2013年 11月 01日
書評:Drunk Tank Pink |
今日の横浜北部はまたしても朝からよく晴れております。秋晴れの気持ち良い日が続きますね。
さて、明日はクラウゼヴィッツ学会のシンポジウムで発表、そして日曜日はオフ会ということで少々忙しくしているわけですが、私が暇を見つけては読んでいる面白い本の書評の紹介を。
すでに二回目の紹介ですが、それほど面白い本です。誰か翻訳してくれないですかね?
===
書評:Drunk Tank Pink, and Other Unexpected Forces That Shape How We Think, Feel, and Behave by Adam Alter
●本書で著者のアダム・アルターは自分と他人の研究結果を活用しながら、われわれ人間が自分たちの気づかなかったり、そもそも重要ではないと思っている要素から影響を受けているということを見せている。
●そのような意味で、この本は「ヤバイ経済学」と「予想通りに不合理」という本を組み合わせたような内容になっている。
●この本の奇妙なタイトルは人間の攻撃的な態度を抑え、エネルギーを奪い、筋肉の力を落とす作用のある壁の色から名付けられている。この色は独房や競技場の(ビジター側の)ロッカー・ルームに使われている。
●私は魅力的な女性のについて書くことが多いが、アルター氏はチェスのチャンピオンが女性のプレイヤーとチェスで対決するとき、とくに男性が魅力的であると感じる女性と対決する時にどのような行動をするのかという研究について興味深いと感じた。
●それによると、男性の態度というのは相手が男の場合と比較して変化するという。(魅力的な)女性と対決していると、男はよりリスクの高い戦略を使うようになり、結果として負けることが多いという。
●そしてこのような行動の変化は、知的活動の分野ではないスケートボードの競技の場合でも同じだというのだ。ある研究では男のスケートボーダーに、簡単なものと難しいものの、二つの技を行うように指示している。もちろん難しい技は危険だが、その分だけ成功すると満足度が高いものだ。
●そして魅力的な女性が観客として見ていると、そのスケートボーダーは難しいトリックのほうを試すようになるという。
●このような行動は、進化心理学によって説明できるという。原始時代では、男たちは女の気を引くために自分の強さと技を見せようとしてきたのであり、ライオンや象はいまだにこれを行っている。もちろん現代では「闘い」はなかなか起こらないものだが、それでも男はいまだに女性にたいする力のアピールを忘れていない。
●あなたは太陽の光によって元気づけられる感じがするだろうか?実際のところ、太陽というのは精神的に茫然自失状態を引き起こすもののみたいだ。オーストラリアの研究者たちは何も事情を知らされていない買い物客にたいして記憶テストを行っており、いくつかのアイテムを、店に入った時と出た時にどれだけ覚えているのかをチェックしている。
●結果は、曇の日のほうが晴れた日よりもテストの結果が実に3倍も高かったという。
●この本の中の一章では、驚くべき「色」の影響力について書かれている。赤には色々な効果があるが、中でも不思議なのは「赤色のペンは、それを使う人物の評価や判断基準を厳しくする」というものだ。
●たとえばある小論文のチェックをした人々が行った間違いの修正の数は、赤色のペンを使った場合と青色のペンを使った場合に、24箇所と19箇所で赤色のほうが多くなっている。同様に、ある小論文の点数の平均を見た場合、青の時は80点だったものが、赤の時は76点になったりしている。
●そして赤色は生徒にたいしても効果を与えているらしい。著者は様々な実験で赤を使った生徒たちのテストの成績が悪かったことを紹介している。
●この本は様々な研究結果を紹介することだけに費やされていると言えるが、そこまで科学的な書き方をされてはいない。著者は入門レベルの人間にとっても極めてわかりやすい文体で書いている。
●もしこの本に弱点があるとすれば、それは実験の結果だけが書かれていて、もう少しその内容を知りたいと思う人には物足りないと感じるとこがあるという点であろう。しかしその先の細かいところまで知りたいという人には、後ろの参考文献のところに細かい引用先が乗っている。
●人間がもっている奇妙な癖を知りたいというのであれば、本書は必読書といえるだろう。
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これに加えて今はテクノロジーとソーシャルメディアに関する本をもう一冊並行で読んでおります。こちらのほうもなるべく早めに紹介するつもりです。
さて、明日はクラウゼヴィッツ学会のシンポジウムで発表、そして日曜日はオフ会ということで少々忙しくしているわけですが、私が暇を見つけては読んでいる面白い本の書評の紹介を。
すでに二回目の紹介ですが、それほど面白い本です。誰か翻訳してくれないですかね?
