中国の対日戦略:イアン・ブレマーの分析
2014年 01月 31日
さて、先日のダボス会議のエントリーの補足的な形ですが、ユーラシア・グループ代表のイアン・ブレマーが、ダボス会議のインタビューで中国の対日戦略を分析しておりましたので、その重要部分だけ抜き出して要約を。
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イアン・ブレマーによる日中関係の説明
by ジョー・ウェイゼンタール
Q 中国と日本の緊張はどれくらい深刻なものなんですか?
(ブレマー):いや、実際かなり深刻です。日本政府がもちろん経済面を重視しているのは明らかです。安倍首相が(ダボス会議)に来ましたが、彼は素晴らしいスピーチをしましたよね。参加者も日本経済に関しては楽観的でした。
ただし参加者たちがスピーチの中でかなり気にしていたのは、日中関係の部分でした。これはまあわかりますよね。彼は中国のことを侵略的で軍国主義的だと批判しているわけですから。
安倍首相は日中関係を一九一四年のドイツとイギリスの関係にたとえてましたが、これは経済関係が良かったのに安全保障面での緊張が高まっていたような状況でした。われわれはその後に何が起こったのか(=第一次世界大戦)知ってますよね。
私は安倍首相が、直接的に戦争が起こる予期しているわけではないと思います。しかし彼が言っていたのは、中国が許しがたいマナーで行動しており、日本はそれを看過できないということです。
安倍首相の狙いは、日本を再軍備化するために憲法を変えることにあることは間違いないでしょう。彼は日本に憲法を採用させた五〇年前と現在の状況はもう当てはまらないと考えています。そして実際にこの状況は、潜在的に東アジアを不安定化させています。
中国側は(ダボス会議に)あまり多くの代表を送り込んできていませんが、まあわかりますよね。だって彼らは中国でダボスのようなことを夏に開催してますから。彼がここに来ると批判されますが、自国で開催する時は議論もコントロールできますし。
しかしここには何人かの中国政府高官も来てますし、日中関係には極めてタカ派な意見を持っていることは確実です。私が参加した世界の安全保障に関する会議では、ある中国政府高官が「東アジアにはトラブルメイカーが二人いる。安倍晋三と金正恩だ」と発言してました。
そして彼は自国政府を批判することができる立場の人間ではないわけですから、彼がこのようなことを言うということは、それが中国政府の見解に沿ったものであると見て間違いないでしょうね。
Q,中国の戦略は?
(ブレマー):彼らの戦略は、日米間にくさびを打ち込むことです。彼らはアメリカにたいして「日本こそが問題だ」と見せつけたいわけです。つまり日本を、現在のイランとの交渉における中東でのイスラエルのような存在に思わせたいということですね。
最近の中国は、アメリカにたいして微笑外交を展開しています。彼らはアメリカが中国にサインさせようと長年狙ってきた相互投資協定に合意しましたし、バイデン副大統領が最近中国を訪問した時には、多角的な貿易・サービス協定も合意しました。バイデン氏は習近平氏と2時間も会談してますが、これは前例のないことです。
よって、中国がアメリカとの関係強化に真剣に動いているのはあきらかです。そしてこうする理由はことの他多いのです。米国経済は復調しつつありますが、中国はここにもチャンスがあると見ています。なぜなら米政権内にいた対中タカ派が次々とオバマ政権から離れているからです。
ヒラリー(クリントン)は去りましたし、カート・キャンベルもいなくなりました。この地域に注目していたガイトナー(前財務省長官)も、トーマス・ドニロン(国家安全保障担当補佐官)も去りました。
よって、彼らはアメリカの現在の中国との関係を主導しているのが実質的にバイデン副大統領である点を知っており、ここににチャンスを見出して、日本との対決のルールを変えようとしているのです。
Q,オバマ政権はどのように対処すると思いますか?
(ブレマー)これまでの中国の戦略はかなり成功してますね。東シナ海上空に防空識別圏を宣言した時も、日本側の対応は自国の航空会社にたいして「遵守するな、そして中国当局にはフライトプランを知らせるな」というものでしたが、アメリカ側はわざと日本側と一緒に対応せずに、ホワイトハウスの支持を得た国務省はアメリカの航空会社にたいして「われわれは認知しないけど中国当局にはフライトプランを教えたほうがいいね」というものでした。
そして中国側は、日本の対応について好戦的だと非難したわけですが、アメリカの対応については建設的なものであると賞賛したわけです。
安倍首相が先月に靖国神社を訪問した時も、アメリカ国民からの反応はネガティブなものでした。中国の姿勢というのは実際かなり好戦的なものですが、それでも効果は出ているのです。
私の見解によれば、現在起こっているのは、中国政府が、対外政策で問題を起こしたくない米政府にたいして「日本は軍国主義的で、米政府にとって対外政策での問題を起こすような存在ですよ」と印象づけるようなことを日本側に言わせようと働きかけを行っているというものです。
シリアやリビア、エジプトの例などを考えてみてください。オバマ政権というのはリスクを怖がっていて、戦術的に動いているだけです。この政権は、他の大国との関係を維持するために極めてバランスのとれた動きをしているだけなのです。
中国がこれほどまで成功を収めたわけですから、とくに現在のようにワシントン内に大きな日本担当者がいないことを考えれば、今後はかなり大胆に動くこともできるようになるわけです、
問題は、日中関係が経済的に非常に大きい存在だという点です。日本は中国に2万3千社を持っておりますし、1千万人の中国人を雇っているのです、ところが日本企業は現在中国から離れつつあります。対外直接投資(FDI)の額は下がってますし、それが東南アジアなど他の地域に向かっているのです。もし日中間の経済関係が劣化しているとすれば、それがかえって大きな紛争につながる可能性もでてきます。それでも私は戦争が起こるとは思って思ってませんが。
私は、日中間の戦争はかなり起こりづらいものだと考えています。いいかえれば、両国とも互いに戦争をしようとは思っていないということです。しかし毎日戦闘機が中国側の「侵犯」にたいしてスクランブルをかけていれば、そこで計算違いが起こる可能性は高まるわけです。
この2国の現在のような関係の悪さの上に、計算違いが起こったとすれば、いざ軍事衝突になったら互いに相手の最悪の意図を想定するようになってしまうかもしれません。
ここで知っておかなければならないのは、この2国はトップ同士が外交面で交流を行っていないということです。
アメリカは日中両国の関係を改善するような役割を、現在は果たしておりません。日中間では歴史も共有できていません。日本には中国の視点から世界を見ようとする人もおりませんし、それは中国側も同様です。彼らは互いに憎しみ合っているわけですから。
最近のピュー研究所の調査によれば、中国人で日本にたいしてよい印象があると答えた人の割合はたった6%で、日本人の場合は5%です。これはどれだけ事態が深刻かを物語っていますよね。
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日本であまり報道されていないのは、バイデン訪問の際に中国がアメリカと貿易関係で大きな取引をしたという点ですね。
その一方でNYタイムスの記者は国外追放になったりしているわけですから・・・・
ということでこれについてはメルマガでまた解説を。




アメリカが何故か中国式のごね外交に弱いのも相変わらずといえば相変わらずで、世界は変わったようで変わっていないのではないかと、つい考えてしまいました。

日本にとっての問題はアメリカ自身です。
日本の財政に手を突っ込んで首都近辺に在日米軍基地を置いて
日本政府を恫喝し続けています。
属国政策は限界ですよ。消費税増税分は米国債に代わりますよ
中国が脅威どころの話ではないでしょう

これは先生が世論に「影響あり」と見られるようになったためでしょうか。