戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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ウクライナ情勢を注視する中国

今日の横浜北部はなんとか晴れましたが、なんだか寒かったですね。

本日は丸の内で某局の方々を会食しながら戦略について色々とお話をさせていただきました。むしろこちらのほうが勉強させていただいた感じでした。

さて、緊迫しているウクライナ情勢ですが、あまりメディアには出てこない「中国政府側の受け取り方」について論じたものがありましたので、いつものように要約です。

===

中国はウクライナの政情不安を、自国の安定を推進するための議論として使用
BY アダム・ミンター

●中国の国営メディアは、去年の12月からウクライナの政変を、躊躇なく事細かに報じている。

●これは明らかに共産党政府の意向を反映したものであり、「世界中の政情不安は中国国内の急速な改革を求める人々にたいする教訓になる」という意味で積極的に報じさせているようなのだ。

●この視点は先週の(人民日報の傘下にある)環球時報の社説でも見て取ることができる。ミステリアスな人民日報に比べて、環球時報のほうは外交や軍のタカ派の意見が反映されていると言われれている。

●ところがウクライナ情勢について論じた社説はタカ派的ではなく、北京政府がなぜウクライナの政変に関心を持っているのかを教えてくれる、とても貴重なものだった。

●その社説では「西洋式の民主制度に急激に移行の際に、その国の規模が小さく、単一の民族や宗教によって構成されている場合は、成功の度合いは高い。ところが複雑で宗教も混在している多民族国家の場合は、その変化をコントロールするのは難しい」と書かれている。

●もちろんその社説の読者たちは、中国が巨大な多宗教・多民族国家であることを十分知っているはずだが、これを十分理解できない人たちのために、その社説は念の為に以下のように説明を続けていた。

●「外で起こっている嵐は、中国にたいする警告である。それは民主制への改革は少しずつ段階を踏んで行わなければならないということであり、ナイーブな過去の共通の失敗例を繰り返してはならないことを教えているのだ。もし中国が西洋式の民主制に急速に移行するのであれば、国家が分裂して各地で反乱などが多発することになるだろう」

●このような議論は、2011年の「アラブの春」の中でも特にムバラク政権にたいするエジプトの政変の際に(最近ではタイの場合でも)よく聞かれたものだ。そして2011年当時でも現在でも、北京政府の世界の「民主的」な反乱にたいする報道への関心は高い。

●同時に、これらのメディアの社説などでは、反乱を慎重に解釈しつつ、北京政府の好む語り口を支持する形で述べているのだ。

●たとえばエジプトの騒乱の最中の人民日報は「安定、それはエジプトにとっての正しい選択だ」という題名の社説を載せている。この中では「ムバラク政権の崩壊は、転がり始めた岩はだんだんと加速するものであり、秩序を失った国家では何が起こってもおかしくない」と記されている。

●同様に、中国外交部の報道官が先週ウクライナ情勢についてコメントを求められているが、その彼女は「両者が話し合いによって問題を解決し、社会秩序を素速く回復することを望んでいます」という中国側の望みを述べている。

●理屈の上では、他国での暴力的な政治状況――とくにそれが人的、経済的なダメージが大きいとき――は、プロパガンダ的な価値の高いものだ。

●ところがそのメッセージの効果というのは、中国が現在の政治状況にどこまで恐怖と必死さを感じているのか、という点に左右される。

●だが中国には国民の意識を正確に計測できるような手段がないため、これを判断することもできないのだ。

●もちろん現在の中国には――とくに50歳以上の世代は――20世紀前半の動乱の(飢餓、文革や大躍進などの)時代には戻りたくないと考えているはずだ。

●同様に、すでに家のローンを抱えたような若い世代も、あえて共産党を(もちろん腐敗していることは知っているが)打倒しようとは思わないはずだ。彼らは共産党が自分たちの生活水準を上げることに貢献したことを知っているからだ。

●つまり、共産党にたいする彼らの感情は複雑なのだ。

●中国のある意識調査のサイトでは、ウクライナの将来について36000人が投票しているのだが、たった26.8%の人しか「明るい見通しだ」と答えていない。

●もちろんこれは信頼性のあるものではないが、それでもキエフでの動乱にたいする中国のネット界の見方というものをある程度反映しているものだといえよう。

●あるマイクロブロガーは「(ウクライナの)政変が人々にとっての勝利だと信じるのは馬鹿げている」と書いている。彼は続けて「10年前に同じことがウクライナで起こったが、その十年後にまた同じことをやっている」

●中国の「安定」好きな共産党は、この意見に反対するようには思えない。

===

民主的なデモによる不安定化を最も恐れている北京政府、ということですな。

そういえば、この間ある中国専門家の人が講演で言っていましたが、北京政府がネット上でどのようなコメントを削除したのかをビックデータを駆使して調べたアメリカの研究者がおりまして、その彼の結論によれば、彼らが必至で削除しているのは「〜に集まろうぜ」というコメントなんだとか。

つまり北京政府がもっとも恐れているのは、反政府的なメッセージよりも、とにかくどこかで人が集まって騒ぎを起こすことらしいんですね。

これと似たような分析については、くどいようですが拙訳の『自滅する中国』に詳しく書かれておりますので、興味のあるかたはこちらもぜひ!


