地政学はどこで体系的に学ぶことができるのか |
さて、下のエントリーでkenさんという方に「海外の大学院で地政学は体系的に学べるのか」という質問をいただきましたので、簡単にお答えさせていただきます。
まず大前提としてお伝えしなければならないのですが、地政学というものは、私の知る限り、英語圏では単独の科目やモジュールとして教えられてはおりません。
すでに色々なところで書いているように、地政学というのは大きくわけて「古典地政学」と「批判地政学」の二つ流れがあります。
まず「古典地政学」のほうですが、これは国際関係論(IR)、とくにリアリズム系の安全保障論の一部として教えられているものか、私がやったように「戦略学」(Strategic Studies)の(とくにランドパワー理論)の一部として教えられることがあります。
ただし、いずれもまとめて単独の学科として教えられているわけではありません。あくまでもその中の一部なのです。
そして「批判地政学」のほうですが、これは主に政治地理学の一部として教えられており、ひたすら古典地政学的な思想の怪しいところを暴くことに全力を上げているような状態です。
もし本当に体系的に学びたい、ということであれば、これはもう自分一人で独学するしかなくなるわけで、たとえば私が本ブログの右にあるリストに示したオススメ本(とくに英語のもの)やCDなどを参考にしていただく他ない、というのが正直なところです。
ただし少し調べていただくとおわかりいただけると思うのですが、地政学ズバリそのままのものはなくても、「地政学的思考」というものが染み付いているものはけっこうありまして、たとえば私が翻訳したミアシャイマーの『大国政治の悲劇』などは、その代表例といえるでしょう。
また、古いところではジョージ・ケナンの「アメリカ外交50年」や米軍の一連の戦略文書など、どう考えても「地政学的」としか言いようのないような文書や本は数知れず。
結論としては、おそらく体系的にまとまった形で学ぶことはできないが、そのエッセンス的なところは意識すればいくらでも学ぶことはできる、というところになりそうです。
なんだか答えになってないかもしれませんが、ご参考まで。