戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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「共通の敵」は大事だ

今日の横浜北部は、雨が上がって一度晴れたのですが、また夕方から小雨がパラパラ。風が強くてサクラの花びらが舞っておりました。

さて、すでにメルマガのほうに書いた「共通の敵」というテーマなのですが、このブログでは最近再び読み返した地政学の祖、マッキンダーの論文の中に、とても参考になる箇所を発見。

ということで、この「共通の敵」というテーマについて、さらに詳しく論じられている重要な部分を、まずは抜きだしてみたいと思います。

引用する本は『マッキンダーの地政学』(原題:『デモクラシーの理想と現実』)でして、その中に掲載されている「地理学から見た歴史の回転軸」という超有名論文の中の一部です。
 
ただし故・曽村氏の訳文には少々間違いがありますので、私が原文を参照にしながら一部を修正しております。

===

●国家を組織しようという考えは、おおむね共通の苦難の洗礼を受けたところから生まれてきた。つまり、共同して外部の圧力に抵抗するという必要が、それぞれの国家の成立をうながしたわけである。(p.254)

●英国が七王国の体制のもとにどうやら国家としての姿をなしたのは、デンマークやノルマンディーからの乱入者のおかげであった。

●また、フランスが国家として成立したのは、それまでがたがいに戦っていたフランク族、ゴート族およびローマ人等がシャロンの戦場で一致団結してフン族と戦った経験がもとであり、さらに英国との百年戦争が、彼らの国家意識をさかんにした。

●キリスト教社会の観念は、ローマの迫害のもとで生まれ、十字軍の征服行を通じて熟成された。

●アメリカ合衆国の観念が一般の人々に受け入れられたのは、長い独立戦争のプロセスを通じてであって、それまでは、いわば植民地ごとの地域ごとの愛国心があったにすぎなかった。

●ドイツ帝国の思想は、フランスとの戦いにおいて、南ドイツの王国が北ドイツと連携した後に、はじめてふしぶしながらも受け入れられた。

時にはぞっとするような不愉快な人間が、彼の敵を団結させるのに有益な社会的役割を果たすこともある

●ともかくヨーロッパの文明の花開いたのは、あくまでも外民族の野蛮な行為に対する「抵抗の歴史」を通じてであった。

●事実、「ヨーロッパの文明」と称するものは、とりもなおさずアジア民族の侵入にたいする、ごくありきたりの意味の「戦いの産物」にほかならなかった。(以上、p.255)

●ヨーロッパの近代史の多くの部分は、事実これらのアジア民族がもたらした変化に対する注釈として書かれてもさしつかえないだろうと思う。(p.259)

===

いかがでしょうか。

ここから考えれば、たとえば日本という国家の成立も、白村江の戦いに敗れたために唐・新羅という外の脅威に対抗するためと解釈できそうな。

今回のプーチン大統領は、まさに西洋諸国にとってのこの「外民族の野蛮な行為」に当たるわけですが、このような「ある集団」にとっての「共通の敵」の存在というのは、とっても大事です。

なぜなら「共通の敵」によって、「われわれ」は一致団結してまとまることができるからです。

そしてこの外の敵の存在によってアイデンティティを作るという作業は、どのレベルの集団においても共通してみられること。

たとえば「ネトウヨ」がヘイトスピーチをしていることが最近ニュースとして取り上げられますが、これは彼らが中・韓などを一つの「共通の敵」とみなすことによって「日本」としてまとまろうとするメカニズムが働いているといえます。

ところがこの「ネトウヨ」を批判する人たちにとっても、彼らを仲間と一緒に批判することによって、批判している者同士の結束が固くなるという現象、つまり「ネトウヨ」を「共通の敵」にすることによって、自分たちも「差別しない優秀な俺たち」という排他的なアイデンティティをつくるわけですから、実は同じ穴のムジナ状態です。

というか、すべての政治闘争というものには、この「共通の敵」によるアイデンティティ作りというメカニズムが多かれ少なかれ働いております。

「なんだか救いようがないなぁ」

というのは実は正しい感覚かもしれません。なぜならこれこそが人間という非合理的な存在が行う「政治」という不可思議な営みの、真髄の一つだと言えますので。


Commented at 2014-04-05 11:16 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by えんき at 2014-04-05 21:03 x
絶対矛盾的自己同一の様な話ですね。
Commented by 田中 at 2014-04-05 21:31 x
救いがないのは一致団結するために、共通の敵を外部だけでなく内部作ってしまうこと。徹底した異物排除は内部に異物を見出してしまう。
外部と内部に敵を作り続けることだから、救いがない。
Commented by 野間易通 at 2014-04-06 02:32 x
死ぬほど薄っぺらい分析ですが大丈夫ですか(笑)。

> つまり「ネトウヨ」を「共通の敵」にすることによって、自分たちも「差別しない優秀な俺たち」という排他的なアイデンティティをつくるわけですから、実は同じ穴のムジナ状態

「「ネトウヨ」を批判する人たち」が「差別しない優秀な俺たち」という「排他的なアイデンティティ」をつくったということを示すテクストはどこにあるのでしょう? 

