戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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イギリスの極右政党の衰退

今日の横浜北部は曇りがちでして、時折小雪も混じる寒い一日でした。

さて、日本とは関係ないかもしれませんが、イギリスの右派の政治の事情もなかなか興味深いのですが、スコットランド独立に関係したニュース以外はなかなか報道されないので、この辺の事情についての記事の要約を。

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イ消滅の危機に直面するイギリスの極右政党

●ヨーロッパ議会でイギリスの極右政党の一つである「イギリス国民党」(the British National Party: BNP)が2議席獲得したのは、2009年の政治的な大事件であった。この時は不況であり、反移民感情が盛り上がってポピュリスト的な怒りがこの契機となっていた。

●ところがそれから5年後の現在、ヨーロッパの他の地域ではたしかに極右政党は伸びているが、BNPは忘れ去られようとしている。内紛だけでなく、新しい連合王国独立党(the United Kingdom Independence Party:UKIP)にも人気を奪われているからだ。

●BNPのリーダーであるニック・グリフィンはたしかに話題にはなっているが、それは彼のことを破産に追い込んだ元弁護士と係争中だからであり、BNP自身も、今週行われる英国議会の補選や、5月に行われるヨーロッパ議会のグリフィン氏の議席を守れるかどうかで厳しい現実に直面することになっている。

●BNPの凋落は、ヨーロッパの他の地域で国際的な経済危機を背景に伸びてきた極右グループとの成功と極めて大きな対称性を見せている。

●たとえばギリシャでは「黄金の夜明け」党があり、ハンガリーでは「ジョビック」党、それにフランスではルペンの娘がリーダーとなっている「フランス国民戦線」がある。

●ところがBNPの凋落は、組織の欠落や規律のなさ、それに人気のあるリーダーが不在であることなどが、極端な立場を取る政党にとってどれほど致命的なものなのかを示している。

●ノッティンガム大学のグッドウィン准教授によれば、BNPはひどい内紛や国民からの支持を失ったおかげで消滅の危機にあるという。

●2009年のヨーロッパ議会の選挙で6%以上の票を集めたBNPは、現在では世論調査でもカウントされないほど不人気になっており、ローカルな議会では1人か2人しかいないとグリフィン氏は認めている。彼は5月の選挙で議席を失う可能性を否定していない。

●彼の党が本物かどうかは、今週木曜日のマンチェスター郊外で行われる補欠選挙で試されることになる。ここが選挙区で選ばれたある議員が亡くなったために、この議席が空いたからだ。

●2010年の同じ選挙区の選挙では、BNPはUKIPより人気が高く、全体でも4位につけている。

●この選挙区のBNPの候補であるエディー・オサリバン氏は、この地域の人々が「この町のイスラム系の地域にアイデンティティを盗まれたと感じています」と答えている。この地区のある女性などは「移民たちがやってきて仕事と住む場所を奪っているのよ」と同意している。

●ところがその町の市場で魚屋を経営しているアフリカ・カリブ系の人は、BNPの名前など聞いたことがないと答えている。

●また、このイギリス北西部の町の選挙民たちは、5月にグリフィン氏のヨーロッパ議会の議席を決定することになる。彼が選挙に負けることになれば、彼自身は「少なくとも外部の人間としての立場を再び獲得することになる」と述べている。「自分の政策はヨーロッパの議員たちによって妨害された!」と言えるようになるからだ。

●BNPは2010年のイギリスの国政選挙で失敗しており、その原因の一部はイギリスが小選挙区制であり、小規模政党が議席をなかなか獲得できないからだ。

●もちろん党内の内紛もその原因の一つだ。たとえば去年には、党員の一人で2009年のヨーロッパ議会選挙に選ばれたアンドリュー・ブロンズ氏が「グリフィン氏が党を破壊した」と非難をしている。

●ブロンズ氏はのちに自分の党を立ち上げながらも議席はそのまま確保しているのだが、彼はグリフィン氏が自分のことを「害虫」であり、「ロンドンからの刺客だ」と非難したと述べている(グリフィン氏はブロンズ氏の仲間のことを非難したと述べている)。

内紛もひどいが、町で声を聞いても評判が悪い。BNPを紛争から救い出し、もっと選挙向けのものにしようとしたために、グリフィン氏は結果的に「イギリス防衛同盟」(the English Defense League)というさらに過激で活動的な組織の台頭を許してしまっている。

