中国の防空識別圏:NYタイムズの社説
2013年 11月 28日
本日は講演2本立てなんですが、移動中にNYタイムズの数日前の社説を読んで面白かったでその要約を。
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中国の威圧的なプレイ
By NYタイムズ論説委員
●東シナ海の海域上空に新たに広域の防空識別圏を設定するという今回の中国の決定は、周辺の島々についての領土争いを穏便に解決したいという北京政府の主張と矛盾している。今回の宣言は、緊張を高めて日本との直接紛争の可能性を上げる、極めて挑発的な動きである。
●先週の土曜日に、中国は尖閣諸島の上空に防空識別圏の設置を宣言したのだが、これによってこの空域に入ってくる航空機に身元照会を行わせ、さらにこれを行わない機体にたいしては軍事行動をしかけることができるという権利を宣言したことになる。この無人の島々(しかもそのうちのいくつかは岩礁)は日本によって管理されているが、中国や台湾も領有を主張している。
●世界第二位と第三位の経済大国である中国と日本は、一年以上にわたってこの領有権についての主張を段々と激化させてきている。安倍晋三氏に率いられた超民族主義的日本政府は扇動的であることが多いのだが、中国もこの海域における日本の領有権に挑戦するために沿岸警備船や航空機を増産することで地域の不安定化に貢献している。
●この防空識別圏は、日本の支配領域に挑戦する形で主張されており、中国はこの地域における領有権をさらに積極的に拡大したのだ。これは習近平主席と親密な関係を築こうとするアメリカ側の姿勢をかなり難しくしてしまった。
●アジアの航空各社は、この空域に入る航空機の飛行計画を提出することを中国政府にたいして即座に表明しているが、一方的な権力の主張は、日米両政府を怒らせることになっている。
●チャック・ヘーゲル米国防長官は土曜日にアメリカ側の素早い反応の一部である公式声明として、中国側の一方的な宣言は「米軍のこの地域における行動の自由にとって障害になるものではない」と発表しており、日本が攻撃された場合にアメリカが日米同盟にしたがって守ることを再確認している。月曜日には安部首相が日本の空域を守ることを宣誓している。
●中国の軍事行動の脅しを含む一方的な決定のおかげで、アメリカは同盟国である日本を支援することや、空と海の航行の自由の原則、そして東シナ海や南シナ海で中国との領土問題を抱えている他のアジアの国々のために声を上げる必要があったのだ。
●もちろんアメリカは日本が尖閣諸島の管理者であることを認めているが、領有権については一般的に中立な立場をとっており、主張を行っているすべての政府にたいして紛争を穏便に済ませるよう促している。
●ところが安部首相は、日本とアメリカにとっても危険になる可能性のある、過熱した言葉や中国にたいする積極的な姿勢にあふれた、極めて民族主義的な対外政策を追求している。
●オバマ政権は、日本の安倍政権が中国との緊張を高めるような過度なリスクをとらせないようにしながら、同時に日本の国益を守る方法を探らなければならない。前任者と同じく、オバマ政権は自ら発するメッセージを明確にしていないし、それが首尾一貫してなかったために、この姿勢を変える必要がある。
●ところが今のところ、最も問題なのは中国の態度である。とくに政府高官たちがさらに防空識別圏をさらに拡大させる可能性について否定していない点は問題だ。アメリカは中国に注意と自制を促し、日中二国が紛争への道に進まないように積極的に動いていくべきだ。中国が日本や他国の航空機がこの空域に侵入してきた時に本当に軍事行動をとるつもりなのかはまだ明確ではないが、紛争がエスカレートしてくれば、計算違いや勘違いのチャンスは高まるのだ。
●今回の中国の行動は、来月のバイデン副大統領のアジア訪問に暗い影を落とすことになった。また、習近平主席が今年のはじめにオバマ大統領と築き上げたいと言った「新しい大国関係」というものが一体どのような意味を持つものなのかということについても、新たな疑問を呼び起こすことになっている。
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これを読むと彼らの前提として「安倍政権は極右政権」という認識があることがよくわかりますね(苦笑)
その代わりに今回はさすがにアメリカのリベラル側にとっても中国の行動は我慢ならない、ということなんでしょうが。



さて、安倍政権が積極外交に乗り出した理由は、グローバリストの一派に迎合した訳でも、ましてや極右超民族主義性向から世界の覇者に成るべく動き出したという訳でもありません。日本の文明力を使って、棲み分け原理に則り、諸文明社会が極力相互破壊することなく存続できる様にする事にあるのです。
