戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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ある経営者の『戦争論』と『兵法』

今日の横浜北部は昼過ぎから晴れました。意外と蒸し暑かったです。

さて、ある経営者の講演録を読んでいて感じたことを一つ。

ある雑誌の中に載っていた、多くの店を経営する60歳くらいの社長さんの話が載っておりました。

その人は30歳の時に母親である先代の社長から経営権を譲り受けたらしいのですが、社長の仕事をする前に、「社長の最も重要な任務は意思決定をすることだ」と聞いてらしいのですが、実際にはじめてみると心から実感したのは、

「意思決定をする数がとてつもなく多い

ということ。しかもその決定を、

勘、感覚、感情で決める

ということであり、さらに衝撃的なのは、その決定のすべてを勘、感覚、感情で決めているということ。

その彼の理由がすごいものでありまして、

未来のことは誰にもわからないので、最終的にはすべて勘で決めるしかない

と言っているのです。

一般人の感覚では「こんな感じで経営なんかやれるのか」ということでびっくりするわけですが、これは戦略の世界でも実は一緒でして、未来のことは誰にもわからない、だからトップの意思決定者の直観に頼るしかないところがかなりあるわけです。

クラウゼヴィッツはこのような意思決定の優れた才能として「軍事的天才」という概念を提唱したわけですが、この経営者の話はまさにこの「天才」の直観の部分をうまく言い表しているのかと。

さらにこの経営者の正直なところは、まさに戦略本に書いてあるように、

そこに正解はない

ということを述べており、しかもこれは会社だけでなく、人生にも全く同じことが言える、というのです。

ではどうすればいいのかというと、この経営者の方は、まさに孫子のいうように、「情報をできるだけ集めろ」と言います。ただし「集めた上で、そこから先は勘で決めるしかない」と諦めているのです。

つまり彼は、知ってから知らずか、クラウゼヴィッツと孫子の両者のいいとこどり、つまり「勘」と「情報」の二つを重視しているわけですが、個人の人生の場合は、国家の場合ほど意思決定が深刻になることはないので、

どんどん意思決定を積極的にして回数を重ねよう、そうすれば勘が冴えるようになる

という楽観的なメッセージを述べておりました。

私はもちろん会社を経営したことはないのですが、正直こういう現役の経営者の意見には、やはり実践からにじみ出た興味深いものがあるなぁと感じた次第です。

もちろんこの方はクラウゼヴィッツなんか読んだことはないでしょうが(孫子はあるかも)、思いがけずに言っていたことが古典のエッセンスと共通点があるというのは面白いところかと。


Commented by Marc at 2013-10-09 04:52 x
いつも拝見させていただいております。
先日の「戦争の原因は平和だ」論には感服致しました。
本日の直感経営ですが、確かに伝説的な経営者というのは、天才的な勘を持っていたように思えます。
一方で多くの"一般"経営者は勘に頼ったがために会社を傾けたのではないでしょうか?特にベンチャービジネスのスタートアップでは致命傷になってしまいます。
近年、起業アドバイザーのSteve Blank(御存知ないかもしれませんが)はCustomer Developmentという概念を重視し、実際の起業前に潜在的な顧客層にインタビューを行い、自分のアイデア(仮説)が顧客を満足させるものなのかどうか"実験"してみる手法を提唱しております。
自然科学の研究においても、大規模な実験を始める前に小規模の"preliminary実験"をを行い様子を見るということをします。
前置きが長くなりましたが、戦略学においては、このような"実験"を行うことは出来るのでしょうか?
Commented by masa_the_man at 2013-10-09 21:08
Marcさんへ

>多くの"一般"経営者は勘に頼ったがために会社を傾けたのではないでしょうか?

あるかもしれませんね。

>前置きが長くなりましたが、戦略学においては、このような"実験"を行うことは出来るのでしょうか?

ウォーゲーミングですかね。机上演習です。実際に日本でもやっている人はいますが、けっこう面白いらしいです。コメントありがとうございました
Commented by 待兼右大臣 at 2013-10-09 23:49 x
>>勘、感覚、感情で決める
と書くと、何か根拠もなく勝手に決めているような印象を与えますが、仏教哲学的に解釈すれば、次のようになると思います。

人間の心、意識には、本人が自覚することが無い無意識の領域(深層心理≒阿頼耶識)に「過去の体験」とその対応要領が【全て】貯蔵されている。

そして、人は、その無意識の領域の働きによって外界からの刺激に対して反応する。

世間では、その反応を「勘」と表現する。

このブログに即して言えば、その無意識の領域にこそ、その人の「世界観」が宿っているということになります。

戦略論は、この「無意識」の領域にかかわっているからこそ、人は、それを言語化することは出来ないため、 「戦略論はアート」 だと言われることになります。

何らかのきっかけで、その無意識の領域を意識の領域に引きずり出した人が、戦略論を「言葉」に出来るのでしょう。

いつかのオフ会で、深層心理を知覚する方法というレクチャーをした人がいましたが、彼のレクチャーも、この文脈で捉えれば、戦略論の一環として理解できるかと思います
Commented by いとう at 2013-10-10 13:24 x
「武器捨て本」から経営について、思ったことがあります。

取締役の仕事は、人、組織、環境のせいにせずに
人、金、組織の制約条件の中で、「選択肢」を見つけ出すこと。
※もちろん、それぞれの取締役の未来の予測が、その基礎になります。

代表取締役の仕事は、「選択肢」を決定することに、あるかと。
当然、その際の基礎になるのは、未来の予測。

未来の予測を、どれにするのか?
これを決めるのは、一人で行わなければならない。

だから、経営者は、孤独だと言われるのかな?と。
Commented by 朽木倒 at 2013-10-11 20:41 x
OODAループの防御的側面(この表現、ホントにあるのか知らないんですが)と言う奴ですね。
と、月並みなことを言ってみます。

戦場の霧を晴らすものがNCWであるとしたら、市場の霧を晴らすものもやはりNCWのように広い意味で情報でしょう。
では「情報優位で儲ける」情報の在り方は、今後正当性を保てるでしょうか?
by masa_the_man | 2013-10-07 23:44 | 日記 | Comments(5)