戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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アメリカとEUの交渉はTPPにも決定的な影響を与える

今日の横浜北部は朝から激しい雨でした。午後には少し晴れたのですが、夕方になってまた雲行きが。

さて、ここ数年で非常に注目されているTPPですが、あまり報じられていないアメリカとEUの自由貿易交渉(TTIP)についての報道がありましたのでその要約を。

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アメリカとヨーロッパの貿易交渉で企業のロビー活動が先行

Byダニー・ハキム&エリック・リプトン

●アメリカとヨーロッパの間での自由貿易協定はまだほとんど始まっていないのだが、それでもそこから利益を得たい欧米の企業たちは、すでにロビー活動をはじめている。

●もちろんこのような活動は交渉を複雑にするだろうし、誰もこの交渉が迅速かつスムーズに進むとは思っていない。

●情報公開法などで判明したのは、すでに産業界が「ほしいものリスト」を作成しているということであり、たとえばフェラーリは米政府にたいして税関審査をフリーパスにすることや、ドイツのDHLは国籍に関係なく政府関連の航空運送業務を担当できるよう要請している。

●ところが来年末までに設定されている交渉期限が守られる可能性は低い。交渉そのものがかなり厳しいものになるからだ。次の交渉はブルッセルで10月からはじまる。

●ブリュッセルのあるロビー団体の人間によれば、この交渉は世界的な不況を考えれば全体的によいものであると捉えられているが、それでも実際の細かい交渉になるとかなり複雑になると言っている。

●この交渉が合意に達すると、その影響は世界最大級の貿易圏に住む約10億人に至ることになるし、これがグローバル基準を決めることにもなる。アメリカとEUは、すでに260億ドルの製品とサービスを取引していると推測されている世界最大の貿易パートナーだからだ。

●ところがヨーロッパにとっては、オバマ政権がすでにアジアとの貿易交渉をはじめたという点で、優先順位が低くなってしまうのではないかという恐怖がある

●ブリュッセルのあるロビーイストによれば、「この交渉は、アメリカよりもヨーロッパの政治面での利害のほうが大きい」と述べている。彼は「アメリカの議会でロビー活動をしているんですが、議員たちの関心が薄くて困っているのです」とつぶやく。

●ところが楽観的な人もいる。「オバマ大統領は今年の教書演説でもこの交渉に触れましたし、最後は北アイルランドまで行きましたからね」とはアメリカ側のロビー活動家の弁。

●企業からのコメントで判明したのは、欧米の企業は双方とも規制の調和と関税の低減を求めているということだ。

●しかしヨーロッパ側はクラウドがからむプライバシー関連の議題に敏感であり、スノーデンのリーク事件によってもさらにこの懸念が高まっている。

●化学企業として有名なデュポン社も、アメリカの法律で保障されている取引の機密情報をヨーロッパに持って行った時に保護を受けることができないことにたいして懸念を表明している。EUにはこれを保護するような法律は現時点ではない、というのがデュポン社の弁。

●個別の企業の懸念はさらに細かいものになる傾向がある。たとえばKFCは子会社のレストランをEU内に2200箇所持っているが、アメリカ側の食材(鶏肉など)を納入しようとしても関税による規制がかかって困っているという。

●さらに最も激しい争点になりそうなのが、食品安全管理などにかんする訴訟関連の法律である。これはEUで食品安全基準やインターネット企業に消費者のデータの使い方などについての規制ができることによって問題になるだろう。

●これについてはポジティブな回答をしている企業もあり、たとえばシェブロンなどは「これによって紛争を回避できるようになるはずです」と言っている。

●ところがこれを疑っている人々は多い。「これによって企業は自分たちの好まないような規制の成立を妨害できることになります。EU側にとってはいいことないですね」とはヨーロッパのデジタル権利に関するNGOの幹部の弁。

●また、これは企業側に大きな決定力を与えることになるとする消費者団体の意見は多い。「企業にとって邪魔なものというのは、実際は消費者を守っているものなのです」とはある消費者団体の幹部。

●農業大手で殺虫剤を作っているオーシャン・オスプレー社はヨーロッパの法律に従う際の難しさを表明している。たとえばクランベリーで許されている残留基準はアメリカのそれよりも極めて低いというのだ。鶏肉の中の細菌の発生を抑えるための化学薬品の使用の禁止もアメリカ側のレストラン系の企業にとっては不満の残るところだ。

●とにかくこの合意がもたらすものは、世界に影響を与えることは間違いない。EUとアメリカで合意がなされれば、それが日本、中国、ロシア、ブラジルなどの国々が採用する事実上のグローバル・スタンダードになるからだ。

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マハンをはじめとする地政学・大戦略系の人々がおしなべて主張しているのは、「ユーラシアの端のバランス・オブ・パワーは、もう一方の端のバランス・オブ・パワーに影響を与える」ということですが、この環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)に関する議論も間違いなくTPPと大きな関連性をもってくるという意味でもっと日本のメディアに報道してもらいたいものです。


by masa_the_man | 2013-09-15 17:33 | 日記 | Comments(0)