戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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安部首相・訪加記念:カナダの北極海についての懸念

今日の横浜北部は雲は多めだったのですが、また晴れました。しかし朝晩はかなり涼しくなりましたね。

さて、安倍首相が今日からカナダに訪問ということらしいですが、首相の来加記念ということで、私の母校の専門家が書いた北極海ネタです。

ロシアの沿岸を通る「北東航路」にたいして、カナダ側を通過する「北西航路」の準備不足を警告する内容です。

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カナダの北極の悪夢が実現!北西航路が商業化
by マイケル・バイヤーズ

●今週のハーパー首相はあまり眠れなかったかもしれない。デンマークのノルディック・オリオン号が北極の「北西航路」を国際的な交易航路として使った最初の貨物船になったからであり、しかもこれがカナダの環境と主権に与えるリスクは潜在的に高い。

●先週に同航路上で起こった沿岸警備隊のヘリコプターの事故は、この航路の危険性を教えることになった。

●三人の乗組員は全員サバイバルスーツを着ており、ヘリが沈む前に脱出できたのだが、それでも砕氷船が現場に到着する前に凍死してしまったのだ。

●ノルディック・オリオン号はある程度の北極海の厳しい環境に耐えうる構造にはなっているとはいえ、それでも海中にある氷山の一角などによって沈んでしまうリスクは存在するのだ。

●カナダの遭難救助の能力は深刻なほど低い。われわれの長距離用ヘリの基地は西部のブリティッシュ・コロンビア州とノバスコシア州、それにラブラドールにあり、北西航路にいくまでには一日かけて2500キロ飛ぶ必要があり、しかも途中で補給をしなければならないのだ。

●カナダ南部からCー130を派遣するのも可能だが、ヘリとは違って人を海上から救出することはできない。しかもこの飛行機は使用して50年近くたっており、維持管理のために派遣できない時期もある。別の飛行機を購入する計画は2002年に始まったが、いまだにその交渉はまとまっていない。

●それと比較すると、ロシアは北極海にいくつかの遭難救助拠点を持っており、それ以外に10箇所を新しく建造中だ。しかもそれぞれ新しい船と飛行機がつくのだ。

●カナダには北西航路周辺に船の故障などに対応できる港を一つも持っていないが、ロシアは16箇所も北極海沿岸に持っているのだ。

●われわれはそろそろ長年議論されているバフィン島にある波止場を通年使える基地につくりかえるべきであり、それ以外にもタクトヤクツクやイカルイトなどにも施設をつくるべきだ。

●大規模な海図の書き換え計画も必要だ。2010年にジョン・ファーキンハム氏は、北極海における最大の問題は海図が不適切であるとあるメディアに答えている。彼によれば、現代の海図の基準から考えると、北極海のたった1割ほどしか適切なものではないという。実際に事故やニアミスは多発している。

●また環境面でのリスクもある。ノルディック・オリオンが運搬する石炭は、いざ事故が起こってもあまり環境にダメージを与えるわけではない。しかし船の燃料はダメージを与える。

●2004年にマレーシアの貨物船がアラスカ近辺で嵐に遭遇して航行不能になり、岸辺に座礁している。この際に120万リットルもの燃料をばらまいてしまった。もちろん場所が場所だったために海から燃料を回収できず、それに対処できるような船も人員もほとんど存在しなかった。

●ところがロシアはこのような事態への備えを行っており、外国の船を護送するための十数隻の砕氷船を用意している。

●一方でカナダの沿岸警備隊の艦船は古くなりつつあり、それらのほとんどは小さすぎて護送船としては使えない。そのうちの一隻をつくる計画もあるのだが、実際の建造の契約はまだなのだ。カナダ海軍には砕氷能力を持つ艦船は一隻もなく、そのような建造計画もはるかに遅れている。

●ノルディック・オリオンの航行はカナダの北西航路における法的立場をおかすものではないし、実際にカナダ政府から通行許可を得ている。ところが他の船がそれに続くことになると、彼らの安全の確保と環境保護の徹底はできなくなるのだ。

●カナダの法的立場を推進する最適な方法は、インフラと重要なサービスを提供することだ。国際的な貿易会社は、砕氷船や世界レベルの遭難救助システム、それに天気(流氷)予報や安全確保のための港湾施設などが確保できれば、カナダの北西航路を活用しようとするはずだ。

●外交的にも北西航路について議論を進めるべきだ。とくにこの航路が自国の安全にも関わってくるアメリカにとっても悪い話ではない。

●アメリカ人の中には、すでにこれらの問題に対処するためには、強力な北極海沿岸諸国の国内法によって対処するのが最も良いということを知っているものもいる。

●カナダが北極海にかける意気込みはどこまで強いのだろうか?その責務をどこまで果たすつもりがあるのだろうか?アメリカとの信頼に足る同盟国であろうか?

●今週のハーパー首相は、目覚めた時にこのような質問を自分自身にたいして問いかけなければならないだろう。

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カナダからの視点ということで、なかなか興味深いものかと。

カナダのインフラが十分でないことは知っておりましたが、まさか現実的にここまでロシアに遅れをとっているとは知りませんでした。

遭難救助が関係してくると、北極海の中央の「公海」を通過する中国の思惑というのは現実的ではないことがわかります。それに今年の夏は北極海の氷がかなり復活したらしいですし。

北極海の地政学ネタは、引き続き本ブログでも追いかけて行くつもりです。
Commented by sdi at 2013-09-29 19:48 x
北極圏におけるカナダのプレゼンス能力の欠如は今にはじまったことではありません。1990年に放映されたNHKスペシャル北極圏で、すでに触れられています。カナダの政府関係者がNHKのインタビューに答えています。当時、今のような気候ではありませんでしたが未開発の地下資源については既に注目されていました。
内容は、ソ連の砕氷船のシベリア沿岸での活動とアメリカの砕氷船(艦?)が北極海のカナダ沿岸部を無通告で航行していた件を例としてあげて航行能力を持たなければ権利を主張することはできない、というような答えを返していたように記憶しています。
 厳しい見方をするなら、其の頃既にカナダは北極圏へ関与について遅れを取っていて今日に至るも、其の差を縮めるどころか開く一方ということになりますかね。
by masa_the_man | 2013-09-29 18:25 | 日記 | Comments(1)