戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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ミアシャイマー vs. 閻 学通

今日の横浜北部はまたまた快晴でした。それにしても朝は冷え込みましたね。風もなかなか強い。

さて、ここ数日連続してミアシャイマーの話を続けておりますが、今日もまたミアシャイマーの登場です。

今回は中国版のミアシャイマーと呼ばれる、清華大学の閻 学通氏との対談です。これは@Rogue_Monkさんに翻訳いただいたものに、私が少し手を加えたものです。

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専門家に聞く:中国が戦争準備しなければ、近隣国は中国を信頼できないのでは?

侵略的リアリズムvs道義的リアリズム byジョン・ミアシャイマー&閻 学通(阎学通)

●戦争リスクの分析には、政治への考察が必要

ミアシャイマー)核兵器は戦争を阻止するのかも知れません。しかし国家の安全保障競争を阻止することはできません。インドとパキスタン、そして米国とソ連は核武装していました。それでも彼らは安全保障の強烈な競争を行ったのです。米中もそうなるかもしれません。安全保障競争が消滅することはないのです。

また、「グローバル化による経済の相互依存状態が平和をもたらすことになる」とよく言われます。しかし私はそう思いません。たとえば台湾の「独立」となれば、中国政府は開戦に踏み切るでしょう。全般的に言って、経済に比べて政治の方が重要なのです。経済面の相互依存は全く無意味ではないですが、政治や権力についての考察が不可欠でしょう。

閻 学通):リアリズムという理論は、その予測を歴史から導き出しております。そして1945年以後の歴史から明らかなことがあります。それは「核武装した国家間で戦争は発生しない」ということです。これはある程度認めてもいい事実でしょう。しかし中国が戦争に巻きこまれる危険性がグローバル化によって低減するか否かは、歴史の検証を待たなくてはなりません。

少なくとも冷戦後の二〇数年間のグローバル化の過程において、中国が戦争に巻きこまれなかったことは事実です。それでも「経済的な利益のせいで大国の介入戦争は阻止される」という理論は幻想であり、政治的観点から分析すべきだというミアシャイマー氏の考えに私は同意します。

中国は、近隣国が確信する様な威圧的な戦略を採らねばならないのです。中国が戦争準備しなければ、近隣国は中国を信頼すると思いますか?領土紛争に関して、近隣諸国がどのような対中政策を採るのかが問われているのです。

また中国が更に多くの国際的責任を負うべきだと近隣諸国が考えるのであれば、中国は強い自信を示すような政策を採らざるを得ないことになります。

●中国の平和的台頭は可能か

ミアシャイマー):中国の平和的台頭は可能でしょうか?私の理論では断定はできません。米国は地域覇権のために拡大した後に、他の地域で覇権国が出現するのを阻止してきました。ドイツやソ連、日本といった国家全てにたいして、同じような態度をとってきたのです。他の地域の国家が自国の門前に出現することを米国は望んでおりません。それが「モンロー主義」です。このような挑戦をしてくる国を、アメリカは撃退します。それは中国に対しても同じです。

中国にはかつて栄華を誇った輝かしい歴史があり、最強国家になろうとするのは論理的に必然と言えます。中国が独自の「モンロー主義」を標榜することもあり得るでしょう。地域における最強国家となるためには、現時点で裏庭に米国が現れることは、中国にとって決して望ましいことではありません。

米国の「ピボット」戦略は、中国を封じ込め、地域覇権国化を阻止するためのものでしょう。そしてそれが正しいのであれば、米中間での戦争は避けられないことになります。もし戦争が起こり得るなら、台湾か朝鮮半島が原因となるかもしれません。米国は「中国を容認する」と言いながら、実際は容認しないため、ウソをついていることになります。最終的には米中両軍が相まみえることさえあり得るのです。

閻 学通):私はリアリストなので、ミアシャイマー氏と多くの視点を共有してます。米中が、共に世界一となることを希望している点には同意します。中国が派手な行動をせず、主張を抑えるべきという点にも同意します。しかし戦略上の選択については、中国と米国の見方は異なります。中国が米国と同じ道を行くとは限りません。また米国にも中国の「封じ込め」以外の選択肢があると思います。中国が主導権を持つ国家になるための戦略上の選択肢よりも、米国の選択肢の方が多いでしょうね。

習近平氏は、「近隣諸国との外交は、中華民族復興のために有利な環境を創り出すものでなければならない」と主張しています。彼は近隣諸国との国家安全保障についての協力の強化を訴えています。経済については、「海のシルクロード」と「新シルクロード」の経済ゾーンも提案しています。こうした主張は過去のものとは異なるもので、きわめて創造的なものです。これまでの我が国の外交は、ひとえに米国優先で、米国と我が国の近隣国が衝突したときは米国へ配慮するだけでした。では我が国はどうすれば近隣諸国と上手くやっていけるのでしょうか?

