ブレジンスキー:ウクライナを「フィンランド化」せよ |
さて、すでに一部では報じられておりますが、ウクライナに関するブレジンスキーの意見がFT紙に出てましたのでその要約を。
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ロシアには、ウクライナをフィンランドにする選択肢が必要だ
by ズビニェフ・ブレジンスキー
●ウクライナで混乱が勃発し、ロシアの介入の脅しが真実味を帯びてきた現在、西側諸国による建設的な結末の獲得の必要性はさらに高まってきている。
●ロシアは、ウクライナを厳しく破壊的で国際的にも危険な内戦へと導くことができる状態にある。クリミアや東部の工業地帯のいくつかを分離独立させることもできるからだ。
●ところがモスクワの支援を受けたいかなる形の内戦でも、その短期的な結果に関係なく、ウクライナのほとんどの国民をロシアの敵に回すことになってしまう。
●これは実質的に、プーチン大統領自身が進めている「ユーラシア連合」という過去の栄光を求めた夢が、実は脅しや強制をベースにした試みであることを明らかにしてしまうのだ。
●そうなると、これは以前はソ連邦に属していた新しい国々にとって、それほど魅力的なビジョンとはならないのだ。
●ところが西洋諸国側は、暴発する暴力の封じ込めを行う上で建設的な役割を果たすことができる。
●もちろんこのためには、アメリカはEUと協調した行動をとる必要がある。アメリカはプーチン大統領にたいして「アメリカの影響力を使って、本当に独立して領土も分裂していない状態のウクライナを確実にするために、冷戦時のフィンランドのような例を目指す政策をとる」と伝えることができるし、実際にもそうすべきなのだ。
●フィンランドということは、つまりロシアとEUが互いに尊重しながら広範囲にわたる経済関係を維持し、モスクワ自身が支配しているいかなる軍事同盟にも参加しない状態で、ヨーロッパとのつながりも拡大させる、というものだ。
●端的にいえば、フィンランド式のやりかたが、ウクライナだけでなく、EUやロシアにとっても理想的な例なのだ。
●ところがモスクワ政府側の信頼性を高めるには、アメリカ政府はロシア政府にたいして、「もしウクライナで誕生しつつある民主制度を不安定化させて、ウクライナの一部を分離させるようなことをすれば――さらには他国の国内紛争へのロシアの直接・間接の介入を含むが――、アメリカ政府は国際的な影響力をつかってモスクワに経済的なダメージを与える手段をとる」ということを、非公式の場で明確に伝える必要がある。
●このためのオプションには、アメリカ単独、もしくは国際的な協力による金融制裁や、WTO、世銀、そしてG8などにおける、ロシアの立場の見直しまで含まれるべきだ。
●もちろんこの実行の際には、ロシアと貿易を活発に行っているEUが、アメリカの強固なパートナーとなるべきであることは明白だ。
●ところがこれよりも緊急性が高いのは、EUがウクライナにたいして緊急の金融援助を計画することだ。これができないと、ウクライナは金融面での大混乱に陥る可能性がある。
●そのようなEUの行動を主導すべきなのは、ドイツとイギリスだ。とくに後者は、ロシアとウクライナの大物金融関係者の亡命先となっていた事情から、とりわけ大きな役割を果たすことができるはずだ。
●ところがここで重要なのは、すべてのEUの国々が「ウクライナの経済崩壊と」いう潜在的な災害を避けるための努力に参加すべきである、ということだ。
●アメリカとEUは、理想的にはロシアの助けをかりて、キエフ内で支配的な民主制度への流れを支援する必要があり、復讐や報復ではなく、国家の統一と政治の穏健化を守る方向へと後押しすべきなのだ。
●そしてそれは可能だ。なぜなら、マイダン評議会で登場したリーダーたちは穏健派だからだ。
●したがって、短期的なことはさておき、私はウクライナが早期に民主的なヨーロッパの仲間入りを果たすものであると信じている。そしてロシアも、頑なに孤立しようとしたり、時代遅れの帝国主義的なやり方に固執しなければ、長期的にはその動きを追うことになると信じている。
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ロシア嫌いのブレジンスキーが、ウクライナの「フィンランド化」をロシアに迫るという、とても興味深い意見です。
しかしウクライナの新政権が「穏健派」というのは本当なんですかね・・・
とにかくウクライナというのは地政学的にも「アレ」なところです。これについては次回のメルマガで少し書いてみたいと思います。