戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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ドイツとイギリスの盗聴事件にたいする反応の違い

今日の横浜北部は朝から曇りがちでした。ここ数日と比べると朝の寒さはややおさまっているような。

さて、スノーデン事件から波及して出てきたアメリカの盗聴事件ですが、ドイツとイギリスでその受け取られ方が違うという歴史的・文化的背景を分析した面白い記事がありましたのでその要約を。

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アメリカの二つの同盟国:スパイ計画にたいする異なる反応
by カトリン・ベンホールド

●ベラ・レングスフェルド女史が「国が自分のことをスパイしている」と気づいたのは、車が彼女の家にあらわれはじめてからだ。これは1982年だったが、共産主義の東ベルリンでは車は珍しい存在であり、しかも3台まとめてあらわれたのだ。

●しかも彼女のアパートにつづく階段では若い男たちがたむろするようになり、電話も盗聴されはじめた。それ以降にレングスフェルド女史と夫が何かプライベートなことを話したいときは外に散歩にいくことにした。

●しかし驚いたことに、ベルリンの壁が崩壊した後にシュタージ(国家秘密警察)の文書が公開されて判明したのは、彼女をスパイしていた49人に自分の旦那も含まれていたということだ。

●したがって、プライバシーのことになると、作家でドイツのキリスト教民主党のメンバーであるレングスフェルド女史(61歳)の立場はきわめて明確で、「民主政治のものであっても、私はいかなるシークレットサービスを信用しておりません」というものだ。

ゲシュタポとシュタージの両方を生み出した経験を持つドイツという国にとって、アメリカのNSAのスパイ計画は強い反発を巻き起こしたのであり、結果的に一つの大きな疑問を生じさせることになった。このスパイ計画については、ドイツの反応が例外的なのだろうか?それともヨーロッパ全体がアメリカの信頼性についてムードを変化させていることの兆しなのだろうか?

●シュピーゲル誌は最近のトップ記事で元NSA契約職員であるエドワード・スノーデン氏のドイツへの亡命を求める51人の政治家や知識人、それにビジネスや労働組合のリーダーたちの意見を載せている。ドイツのメルケル政権はスノーデンを国会での証人喚問させ、彼女の携帯電話の盗聴をベルリンのアメリカ大使館がどのように行っていたのかをしゃべらせようとしている。

●もし特殊な歴史を持ったドイツがアメリカのヨーロッパにおける監視についての一方の極端な見方を示しているとすれば、もう一方の見方をしているのはアメリカと「特別な関係」をもつイギリスである。

キャメロン首相はスパイ疑惑への批判にたいして、そもそも真面目に取り合うような様子を見せていない。最初にスノーデン事件を報じた新聞の一つであるガーディアン紙は、キャメロン首相の部下が社まで訪れてきて「リークした情報の入っているパソコンを破壊した」と主張したことを報じている。

●国内の諜報を行うMI5のトップは、「盗聴記録を公開することは、テロリストたちに“お宝”を与えてしまうようなものだ」と述べており、英国内の数紙でもそれに同調するような論説記事が書かれた。

●イギリスはイラク・アフガニスタンでアメリカの同盟国として大きな役割を果たしており、他のヨーロッパ諸国と比べてもテロからの脅威を感じやすいと言える。たしかに2005年7月のロンドンでの爆破事件では52人の民間人が犠牲になっており、安全保障と自由のバランスはどうしても安全保障のほうに傾きやすい。

●ところがこれが話のすべてではない。そもそもイギリスにはアメリカやヨーロッパの国々のような書かれた憲法は持っておらず、 権利というよりは「禁止事項によって成り立っている国」なのだ。「そういう意味でスパイ活動は容易なのだ」とは、ガーディアン紙の論説委員であるアラン・ルスブリッジャー氏の言葉だ。

●また、イギリスは一度も全体主義的な警察国家というものを経験していない。その証拠に、イギリスのスパイはほとんど神話的ともいえる尊敬を集めてきた。彼らはナチスのエニグマ暗号を解読したし、ヒトラーを倒す役割を果たしたという意味で、植民地を失った後でも自信を失わずに特別な地位を保ってきたのだ。

●オックスフォード大学の歴史家であるティモシー・ガートン・アッシュは「イギリス人は、他の国では考えられないくらいシークレットサービスを尊敬してきた」と述べている。彼はドイツとイギリスの違いをよくわかっている人間だ。なぜなら彼が1980年代に東ベルリンに住んでいた時に、シュタージに監視されていたからだ。

●この経験について書いた『ファイル――秘密警察とぼくの同時代史』(みすず書房, 2002年)という本の中で、彼は自分のケースに関わった最も地位の高い人物であるギュンター・クラッツ将軍の存在を突き止め、なぜ最近学校を出たばかりの若い人間を疑って長い報告書を書いたのか聞いている。

●将軍はその理由として、「スパイ学校に入学した最初の日に、イギリスの伝説的なシークレットサービスのことを聞いたからだ」と答えている。つまりそれほど疑わしいような顔をしていなくても、イギリス人であれば誰でもすぐに監視すべきだと彼は思った、ということだ。

●このようなイギリスにたいする尊敬は、アメリカのNSAとの関係もあるために、少なくとも外国ではもう減ってしまったことであろう。イギリスの駐ドイツ大使がドイツ政府に召喚されたが、これによってヨーロッパ内で対応の違いがあることが浮き彫りになった。

●もちろん、その他のヨーロッパの国々が地域NO1の経済大国であるドイツと怒りを共有するか、もしくはアメリカを許してやりすごすかどうか、そして大西洋間の協力関係が永久に破壊されてしまうのかはまだわからない。

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たしかに今回のドイツ側の反応はかなり厳しい感じですよね。日本ではほぼ「他人事」という感じですが(苦笑


Commented by 大阪人K at 2013-11-15 23:12 x
日本の場合、首相への盗聴が発覚してもそれほどの騒ぎにならないでしょうが、皇室への盗聴が発覚したら・・・・

そのとき日本がどうなるのか、見てみたいような気がする今日この頃です。(苦笑)
by masa_the_man | 2013-11-15 23:01 | 日記 | Comments(1)