敗。

仕方なくプーチンが復権したが、話の流れ上独裁をせざるを
得なくなり、かつその後の展開も実質ノープラン。

という流れっぽいんですよね。
「政経」で資源を一部の人が自由にする状態を断ち切った上で、
経済人が政治からのインサイダー的な情報を得られないようにして、
ある意味で経済的にフェアな状態を作る事で、
健全な経済=産業が成立していく事を望んでいたようなんですが、
エネルギー経済から脱却できずに、グダグダになった強権っぽく、
結果、持続的で維持だけが目的のオールドスタイルな強権に。
まぁ、旧共産権に対してはそれとは関係なくアレなんですが。
by masa_the_man | 2014-04-17 14:15 | 日記 | Comments(4)