日本の週刊誌の記事から見る日中衝突のシナリオ |
さて、日中衝突シナリオについて、なんと日本の週刊誌の内容を紹介している面白い記事がありましたのでその要約を。
著者は東京在住のフリーのジャーナリストです。
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来るべき日中戦争のいくつかのシナリオ
By トッド・クロウウェル
●最近の中国の東シナ海広域(尖閣上空を含む)における防空識別圏(ADIZ)の設置宣言は、日本のアームチェア戦略家やサスペンス作家、それに退役した将軍や国防専門家たちや知識人たちにとってはかき入れ時であろう。
●中国の宣言の後に日本の7大週刊誌のうちの5紙が、尖閣をめぐる日中軍事衝突が起こった際のいくつかのシナリオについて記事を書いている。おそらく2014年にはこのシナリオについて書かれた本が何冊か出版されるのは確実であろう。
●たとえば「戦争はつまらん」(War is Boring)というブログでは、東シナ海上でのハイテク空中戦が行われるというシナリオが論じられており、ここではアメリカのF-22と日本とF-15が中国の戦闘機と戦うことになっている。この際に何機かの日本の戦闘機は撃ち落とされ、アメリカの戦闘機も一機だけ落ち、中国側はさらに多くの数が撃墜されるという。第一回戦は日米側が勝利に終わるらしい。
●「週刊現代」では習近平主席が、ADIZを通過して帰国する日本の民間航空機を撃墜することを命令し、実際に落とした後から戦争がはじまるというシナリオが出されている。
●「サンデー毎日」では「日中戦争は来年1月に始まる」という見出しの記事を掲載している。ここでは中国経済の崩壊によって、北京上層部が国内のトラブルから目をそらす目的で、日本との戦争に踏み切るということが書かれている。
●本格的な軍事専門家たちは両国(もしくは三カ国)の戦力の違いについて喧伝している。彼らの意見を全体的にいえば、中国は想定される戦場においてどちらかといえば近い位置にある航空基地などを数多く持っている点で優位であり、日本側は中国の戦闘機や艦船よりは質的な面で上回っている、ということになる。
●日本の航空自衛隊は現時点で那覇に20機のF-15によって構成される一個飛行隊しか持っておらず、ほぼ毎日行われている尖閣上空へのスクランブルによって航空機とパイロットには負担がかかっていると言われている。来年には飛行隊がもう一個が加わることによって強化されることになっている。
●もちろん日本側も他の地域から航空面で支援を受けることができるが、それでも想定される戦場近くに基地が少ないことによって制限を受けるのだ。
●当然ながら、この弱点はもしアメリカが紛争に巻き込まれた場合には、一隻かそれ以上のアメリカの空母(70機搭載)によって簡単に補えることになる。
●そして確実にアメリカも巻き込まれることになるだろう。ワシントン政府の立場は、尖閣の帰属について中立でありながら、同時に日米安保ではアメリカが日本の国防の義務があると主張している時点で、かなり矛盾したものになっている。
●もちろんアメリカが核武装した中国と、誰も聞いたことのない無人島をめぐって、あからさまな戦闘を行うことを考えるのは無理があるが、それでも日本は過去60年間にわたってその期待を前提としてきたのであり、そのために米軍に基地を提供してきたのだ。彼らがアメリカに義務を果たすように強く要求してきても無理はない。
●これらの戦争のシナリオのほとんどは、たしかに「フィクション」や「たんなる思いつき」かもしれないが、それでもこれらを想定させるだけの実際の事件は、ここ一年間で豊富に起こっている。
●たとえば中国の漁船や公船は日本が主張している尖閣周辺の領海に定期的に侵入してきている。これまでのところ、これらの侵入の際に中国側が使ってきたのは準・軍艦(巡視船)だけであり、日本側も海保の船で応対していて、双方とも軍艦は使っていないのだが、それでも中国側の日本の領空への侵入は日本の航空自衛隊の戦闘機によって対処されているのだ。
●安倍政権は中国やその他の国々から、異様なほどタカ派的だと見られている。今年度に国会は(アメリカに見習った)NSC創設の法案を通過させており、アメリカ側の秘密漏洩の憂慮に対処するために「特定秘密保護法案」を通過させている。
●その他の今年の目立った動きとしては、以下のようなものがある。
―今年の一月には中国のフリゲート艦が日本の護衛艦を「ロックオン」している。護衛艦は回避行動をとった。
―海上自衛隊は最大規模の護衛艦「いずも」を進水させた。日本側はこれを「ヘリ護衛艦」としているが、世界はこれを「軽空母」と呼ぶはずだ。
―日本の1000名ほどの自衛官たちが米国の海兵隊のキャンプで「ドーンブリッツ」という演習に参加している。これは沖縄の島々の離島奪還を想定した訓練であった。
―演習の一環として日本は最近宮古海峡のそばにある宮古島に対艦ミサイルを配備した。この海峡はかなり広く、中国海軍が太平洋広域で演習するために時々通過する。
―防衛省は、中国の無人機が尖閣付近上空を飛んでいたと報じられた後に、領空侵犯をしてくる中国の無人機を撃ち落とす研究をし始めたと言われている。その際には「無人機は警告射撃に応じることはできないためだ」という理屈づけがなされている。
●いうまでもなく、来年以降にさらに状況が深刻になるのは確実であろう。
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まあ日本側の週刊誌の中には正直「煽り記事」みたいなものもありますから、深刻に受け取るのはどうかと思いますが・・・。