戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


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アメリカの対中戦略は見直しへ?

今日の横浜北部も朝からよく晴れました。相変わらずいい天気が続きます。

さて、引き続き中国の「防空識別圏」についての話題を。またNYタイムズの記事です。

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中国の新たな防空識別圏:オバマ政権の対中戦略の見直しへ
By マーク・ランドラー

●先週末に対外政策やリスク分析の専門家たちがイランとの核関連の取引に引きつけられている間に、世界の反対側では次の大きな地政学的危機が、中国と日本の間で人気のない島々や荒れた海をめぐって始まっていた。

●アメリカは中国がこの島々の上空の空域をコントロールしようとしている状況にたいして、B-52爆撃機を二機飛ばして異議を唱えたが、この事件そのものはオバマ大統領にとって絶好のタイミングで中東から目を東に向けさせることになった。

●オバマ氏のアジアへの「軸足移動」や現在の「リバランス」というのは、どちらかといえば行動のともなわない単なるレトリックであった。しかしバイデン副大統領が来月に中国、日本、韓国に訪問することもあり、オバマ政権はこの政策を見直すチャンスを得ることになりそうだ

●ブッシュ政権でアジアのアドバイザーであり、現在はCSISに所属しているマイケル・グリーン氏は「今ひとつ明確ではないのが、彼らがこれを管理すべき日中問題として見ているのか、それとも北京との長期にわたる我慢比べと見ているのかという点です」と述べている。

●グリーン氏によれば、もし後者であるとすれば、アメリカはこの地域に戦力投射しなければならないし、日本やフィリピンのような同盟国の防衛力の強化に動かなければならないし、中国の沿岸部を囲んでいる国々に中国の侵略的行為にたいして統一して囲い込むように外交的に働きかけなければならなくなるという。ただし問題は「オバマ政権は中国を封じ込めているように見られないように、非常に気を使っている」という点だという。

●これらのそもそもの原因は、日本が実効支配していながら中国が領有権を主張し、その周辺に資源が埋蔵されていると噂されている「尖閣諸島」という小さな島々にある。

●この領有権争いは世界第二位と三位の経済国同士の危険なにらみ合いへと急速に発展しており、帝国時代の日本の行為についての古い記憶を呼び起こし、保守派の日本のリーダーである安倍首相と、ナショナリスト的な波に乗る中国の習近平主席を戦わせることになっている。

●このような微妙な問題のため、バイデン副大統領のアドバイザーたちは、この紛争の話題はどの会談でも取り上げられるはずで、TPP推進や北朝鮮の核対策などの議論が犠牲になる可能性があると見ている。さらにバイデン副大統領は、安倍首相と韓国の朴槿恵大統領の間の敵対関係をどのようにマネージするかの決断に迫られている。

●今週の水曜日にオバマ政権のある政府高官は「中国の周辺国にとって看過できないような不気味な行動パターンが出てきている」と述べている。これはバイデン副大統領がアジアで伝えるはずのメッセージを予見したものだ。ところが同時にバイデン氏は、北京に出向いて新しい対外政策の方針(外交的な言葉でいえばやんわりとした処罰)を伝えるわけではない。

●オバマ大統領のアジア政策には、中国との「協力」と「封じ込め」という微妙なバランスが求められており、これこそがここ二週間ほどにおける政権から発せられる複雑な声明となって表されている。北京政府側の今回の挑発的な行動の直前にスーザン・ライス国家安全保障アドバイザーは「アメリカが新しい大国関係のモデル」を探っていると言明している。「これはつまり、避けられない競争を管理しつつ、利害が一致するところはさらに深い協力関係を固めるということです」と彼女は言っている。

●ライス氏は中国とその周辺国との領土紛争(これは東シナ海における日本だけでなく、南シナ海におけるフィリピンやベトナムとのものも含む)に関して、「すべての関係各国に強制力の発揮や侵略行為をやめさせて、国際法や規範にのっとって主張をするよう」求めていくと言明している。

●これを批判的に見る人々の中には道徳論的な匂いを感じたと指摘する人もいる。なぜなら強制や侵略というのは、中国が現在小国にたいして行っているものだからだ。ところが土曜日に北京政府が尖閣諸島の上空を含む広大な防空識別圏(ADIZ)を主張すると、アメリカは本気の行動に出た

