子供をiPadで黙らせるのは教育上許される? |
さて、テクノロジーと社会についての興味深いトピックについての記事の要約です。
これは子供の教育に関することなんですが、たしかにガジェットにあふれている現代の子供たちが将来どうなるのかというのは未知数なところが・・・・
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子供とタブレットと心の成長
By ニック・ビルトン
●最近のことだが、私は自分の姉が魔法を使うのを目の当たりにした。
●われわれはレストランに座っており、会話をしようとしていたのだが、彼女の子供である4歳のウィローと7歳のルカが喧嘩をやめようとしなかった。その内容も、フォークについてや、どちらのコップに水が多いかという下らないことだった。
●するとまるで帽子からウサギを取り出すマジックのように、姉は自分のカバンの中から二つのiPadを取り出し、二人に渡したのだ。
●すると突然この二人は静かになった。しかもその静かさは気味悪いくらいだ。二人ともゲームをしたりビデオを見たりし始めてくれたおかげで、われわれは会話を続けることができたのだ。
●食事の後、彼女はiPadをカバンにしまったのだが、姉は少し罪悪感を感じていたらしく、「食事の時にiPadを彼らに渡すのはよくないと思うんだけど、それで一時間くらい静かにしてくれるんだったら私たちもゆっくり食事できるし、何よりも他のお客さんにも迷惑をかけなくて済むしね。だから渡しちゃうのよ」と教えてくれた。
●ところが彼女はその後に、「これってこの二人にとって悪い影響を与えるかしら?このおかげで彼らが将来夕食の時に電子機器を使うのはOKだと勘違いさせてしまっても困るんだけど」と私に聞いてきたのだ。
●私はそれにたいする良い答えを考えつかなかった。
●もちろんこれについて意見を持っている人はいるかもしれないが、誰も今のタブレットで育った若い世代が将来どのようになっていくのかについて科学的に裏付けのある意見を持っているわけではないのだ。
●「このようなテクノロジーが神経学的にどのような影響を与えるのか、われわれは完全には理解できていないのです。子供も大人と同じように個人差が大きいわけで、スクリーンを見つめて出る影響の差は違うのです」とはゲイリー・スモール博士の弁。
●彼はUCLAの長寿研究所の所長であり、現代のテクノロジーの変化が人間の思考にどのような影響を与えるのかについての著作もある。
●ところがスモール博士は、「われわれの脳はiPadやスマホのような機器からの刺激に非常に敏感であることはわかっています」と言っており、もしひとつのテクノロジーの時間を使いすぎてしまい、両親のような人間たちと夕食の時間に交わることができなくなってくると、特定のコミュニケーションのスキルの発展が阻害されるというのだ。
●では子供が夕食の席でiPadの代わりにクレヨンで遊んでくれれば、より社会的な人間になるのだろうか?
●カリフォルニア大学バークレー校のオズレム・アユダク准教授によれば、夕食の席で絵本やクレオンで遊んでいる子供たちは、周囲の人間とコミュニケーションを行っていないという意味では同じだと指摘している。
●「子供に夕食の時に人と話しをするように教えるというのは、価値観を元にした訓練です。つまりこれはiPad vs. 非電子機器という対立ではないのです」とは彼女の弁。
●つまり仕方なくiPadを子供の渡してしまう親は、少なくとも子供がiPad上で行っていることについてはコントロールできるのだ。
●イギリスで長期間にわたって二〇〇〇年から二〇〇一年にかけて生まれた一万九千人の子供の調査を行っている研究グループが先週発表したある報告書によれば、一日に3時間以上テレビやビデオ、それにDVDなどを見ている子どもたちは、見ていない子どもたちと比べて、七歳になるまでに感情面や人間関係において問題を抱えやすくなるという。
●この研究は一万千人の子供を対象にしたものだが、同じく一日3時間をテレビゲーム(その多くは年齢対象でも適切なもの)で遊んだ子どもたちというのは、同じ時間量をテレビゲームで遊ばなかった子供と比べてみると、同じく七歳になった時点では行動面でネガティブな兆候を示しているわけではないのだ。
●話を夕食の席の姪っ子と甥っ子の話に戻そう。彼らはたしかに楽しそうにiPadのスクリーンを見ていたのだが、その時間には会話を行っていないし、私達が子供の頃にやったように、両親がしゃべっている間にぼーっと考えるわけでもないのだ。
●そしてそこには明らかにリスクが潜んでいるのだ。
●MIT教授のシェリー・タークル教授は、「互いの会話というのは子どもたちが自分自身と会話し、独りになることを覚えるための訓練なのです。孤独に一人で遊ぶことは、幼児期の成長にとって最も基本的なことなのです。つまり親たちは、ガジェットなどで大人しくさせたいがために彼らの学びのチャンスを奪ってしまっているのです」とは彼女の弁。
●彼女は若い子や子どもたち、そしてその両親たちに、幼年期のガジェットの使用頻度などについてインタビューを行っているのだが、そこから彼女が危惧しているのは、子供たちが現実における間違いも不完全性もある人たちとのふれあいを学ばないと、リスクを知らないまま、人とのふれあいを完璧なスクリーン中の世界を通じて見るようになってしまう、ということだ。
●また、彼女は「子供たちは、デバイスとは独立して考えられるようになる必要があります」という。
●彼女は、「子どもたちは、自分の想像の世界をふくらませて遊ぶ必要があるのです。それによって落ち着くことを覚えて、自分が何者であるかを知ることができるからです。こうすれば子供たちはパニックになって孤独を感じることなく他人と関係を結ぶことができるからです。子供に一人でいることを教えないと、彼らはどんどん孤独になるだけです」と言っている。
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これは一般的に思われているよりも、むしろ「思考をオフにする」ということや、「一人で物事をじっくり考える」というところにポイントがあるんでしょうね。
「孤独のススメ」については、こちらの累積戦略と順次戦略について解説したCDもぜひ。
山盛りの資料つきで解説しております。われわれは「孤独」になるべきです。