戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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オバマ大統領の間違い

今日の横浜北部は朝から曇っておりまして、冷房なしでも快適に過ごせております。気温だけは秋に近づいております。

さて、例のごとくシリアネタを。これは新聞のコラムニストのものです

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オバマ大統領は対シリア政策をどのようにして見誤ったのか
by トルーディー・ルービン

●オバマ大統領がシリアの攻撃の本来の狙いである、さらに大きな――そして首尾一貫した――戦略を連邦議会に明示することができなければ、議員たちは拒否することになるだろう。

●いままでのところ、オバマ大統領の説明や、彼の閣僚たちが議会の公聴会で行っている説明は、単に混乱を招いているだけである。テネシー州選出の共和党ボブ・コーカー上院議員は、マーチン・デンプシー将軍(統合参謀本部議長)にたいしてより大きなゴールをはっきりさせようとして「君たちが狙っているのは何なんですか?」と尋ねている。

●将軍の答えは「私は何を目指しているのかということについては答えられません」というあっけらかんとしたものであった。

●このやりとりは、米連邦議会と国家が直面しているジレンマを象徴している。もし軍が大統領の方針を知らないということになれば、大統領自身も明示化できないために、われわれ全員がトラブルに陥ることになる。行く先がわからなければ、そもそもわれわれはそこに行くことができないのだ。

●これは戦争――いや、制限軍事攻撃――を戦う良いやり方とは言えない。

●もちろん政府による攻撃の説明としては、アサドが自国民にたいしてガス攻撃をする能力を「落として抑止する」というものであり、これによって他の虐殺者たちがこのような兵器を使うのを止めるように警告することができることになる。

●攻撃も極めて限定的なものになるはずであり、海上の艦船からのミサイルを使うが、陸上兵力は派遣しないというものだ。これはもちろんシリアの内戦の成り行きを変えないかもしれないし、反政府勢力がアサドを倒す助けになるとはいえないだろう。

●もちろんミサイル攻撃は、大統領が「最後の一線」を設定した際にいくつかの手段を与えることにより、主にオバマ大統領とアメリカの(イランにたいする)「信頼性」(credibility)を助けることにあるのかもしれない。

●ところが狙いのない攻撃というのは、むしろオバマ大統領の評判を修復するよりも落とす確率が高い。もしそれが純粋に象徴的なものであった場合、アサド政権は逆に評判を高めて勝利するかもしれない。すでに議会でも議論され、政府の高官も攻撃ターゲットをリークしているように、アサドは予測される攻撃ターゲットから人員やロケット、砲などを移動させている。デンプシー将軍は「アサドは人間の盾として囚人たちをそこに移している」と証言しているほどだ。

●戦争研究所の上席研究員で、反政府勢力の指揮官たちと長時間インタビューをしたエリザベス・オベイジーは「最小限の攻撃でも利益より害のほうが大きい」と述べている。このような攻撃によって、アメリカの兵器を待ち望んでいるより温和な反政府勢力の士気が落ちることになるというのだ。

● このような現実を踏まえて考えると、ここで陥りがちなのが、ターゲットを増やすこと(そしてペンタゴンはすでにこれを実行している)や、艦船からのミサイル攻撃の他に航空機による攻撃を加えることだ。

●しかしここにも危険が潜む。明確な戦略がないかぎり、オバマ政権は明白な終わりのないままに空爆を長期化させることになり、シリア内部――そして地域全般――に破壊的な結果をもたらすことになるのだ。

●ところがオバマ大統領はこのワナに飛び込みつつあるように見える。

●もちろんホワイトハウスは、シリアがアメリカの軍事行動(それが制限されすぎ/激しすぎ)によって負ければ、その穴をイスラム武装勢力が埋めることになること恐れており、その認識は正しい。

●そしてこの恐れは、政権の優柔不断にある(ホワイトハウスはおとぎ話にあるような、熱くもなく冷たくもないおかゆと同じように、熱くしすぎてアサドを排除せず、かといって弱腰と見られない程度に冷たい攻撃を行いたいと考えているようだ)。

●何人かの上院議員たちはホワイトハウスに向かって、アメリカの攻撃をより穏健な反体制派に武装と訓練をほどこすことを何度か提案している。これによってジハード派ではないかれらがアサドの弱体化によって利益を得られることができればよいと考えるからだ。たしかにこれは戦略的には納得できるものだ。

●シリア内を何度も旅したことのあるオベイジーによれば、反体制派の大部分はジハード派ではない。実際のところ、過激な反体制派はその過激イデオロギーと残虐な市民の扱いを受けて、ジハード派を主流派から追い出している。

●ところがより穏健派の反政府勢力の指揮官(CIAによって身辺調査済み)に軍事援助を行うことをワシントン政府が繰り返し失敗していることは、ジハード側(ペルシャ湾岸の裕福なアラブ諸国から資金と武器を得ている)にとっては利益になっている。

●また、ワシントン政府が傘下の組織として去年の12月に創設に手を貸した最高軍事委員会の支援の失敗も、ジハード側にとっての利益だ。

●8月後半のアサド政権の化学兵器による攻撃の後に、この委員会の5人の委員のうちの四人が、もし西側諸国が軍事支援を行わないのなら委員を辞めて協力するよう反アサド側のジハード主義者たちに脅されている。

●彼らはすでに数ヶ月前に約束されていた小火器の供給が実現しなかったことに腹を立てていた。また、オバマ政権はとくにサウジのような国々にたいして、CIAが身辺調査を行った反政府側に対空兵器を渡すことを認めていない。

●ホワイトハウス側はそのような兵器が過激なイスラム主義者たちの手に渡ることを懸念しているが、穏健派との約束を果たせないでいることは、実は政権側が最も恐れている「ジハード側を強化すること」にもつながるのだ。

オバマ大統領は現在、米軍の軍事アドバイザーたちを反対政府勢力の中の穏健派に訓練を施すことを検討中だと言われている。おそらくこれが意味しているのは、そのような援助が行わなければ軍事攻撃には賛成しないと言っている上院議員たちの機嫌取りのためであろう。

●ところが化学兵器による攻撃の後では、長期にわたる訓練計画だけではな足りないであろう。これはすでに遅きに失した計画なのだ。

●彼の軍・民両方のアドバイザーたちが提言していたように、もし大統領が去年の夏の時点で穏健派の反政府勢力を武装させていたなら、化学兵器による攻撃は行われていなかったかもしれない。よって、現在はホワイトハウスにとって反政府勢力をパートナーとして支援する最後のチャンスかもしれないのだ。

●もし彼らがシリア内部で力をつけることができれば、アサド政権を突き崩すことができ、交渉が可能になるかもしれない。

●これこそが、シリアが将来行う化学兵器の攻撃を防ぐための最適な方法(半端な空爆ではなく)である。

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またまた出てきましたね、「穏健派に武器を渡して訓練を施す」というやり方が。

結局はアメリカにとっても「自分たちの手を汚さずに、いかに被害を逃れるのか」が重要なわけですから・・・

それにしても狙いのハッキリしない戦略というのは恐ろしいものであるわけで。この辺のジレンマはオバマ大統領自身が一番よくわかっているはずなんでしょうが。つくづくアメリカの大統領という役職は因果なもんです。


Commented at 2013-09-10 14:20 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
by masa_the_man | 2013-09-10 12:06 | 日記 | Comments(1)