私は中国が「協力のためにまず"共通の利益”を探求すべきだ」と主張してます。最初に「相互の信頼」ありきではありません。相互の利益が衝突したとしても、予防的な協力により衝突は防止できるからです。「相互の信頼」ではなく、「共通の利益」が協力の土台なのです。

中国はどうすれば友人を得られるのでしょうか?真の友人を得るためには、助け合わなければなりません。中国は「中国の友人となった国は利益が得られる」と国際的に知らしめねばならないのです。逆に中国は「相手国からどうやって利益を得るか」と考えてはいけないのです。これこそが「周囲への恩恵の波及」や「運命共同体」といわれるものです。

中国は「王道」を実行しなければなりません。そして「運命共同体」の建設こそが、中国にとって現代の「王道」なのです

ミアシャイマー氏の言うような「侵略的リアリズム」は、道義には大した意味はないと考えております。しかし私の主張する「道義的リアリズム」は、道義を国家の実力のための資源の一部とするのです。そして道義は、友好国との関係強化や友好国の獲得、そして国内の支持獲得を可能とするのです。

1950から60年代にかけての中国は、ひ弱で多くの戦争に関与しておりました。ところが中国経済が発展してからは段々と武力行使をしなくなり、主要国の中では最も平和的な国家となったのです。現在の中国は「平和的台頭」の姿勢と基盤を体現しております。

もちろん「平和的台頭」とは、「いかなる事も受け入れ、武力行使はしない」という事ではありません。習近平のいう「核心思想(底线思想)」の通り、中国の外交政策には原則と核心があり、それが個性を形成しております。

故に、我が国は戦争に巻きこまれる危険性を否定しませんし、中国に平和的台頭の可能性があることも否定しないのです。

米国との直接戦争が発生しないとする中国側の根拠は、二つあります。一つ目は、核兵器の存在です。核兵器はこれまで米ソ間の開戦を阻止してきたわけですから、米中の開戦も阻むはずです。

二つ目の理由は、グローバル化です。現在の経済における相互依存関係は、戦前のそれとは全く異なっております。グローバル化の影響と経済の相互依存関係の影響は、完全に同じものではありません。グローバル化は相互依存状態への敏感さを増加させると同時に、相互依存の脆弱性を低減しています。グローバル化は双方を戦争について慎重にさせると同時に、戦争の不拡大を求めさせることになるのです。

●米中で「道義」の定義は異なる

ミアシャイマー):習近平主席の主張では、中国は近隣諸国を統合して、経済と安全保障について協力するとしています。これは賢明な政策ですが、成功するとは思えません。まず中国は能力が不足しています。中国の本当の意図を確認できる国家は存在しないので、中国の能力に関心が集まることになるからです。

第二に、中国の近隣諸国は現時点で問題を解決することを望んでいます。彼らは中国が強大になって歯が立たなくなるまで待つ気はありません。フィリピンや日本との間の領海紛争が、正にそうしたものです。

第三に、中国が現状に不満を持っていることです。台湾問題、東シナ海や南シナ海、そして中印国境について不満を持っています。故に、中国の近隣諸国と米国は、ますます中国を憂慮することになるのです。これでは中国の努力も無駄になってしまいます。

閻教授は「道義」を重視しています。しかし私は米国から来た者です。米国人は一般的に道義的優越感を持っています。米国人は、道義を中国に教えなければならないと考えており、中国の教師だと思っているのです。米国が教える道義とはリベラリズムであり、リアリズムの理論は不足しています。そのため米国人の話には、余り説得力がありません。歴史をみると内政干渉により戦争を引き起こしてきたのはリベラルでした。だからいまさら中国が道義を講じ始めると、私は恐ろしくなってきますね

閻 学通):なぜメキシコはキューバに較べると米国と近いのに、キューバのように米国を恐れることがないのでしょうか?それは対米関係が異なるからでしょう。中国がもし近隣諸国の「長兄」のように振る舞い、「末弟」に対し安全保障を提供すれば、近隣諸国は中国の強大化を心配しなくなるはずです。もちろん故意に中国へ対抗する国家には、懲罰と教訓を与えなければなりません。その点については、中国は米国に学ばなければならないと思います。敵国と友好国について、賞罰を明確にしないといけないのです。