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書評:Drunk Tank Pink, and Other Unexpected Forces That Shape How We Think, Feel, and Behave by Adam Alter
●本書で著者のアダム・アルターは自分と他人の研究結果を活用しながら、われわれ人間が自分たちの気づかなかったり、そもそも重要ではないと思っている要素から影響を受けているということを見せている。
●そのような意味で、この本は「ヤバイ経済学」と「予想通りに不合理」という本を組み合わせたような内容になっている。
●この本の奇妙なタイトルは人間の攻撃的な態度を抑え、エネルギーを奪い、筋肉の力を落とす作用のある壁の色から名付けられている。この色は独房や競技場の(ビジター側の)ロッカー・ルームに使われている。
●私は魅力的な女性のについて書くことが多いが、アルター氏はチェスのチャンピオンが女性のプレイヤーとチェスで対決するとき、とくに男性が魅力的であると感じる女性と対決する時にどのような行動をするのかという研究について興味深いと感じた。
●それによると、男性の態度というのは相手が男の場合と比較して変化するという。(魅力的な)女性と対決していると、男はよりリスクの高い戦略を使うようになり、結果として負けることが多いという。
●そしてこのような行動の変化は、知的活動の分野ではないスケートボードの競技の場合でも同じだというのだ。ある研究では男のスケートボーダーに、簡単なものと難しいものの、二つの技を行うように指示している。もちろん難しい技は危険だが、その分だけ成功すると満足度が高いものだ。
●そして魅力的な女性が観客として見ていると、そのスケートボーダーは難しいトリックのほうを試すようになるという。
●このような行動は、進化心理学によって説明できるという。原始時代では、男たちは女の気を引くために自分の強さと技を見せようとしてきたのであり、ライオンや象はいまだにこれを行っている。もちろん現代では「闘い」はなかなか起こらないものだが、それでも男はいまだに女性にたいする力のアピールを忘れていない。
●あなたは太陽の光によって元気づけられる感じがするだろうか?実際のところ、太陽というのは精神的に茫然自失状態を引き起こすもののみたいだ。オーストラリアの研究者たちは何も事情を知らされていない買い物客にたいして記憶テストを行っており、いくつかのアイテムを、店に入った時と出た時にどれだけ覚えているのかをチェックしている。
●結果は、曇の日のほうが晴れた日よりもテストの結果が実に3倍も高かったという。
●この本の中の一章では、驚くべき「色」の影響力について書かれている。赤には色々な効果があるが、中でも不思議なのは「赤色のペンは、それを使う人物の評価や判断基準を厳しくする」というものだ。
●たとえばある小論文のチェックをした人々が行った間違いの修正の数は、赤色のペンを使った場合と青色のペンを使った場合に、24箇所と19箇所で赤色のほうが多くなっている。同様に、ある小論文の点数の平均を見た場合、青の時は80点だったものが、赤の時は76点になったりしている。
●そして赤色は生徒にたいしても効果を与えているらしい。著者は様々な実験で赤を使った生徒たちのテストの成績が悪かったことを紹介している。
●この本は様々な研究結果を紹介することだけに費やされていると言えるが、そこまで科学的な書き方をされてはいない。著者は入門レベルの人間にとっても極めてわかりやすい文体で書いている。
●もしこの本に弱点があるとすれば、それは実験の結果だけが書かれていて、もう少しその内容を知りたいと思う人には物足りないと感じるとこがあるという点であろう。しかしその先の細かいところまで知りたいという人には、後ろの参考文献のところに細かい引用先が乗っている。
●人間がもっている奇妙な癖を知りたいというのであれば、本書は必読書といえるだろう。
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これに加えて今はテクノロジーとソーシャルメディアに関する本をもう一冊並行で読んでおります。こちらのほうもなるべく早めに紹介するつもりです。

by masa_the_man
| 2013-11-01 16:41
| 日記