またその論法では、あなた自身とコメント欄であなたに賛同したり慣れ合ったりしている人たちは、「ネトウヨもネトウヨ批判の人たちも同じ穴のムジナだと理解できる優秀な俺たち」という「排他的なアイデンティティ」を形成しているとも言えるわけで、あらゆることに無限に言えてしまう。

要するにこれ何も言ってないでしょう(笑)。

無限の相対主義にはまって、なにかを高みから冷笑したいという欲望は、多くの場合自己を客観的に見る視点を欠いています。

Commented by 野間易通 at 2014-04-06 02:34 x
ただ、「共通の敵をつくることで結束するのだ」みたいな、それこそ2000年ぐらい前から普通に言われていることをわざわざ言うにあたって、統一されたアイデンティティを持たない「ネトウヨ批判の人たち」を持ちだしたのは、かなりの失態かも。

なぜなら誰も「俺らは優秀だ」とは言っておらず、「ヘイトに反対するのは普通のことじゃね?」という論調が大半であり、また別に一致団結もしていないからです。それが「優秀な俺たち」というアイデンティティを形成しているようにあなたには見えた。

つまり「ヘイトスピーチに反対の声を上げている人たちが俺には優秀に見えてむかつく」と言っているにすぎず、共通の敵どころか存在しない敵にむかって「救いようがない」と嘆いてみせるその間抜けさが、このエントリーの最大の特徴です。

Commented by 野間易通 at 2014-04-06 02:34 x
またこれは、ちょっと斜に構えたことを言えば、どんなに内容がなくともとりあえず何かを俯瞰している=わかっているように見られがちな、日本社会の知的水準の低さの表出でもあります。

電車の中で痴漢を注意している人を見てもおそらくこういう反応にはならないのでしょうが、ことヘイトスピーチといった言論ベースのものになったとたんにこうした思考停止に陥るのは、なんとかして正邪の判断から逃れたいというナイーブな感性が思考を支配しているからではないかと思います。
Commented by ランバダ at 2014-04-06 11:42 x
ていうか社会「科学」なんで、構造の話をしてるんで、
正邪の判断はとりあえず置いとけという話で。
例えるならこれは貧困が良いか悪いかの話でなくて貧困が
生まれる理由の話をしてるわけです。OK?
Commented by んぼ at 2014-04-06 16:37 x
上コメントの野間易通さんは本物ですか?
プロパガンダの見本のような方が現れましたな。

ご存知ない方に説明しますと、野間易通さんは右派系市民団体のデモに反対しているレイシストをしばき隊(現C.R.A.C)のリーダー的な存在の方です。

野間さん達も右派系市民団体も、どちらも正義を掲げて活動をされているのでしょうが、どちらが正しいかということではないのです。

野間さんは「正邪の判断から逃れたいというナイーブな感性」と書かれていますが、地政学や戦略学では正邪や善悪は関係ないのです。
それを研究されているのが奥山さんです。
Commented by 待兼右大臣 at 2014-04-06 23:31 x
上の野間氏が本物であれば、20世紀末におけるネット右派とネット左派の代表的存在であった「日本茶掲示板」と「ハンボード」の看板論客が同居していた「歴真」(歴史の真実を(以下略))以来の奇観を呈する可能性があります。

という「まくら」は置いておいて、「共通の(巨大な)敵」を措定するのは社会運動家や革命家では珍しいことではないでしょう。最近の著名な例で言えば、橋下大阪市長が常用する手法です。

橋下氏は世間的には「保守」と言われていますが、実際には、「左翼」であり、彼の言う「維新」も明治維新ではなく、226事件のような「昭和維新」に近い。

田原総一郎氏は大阪維新の会を「民主集中制」と共産党と同質のものを見ていました。

こういう敵味方二分法は当事者主義を採っている現在の日本の裁判制度と親和的であり、その裁判を生業とする弁護士資格を有する橋下氏がこの手法に長けているのは偶然ではないでしょう。
Commented by 待兼右大臣 at 2014-04-06 23:55 x
そのような手法のリスクとしては
1 「共通の敵」の打倒
2 「共通の敵」という「共同幻想」の消失
などにより、「共通の敵」が消滅するということです。それを防ぐ一番安易な方法は

次から次へと 敵を作り出す

ということです。また、一方がそのような手法を採った場合、他方も同じ手法を取りやすく、結局、二大勢力の「仁義なき戦い」になる可能せが高い。

この構図は、全国でただ一人を選挙で選ぶ大統領制と親和性が高く、それ故に大統領制による民主主義体制の安定度は議院内閣制に劣るというのがファン リンスの「大統領制民主主義の失敗」の骨子です。これは、大統領制で安定した民主主義国はアメリカのみという現実に触発された議論です。

