戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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戦略は「ウソ」である

今日の横浜北部は冷たい雨が降り続いております。昼前に一瞬晴れたので傘を持たずに出たら濡れました。

さて、明日のことですが、都内某所の小さな勉強会向けにしゃべることをメモ代わりに。

戦略というものを研究しはじめて、もう十年近くたつわけですが、とくに最近実感しているのが、「戦略には必ずウソが絡む」という紛れもない事実。

これについてはすでに数々の講演会や、「戦略の階層」というロングセラーのCDの中で詳しく論じているので、興味のあるかたはそちらを参考にしていただきたいのですが、とにかくこんなことを書くと「お前はウソの学問で博士になったのか」とツッコまれてしまうのは確実でしょう。

ところが戦略研究の歴史というものを振り返ってみると、多分にそういうところがあるのは否定できない事実なのです。

そしてその最大の理由は、戦略というのは予測できない「未来」のことを考えて、しかもそれを実行するためのものだから、というところに集約されてきます。

これは昨日のエントリーにも関わりますが、戦略というのは「実践のためのもの」であり、とくに私が学んだ国家戦略の分野では、分析も大事ですが、それをどう使って効果を生み出すか、というところが肝心になってきます。

つまりよい分析をできたとしても、それはあくまでも過去のことであり、これから「未来をどうしていこうか」という実践段階のことになると、それがどんな人のものであっても、学問的には話が突然怪しくなってきてしまうわけです。

なにぶん未来のことですから、そこには「当てずっぽう」というか、「多分こうなるからこうしよう」という要素が多分にからんできまして、すでに起こった確実な歴史ではなく、これから起こる未来の形成の話なので、どうしてもウソ的な要素が入り込んでしまうのです。

戦略論の歴史でいくと、この典型的なのが「核戦略」の分野。

冷戦初期に大量にあらわれたこの分野の理論家の主な人物を挙げてみますと、たとえばヘンリー・キッシンジャーは歴史家、トマス・シェリングは経済学者、アルバート・ウォールステッターは数学者、ハーマン・カーンは物理学、そしてアレキサンダー・ジョージは政治学者であるなど、とにかくその出自がバラバラ。

そしてなぜこのようなバラバラの分野の人々によって議論されたのかというと、その主な理由は、

人類は核戦争を戦った経験がないから

に尽きます。たしかに通常兵器による戦争でしたら、当時の直近では第二次大戦や朝鮮戦争などを戦ったプロの軍人たちはたくさんおりますし、すでにその分野の研究は「軍事史」という形で豊富に残されております。

ところが核戦争というのは軍人でも戦った経験のある人はいないため、それを補う形で民間のさまざまな学者たちが競ってその理論を、いわば「フィクション」的に色々と考えたわけです。

そういえば『失敗の本質』という名著の編著者の一人である野中郁次郎氏が、ある学会の講演会で、「あの本を書いている時に感じたのは、周りは歴史家たちばかりで、自分はフィクション的なことをやっている人間だということ」と言っていたのは印象的でした。

つまり戦略というのは、あくまでも実践的なもの(未来に働きかけるもの)であるために、そのすべてが実行される時点で「絶対にこうなる」と言いきれない、フィクション的というか、いわば「ウソ」の話であるということになるわけです。

いや、逆にフィクション&ウソの話であるということを堂々と認めてしまうほうがいいのでは、というのが最近の私の立場です。

ただしこのようなフィクション&ウソの話は、戦略の話だけでなく、すべからく人間が未来にたいして行う創造的な営みのすべてについて当てはまることなのではないでしょうか?

われわれの人生だって先のことは全くわかりません。一寸先は闇です。

だからこそ、自分・他人にたいして「良いフィクションやウソを活用しよう」と考えるほうが、もしかしたら精神的にも健康的なのかもしれません。

なんといっても、戦略は「アート」なわけですから。


Commented by jujuju at 2013-12-21 10:13 x
戦略のプロとして簡単でいいので日本は第二次大戦どのような行動に出ればよかったのか考察して欲しいです。

もちろんアメリカにはどうやっても勝てないというのが定説ですけど
プロの目でこれをどうにかすることが出来るのか知りたいです。
Commented by sirimonkon at 2013-12-23 06:30 x
戦略論というのは確かに「フィクション、物語」という感覚があります。
by masa_the_man | 2013-12-20 18:47 | 日記 | Comments(2)