●ジョン・ケリー国務長官は中国による「エスカレーション的な行動」をすぐさま非難したり、国防長官のチャック・ヘーゲルは米軍がこれによっていままで行ってきた作戦行動を変えるつもりはないと述べており、実際にグアムから中国沖への日常任務として非武装の爆撃機を派遣している。

●オバマ政権の高官は、中国の国際空域にたいする怪しい宣言を引っ込めさせることが重要であると述べている。中国側の方針は、外国の飛行機がこの防空識別圏を通過する場合には身分を伝え、飛行計画をあらかじめ伝えておかなければならないということであり、しかもこれは中国の領空を飛ばない場合でも必要だというのだ。

●アメリカは予告せずにこの空域にB-52を飛ばしたのだが、これによってバイデン氏はタフガイをわざわざ演じる必要がなくなった。しかし専門家によれば、彼は習近平主席との会談で「アメリカが中国の動きを間違ったものであると考えている」と明確に伝えなければならないという。

●クリントン政権で中国専門のアドバイザーを務めたケネス・リーバーサル氏は「とくに日本がこれに同調する場合、中国側は何度もスクランブルを仕掛けてくるようになるでしょう」と述べている。

●しかしバイデン副大統領はこのような経験を豊富に持っている。2011年の北京訪問の時に、彼は中国政府高官たちにたいして、中国機がアメリカ機に異様なほど接近している様子を撮影した写真(撮影したのは米偵察機のパイロット)を見せているのだ

●バイデン氏は習近平氏と個人的な関係を築いてきた。二人は習近平氏がまだ副主席だった時代に中国国内やアメリカ国内を一緒に旅しており、これによって中国のリーダーたちが国内からの強烈な圧力(最近の中国国内の危険な経済改革によって)にさらされていることについて知ったようだ。

●ブルッキングス研究所の上級研究員であるチェン・リー氏は「中国の様々なメディアでは、この経済改革についての紛争が話題になってます。ただしアメリカはアジアの国々にとって主権に関する問題がどれほど重要なのかを理解できていません」と言っている。

●しかもこの緊張はさらに高まっていきそうだ。中国海軍は唯一の空母を南シナ海に派遣しており、東シナ海ではアメリカの空母機動部隊が以前から計画されていた日本の軍艦との共同軍事演習を行うことになっている。

●この海域にはあまりにも火力が集まっているために、専門家の中には両側にとって計算違いが起こる危険があることを指摘するものがいる。まずは東京を訪れるバイデン氏は安倍首相にたいして自制を促すことになると見られている。

●しかし中国関連の専門家たちによれば、よいニュースは習近平主席が軍事的な冒険よりも中国経済の改革のほうに関心を持っているという点だ。リー氏は「戦争勃発の確率はまだ低いです。それでも事件によってリーダーたちが決断を迫られてしまうような事態というのは起こりうるのです」と言っている。

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次の動きは来週のバイデン副大統領のアジア歴訪ですね。

それにしてもアメリカのような爆撃機派遣とか、中国の一方的な防空識別圏設定宣言など、ドライな戦略の考え方というのはつくづく今の日本人の世界観に合わないやりかたのように感じますな。

ま、いざとなったら日本もそういうことできるようになるのかもしれませんが・・・・


Commented by だむ at 2013-11-29 21:27 x
まあ、副大統領が行ったぐらいで中国が引っ込むわけもないし
Commented by sdi at 2013-11-30 00:11 x
米国内のパンダハガーが頭抱えてる様が見えるようですね。
「中国は話が通じる相手だと思っていたのに・・・・・・」と。
アメリカ始め関係諸国の反応を甘く見て、ここまで中国に踏み切らせてしまった原因の一つに、パンダハガー達の態度を外交サインだと(自分たちに都合よく)誤解してしまったから、というのはありそうに思えるんですが。
Commented by 無花果 at 2013-12-02 03:53 x
>ドライな戦略の考え方というのはつくづく今の日本人の世界観に合わないやりかたのように感じますな。

米軍のB-52が飛ぶより前、中国の宣言当日に自衛隊機が飛んでいたようなので、案外そうでもないのかもしれません。
by masa_the_man | 2013-11-29 20:51 | 日記 | Comments(3)