Commented by だむ at 2014-03-04 00:45 x
>少しずつ段階を踏んで行わなければならない

民主化しない・してはならないという考え方はないんだ。となると、中国は自滅しないかもしれんなあ
Commented by sdi at 2014-03-04 00:53 x
>「(ウクライナの)政変が人々にとっての勝利だと信じるのは馬鹿げている」
これについては正鵠を得てますね。ウクライナの混乱を見て、大躍進・文革時代の混沌を想起する、というのも納得できる分析です。
ただ、中国共産党が目指しているのは「自分たちが中国全土を支配し続ける(そうでない自分たちの身が危ない)」ことであって、「大躍進」も「経済開放」も「民主化」もその手段とでしかないでしょう。中国大陸の人民の望みと共産党の考えの「溝」が縮むか、広がるか、では私は前者と考えます。今後どうなるかは、広がり続ける「溝」に幅と深さによるでしょうね。
Commented by 撫子の花 at 2014-03-04 12:49 x
いつものパターンで人権だの領土の侵害だの持ち出しても、そもそも最初の大統領をクーデターで追い出していること自体が民主主義に反しているじゃない・・いわゆるダブルスタンダード
おバカと言われる日本人でも変だよってって思います

おまけに人権ガ~と言っても間もなく償還の時期の来る3兆円耳そろえて払えるの?アメリカは日本に払わせる腹積もりみたいだけど・・そんなことしようものなら次回の選挙は大変よ(笑)・・民主主義だからね

いづれにしてもウクライナの暫定政権は持たないし、もし次の政権が親EUであったならそれも持ちません・・だってお金ないんだもの・・現実はとても厳しいものです
Commented by 日置 at 2014-03-04 17:09 x
「想像上の地理と一般人の地政学」  
今回も非常に面白い情報が多いコラムでした。中国の報道でウクライナがそのような使われ方をされるなんて思いもしませんでした。なぜなら共産党は「中国は大国であり、東南アジア諸国は大国に対する接し方をわきまえるべきだ」等の大国アピールを内外に繰り返しているため、ウクライナのようなパッとしない国の状況を自国にあてはめるのはちょっと一貫性にかけます。おそらく中国民衆の中でも、中国政府の外交全般に言える「中国は一流の大国だ」と「中国は発展途上国だ」のダブルスタンダードに気づいている人が大勢いるとは思います。ただ、「中国における民間人の頭のなかの地政学」といのが全く想像できません。もしかしたらこういった不自然な社説・報道に本当に違和感を覚えないものなのでしょうか?地政学においては「想像上の地理」は非常に重要だと聞きます。もし(対中国)外交を考えるとき、「ウクライナはどうであるか」よりも「ウクライナはどう思われているか」の方が重要なのかもしれないと、このコラムを読んで改めて実感しました。
Commented by masa_the_man at 2014-03-04 18:49
だむ さんへ

>民主化しない・してはならないという考え方はないんだ

いや、これは額面通りに受け取るのはどうかと。対外的にも国内的にも一応「民主化に向かっている」と示すスタンスはイメージ的に重要かと。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2014-03-04 18:50
sdi さんへ

>その手段とでしかないでしょう。

ま、そういうことですな

>今後どうなるかは、広がり続ける「溝」に幅と深さによるでしょうね。

これが人民側にとっての「複雑さ」というところに。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2014-03-04 18:51
撫子の花さんへ

>、そもそも最初の大統領をクーデターで追い出していること自体が民主主義に反している

ま、そういうことですな。

>いづれにしてもウクライナの暫定政権は持たないし、もし次の政権が親EUであったならそれも持ちません・・だってお金ないんだもの

経済政策の失敗は命取りですね。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2014-03-04 18:53
日置さんへ

>中国民衆の中でも、中国政府の外交全般に言える「中国は一流の大国だ」と「中国は発展途上国だ」のダブルスタンダードに気づいている人が大勢いる

あるでしょうな。

>ただ、「中国における民間人の頭のなかの地政学」といのが全く想像できません。

あまりない、というのが正直なところかも。

>「ウクライナはどう思われているか」の方が重要なのかもしれないと、このコラムを読んで改めて実感しました。

いや、実際そのとおりです。現実よりも現実について知覚ですな。コメントありがとうございました
Commented by niji24 at 2014-03-06 01:26 x
ビッグデータ分析で、中国政府による検閲の中身が明らかに
ゲイリー・キング米ハーバード大学教授に聞く

これですか。
Commented by masa_the_man at 2014-03-06 08:08
niji24 さんへ

>これですか。

そうです、これです。情報ありがとうございました。
by masa_the_man | 2014-03-03 23:25 | 日記 | Comments(10)