橋下氏が大統領制に類似した地方自治体の首長に拘り、国会議員にならないのは、その点を本能的に理解したからでしょう。

結局この手法は短期限定で、長期の安定には使えないということになるというのが、現時点での私の見解です。
Commented by 待兼右大臣 at 2014-04-07 00:14 x
もうひとつ著名な例を挙げれば、「歴史認識論争」も、冷戦崩壊により「錦の御旗」を失った我が国の左翼が、自身の生き残りを賭けて「歴史」という「敵」をでっち上げたという側面があります。彼らを指して「反日サヨク」ということがありますが、その「反」という字が含まれていることが、その側面を如実に物語っています。

この見解は秦郁彦氏の『慰安婦と戦場の性』でも触れられています。

それに、韓国と中国が乗り、今に至るということです。こういう歴史的経緯があるため、我が国では「右翼(ウヨク) 」と「左翼(サヨク)」という語に我が国独自の意味付けがなされています。
Commented by yurodivy1 at 2014-04-07 00:18 x
野間易通氏へ。このブログは、戦略に関するアカデミックな議論をするところであり、あなたのような扇動屋が来るのは場違いじゃないんですか?国際的に合意された定義の存在しない”レイシズム””ヘイトスピーチ”といった用語を濫用し、他人を攻撃するあなたのような人がくるところではないと思いますよ。
Commented by 読者f at 2014-04-07 13:21 x
しばき隊というのを調べてみましたが、これはもうただの暴力団と言うより、民族的武装組織ですね、情報源や資金源などが気になります。
日本も共通の認識が必ずしも通用しない相手、やもすると海外などの敵対的組織が身内の中に既に多く居ると言う前提で、情報を取捨選択しないと行けないし、
発しないといけない国になってしまったのですね。
そのような状況で、大多数が情動に流れない怜悧な分析を可能にする社会でありたいですね。
Commented by yurodivy1 at 2014-04-07 14:16 x
一応、電波芸人”野間辟易”をここで撃滅しておきます。

”なぜなら誰も「俺らは優秀だ」とは言っておらず、”⇒はい、これ嘘です。
少なくとも、”ネトウヨはバカ、情報弱者、低学歴、ネットDE真実”みたいな揶揄的な表現は、カウンター界隈のtwitterにはあふれていました。
だから、相対的に自分達が優れているという自意識を持っていたのは間違いないでしょう。

あと、”レイシスト”だの“レイシズム”だの”ヘイトスピーチ”だのやたらヨコモジを使い、”欧州ではこんなヘイトは許されない”とか、”西欧=文明、日本=未開”という二項対立に基づき、白人性を身に纏って西欧の視点から日本の土着性を批判しつづけたのが、あんたらじゃないんですか?

わざわざ”レイシスト”だとか、西欧からの借り物の言葉、借り物の概念を持ってくる時点で、お里が知れるというものです。
Commented by sdi at 2014-04-09 01:02 x
上のほうのコメント、くだんの方のいかにもいいそうなコメントではありますが、さて本物かどうか。最近は、艦これが人気なのが我慢ならないらしく、ツィッターで発言してました。図らずも、自分が「共通の敵」となってしまったみたいですね。
ちなみに、私はやっと「長門」をゲットできました。
Commented by 待兼右大臣 at 2014-04-09 22:41 x
>>「長門」をゲット

その「長門」は「綾波」の姉妹ですか?
それとも「陸奥」の姉妹ですか?
Commented by だむ at 2014-04-10 01:45 x
新絵の龍驤かわいいっすね
Commented by sdi at 2014-04-10 23:41 x
待兼右大臣殿、勿論「陸奥」の姉妹のほうです。
Commented by 無花果 at 2014-04-11 06:22 x
欧州において国体の破壊に反対する立場からの反移民がレイシズム扱いされたりネオナチレッテル貼られるのと同じ構図ですからね。
当然、同じ背景を持っている共産思想の植えつけた亡霊を疑うべきでしょう。
Commented by おっけ at 2014-04-23 23:49 x
カールシュミットが政治の本質は友と敵の二分にある(Friend-Enemy Theory)と唱えたのは有名ですね。

というかここのコメント欄が在特会擁護の流れに感じるのは僕だけでしょうか。野間氏という方を知らないのでなんともいえませんが、そんなに間違ったことをいっていないような気がします(「ネトウヨ」に対しての感想などを除いて)
レイシストしばきたいなるものがならず者集団であるとしても、それは在特はじめ排他的な「ネトウヨ」も同じなのは明白でしょう。
中韓のプロパガンダに対するカウンタープロパガンダを展開するのは大いに大賛成なんですが、ネトウヨ擁護は賛同できませんね。そういう人こそジョセフナイやスティーブンウォルトの著作をもう一度読むべきでしょう。明らかに日本の「国益」にとってマイナスですよ。
Commented by 中山太郎 at 2014-04-24 10:54 x
「共通の敵」についての面白い論説有難うございます。一部の識者が、1980年代は、日中米関係の黄金時代だったと述べておられます。例えば、田中明彦氏など、この時代には、米中にとり、「ソ連」という「共通の敵」があった、そして馬鹿な日本はそれに載せられたのだと理解できます。
by masa_the_man | 2014-04-04 23:47 | 日記 | Comments(21)