中国には近隣諸国に知ってもらうべき事があります。それは、中国の強大化によって経済的に利益を得るのは近隣諸国の方であり、中国が近隣諸国から利益を得るのではない、ということです。これと引き換えに、中国は政治と安全保障の領域での協力を得ることができるのです。

「道義」について言えば、もちろん米中間で「道義」の定義は異なります。米国のように武力で自国のイデオロギーを押しつけて見習へと要求することは、中国にはできません。中国の道義は「来る者は拒まず、教えには赴かず」です。外国をアゴでこき使うようなことを中国はしません。中国は近隣諸国への援助を通じて友好を図っていきます。

(本文は対談でのミアシャイマー・阎両氏の発言から一部を選び出し整理したものです)

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うーん、この中国のミアシャイマーと呼ばれる閻学通教授の「道義」や「王道」というのには色々とツッコミがいがありますね(苦笑

しかし関心するのは、中国側が「道義」のような「価値観」を堂々と主張するその姿です。これは逆に日本人としては見習わなければならない点なのかなぁと感じます。

いや、実際はあまり見習いたくないですが。


Commented by 桃井 at 2013-12-13 23:53 x
奥山真司先生
最近このサイトを知り読ませて頂いています。ありがとうございます。

~感想です~
現在の状況を考えると、終戦後、日本は米軍に駐留されたことは、ベターだったと思っています。
なにより、分割統治されなかったことは、日本の幸せだったと思います。
また、米国人による日本統治で、まだよかった。ロシア人による悪名高いベルリン強姦のようなこともなく、日本人は幸せだったと。
これから、中共支那人と戦争か?と思うと、なんとしても、日本を守らなければいけない、と心に誓うのです。戦争が好きで、このような、無粋な事を書いているわけでは決してありません。
昔の通州事件や現在のチベット人に対する虐殺等を聞くにつけ、今の米国人とは違い、民族を入れ替えてまでその土地を支配するのだと、民族の性質を、おののきながら感じます。弱い子供や老人・女性は、蹂躙されるでしょう。特に女性は無差別に強姦されることが、予想されます。
日本の人々を守りたい、そう思いコメントさせて頂きました。

これからも、拝見しております。宜しくお願い致します。
Commented by んぼ at 2013-12-14 02:25 x
アメリカも中国も何らかのイデオロギーが無いと統合できない国家なのだなと感じました。そして周辺にそのイデオロギーや価値観に異を唱える勢力があると不安になるのだろう。アメリカと中国は帝国としてしか生きられないのですね。
Commented by sirimonkon at 2013-12-14 05:18 x
イメージ通りの中国人で、ある意味、ほっとしました。
Commented by ちゃんきり at 2013-12-15 09:23 x
この中国の学者さんはリアリストをうたっている割には、ちょいちょいコンストラクティビズムやアイデアリズムを挟んでますね。
Commented by MARC at 2013-12-16 14:49 x
ミア氏の主張は極めて単純明快ですが、閻氏の主張もとても理解し易いものだと思います。伝統的な朝貢体制を目指すと言っている訳ですから、我々アジア人には割と理解し易い一方、ミア氏にはリベラリズムと同様、理不尽なものに映ったのかもしれません。中国指導者層の本音に近いもの、というか習性なのでしょうか。
閻氏もリアリストであるならば、なぜ過去に失敗した朝貢体制を持ち出すのか?道義や王道のような中国人にしか理解できないような思想をあえて持ち出すのは何故なのか?色々興味が尽きません。

今後も中国におけるリアリズムの動向を紹介頂けたら幸いです。
Commented by スルメイカ at 2014-09-14 22:18 x
結局、中国ではこの21世紀にあっても未だに近代以前の王朝国家の世界が生きているわけですね。
事あるごとに行動や言動がずれてくる大元の理由もそこにあります。
現代中国全土の都市におびただしく建っている新都市計画も、一見したところでは最新の現代建築のように見えながら、その実は古い近代以前の様相を持っています。
それはまるで江戸時代の日本に最新の技術を接木したような倒錯した世界です。
中国などは未だに近代以前に、そしてシンガポール以外の他のアジアの国も日本を含めて未だに近代の世界に生きています。
やはりアジアはまだ世界の中では遅れた地域なのでしょう。

Commented at 2014-09-17 08:51 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
by masa_the_man | 2013-12-13 19:07 | 日記 | Comments(7)