●グリフィン氏はこの組織の創設者であるスティーブン・ヤクスレィ=レノン氏のことを「女々しい野郎だ」と罵っている。

●グリフィン氏はケンブリッジ大を卒業しているが、現在はウェールズに2匹の大型犬(ロットワイラー)と住んでおり、このような政治活動に喜びを感じているようだ。

●「もちろん個人攻撃ですよ、だって彼は私のことをナチスだと呼んだんですよ。私はいまだかつてヒトラー好きのナチスだったことは一度もありません。われわれは彼のことをネオコンのシオニストの操り人形だと言ってやったんですよ」とは彼の弁。

● イギリス防衛同盟の成功は短期的なものだった。ヤクスレィ=レノン氏は去年無効なパスポートを使ってアメリカに渡航した罪でつかまっており、この組織から脱退したあげくに家のローンの詐欺の罪で18ヶ月収監されている。

●さらにBNPの主な支持層は、もう与党ではなくなってしまった労働党に戻りつつあり、移民の問題に関しては右派の立場をとりながら、生活費の問題に焦点を当てはじめている

●そしてUKIPが登場してきたのであり、この党は移民に反対してEUからの脱退を支持しつつも人種差別主義には反対する立場をとっている。党首のナイジェル・ファラージは、第二次大戦のおかげで極右には警戒感のあるイギリスで、親しみやすいイメージをつくりあげることに成功している。

●極右に反対する団体「憎しみではなく希望」(Hope Not Hate)の代表を務めるマシュー・コリンズ氏は「UKIPはBNPよりもはるかに主流派だとみられております。UKIPに属しているとパブで言っても、バカにされる心配はないほどです」と述べている。

●その反対に、グリフィン氏は嫌われ者として見られることを楽しんでいるように見える。

●彼はヨーロッパに向かってくる難民のボートを沈めることを提案したこともあり、2009年にはKKKの元リーダーであるデヴィッド・デュークのことを「非暴力的な人物だ」と呼んで非難を浴びたこともあるため、ホロコーストについて言及することを避けている。

●「もしそんな事言ったら、ドイツに引き渡されてしまうからね」とは彼の弁だ。

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BNPについては、私の留学時代にも「ひでえ奴らだよなぁ」というバカにしたコメントを友人から何度も聞いたことがありまして、実際のところ、評判はあまり良くなかったと記憶しております。

日本の状況と照らしあわせて考えてみても面白いところかと。


Commented by 無花果 at 2014-02-12 00:42 x
人種差別的でない、という理由でUKIPを極右と呼ばないのであれば、マリーヌ氏に代替わりして路線変更した国民戦線もまた、極右にカウントすべきではないように考えます。
レイシストのレッテルが未だにどれだけ英国や欧州において猛威を振るっているか、というのが興味深いですね。

英国で「移民に反対している政党(UKIP)を支持しているレイシストだ」という理由で養子を取り上げられた事件からまだ1年と少しですが、英国で極右が衰退したというよりも英人の意識が変化したためにUKIPは極右と認識されなくなった、言い換えれば英人の意識がそれだけ保守に傾いたという事ではないかと。
Commented by 無花果 at 2014-02-12 00:43 x
ヨーロッパ合衆国という構想が誰の目にも明らかになりましたし、キャメロン首相が英国は事と次第によってはEU離脱を国民に問うと明言している事と、ユーロに対してポンドを維持しているために、奥山さんがよくポイントにしていらした「自分達はEUにどっぷりの国のように移民政策のコントロールを手放しては居ない」という気持ちの上で余裕があるというのもあるのではないでしょうか。
実際には明らかなテロリストの国外退去がままないなど、相当に問題も抱えてしまっているようですが。

当時のニュースソースが生きていたので追記しておきます
Foster parents 'stigmatised and slandered' for being members of Ukip
http://www.telegraph.co.uk/news/politics/9700001/Foster-parents-stigmatised-and-slandered-for-being-members-of-Ukip.html
Commented by sdi at 2014-02-13 00:03 x
同じEUでも、フランスの国民戦線のマリーヌ・ル・ペン党首はよく党内を纏めていると褒めるべきなのか、BNPがダメすぎるのか、後者ですかね。
Commented by 赤い彗星 at 2014-02-17 14:07 x
先日、スコットランド独立に向けた住民投票の話しがニュースになっていましたが、仮にスコットランドが本当に独立してしまったら、国際政治における影響(特に地政学的な面で)はどれくらい大きいのでしょうかね?非常にきになるところです。
by masa_the_man | 2014-02-11 22:13 | 日記 | Comments(4)