戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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「ブロック化」ではなく「世界経済の統合」?

今日の横浜北部はまた曇りがちでしたが蒸しました。この湿度はいつ下がるのでしょうかね。

さて、少し前のものですが、ミアシャイマーの先生であるローズクランスの「なぜアメリカとヨーロッパの自由貿易協定(The Transatlantic Trade and Investment Partnership:TTIP)は重要なのか」という興味深い議論です。

TPPとの絡みから見ると、これはブロック化というよりも世界経済の統合というリベラル的なアジェンダということになりますが。

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西側諸国を復活させるための貿易同盟

By リチャード・ローズクランス

●ホレス・グリーリー、ナポレオン・ボナパルト、セシル・ローズの三人は一見すると全然異なる人物のように思えるが、三人が合意していたのは「領土、政治、そして経済の規模は国家の成功に決定的に重要な要素である」という点だ。彼らは西側諸国の間、ヨーロッパ、そして海外において、さらなる領土の獲得を求めていたのだ。

●1904年にオックスフォード大学の地理学者であるハルフォード・マッキンダーは、威厳のある建物の中で開催されていた王立地理学会において、ロシアにある中央アジアの凍てつく草原である「ハートランド」を支配した国が「世界島」(ヨーロッパとアジア北部)を支配し、やがて世界を支配するだろうと述べている。

●マッキンダーによれば、ロシアの平原のような中央に位置する領土というのは海軍力を持たずに東西に拡大する可能性があるというのだ。

●実際のところ、当時のロシアは戦争と革命に直面しており、ハートランドを完全にコントロールできず、さらには世界支配などとても無理だった。

●ところがマッキンダーの言葉が示していたのは、領土と経済規模が国家間の競争で果たす、決定的な役割についてであった。

●マッキンダーを引用したわけではないが、オバマ大統領とドイツのメルケル首相は最近ヨーロッパとアメリカを結ぶ巨大な自由貿易圏である「環大西洋貿易投資パートナーシップ」(Transatlantic Trade and Investment Partnership: TTIP)を結成することを狙って動いている。これによって世界のGNPの半分の経済圏が生まれることになる。

●6月19日にベルリンにおいて、オバマ大統領はメルケル首相の隣でヨーロッパとアメリカは「世界経済の原動力」であることを宣言し、自由と正義と平和を目指す世界の動きにおいて大きな役割を果たすべきだと述べたのだ。

●もちろん二つの大陸を統合することによって貿易と雇用は増加するだろうし、オバマ大統領の目標である、アメリカの輸出の倍増と投資と消費の増加の土台となるはずだ。

●メルケル首相にとっても悪い話ではない。ドイツの車や医療機器はアメリカの市場に流れ込むことになるし、その反対にアメリカはマイクロチップやバイオ系機器、それに液化天然ガスを融通してくれるからだ。

●もし計画通りに来年締結されれば、経済学者たちが予測しているのは少なくとも10年間で100万以上の雇用が生まれ、大西洋の両側にとってGDPが0.5パーセント増えるということだ。多くの大企業にもビジネスチャンスが生まれ、投資と観光業も膨れ上がるという。

●ところが「大西洋海峡」を橋渡ししようとするこのような動きの背後にある本当の理由は、パワーが東洋に移っているという点にあり、そのために西洋諸国がまとまる必要があるからだ。

●逆説的だが、ヨーロッパとの距離を縮めることはオバマ政権の「アジアへの軸足移動」にとって必要な手段なのであり、これによってアメリカとドイツは先進的な産業を合わせて熟練した労働者の力をあわせることができるようになるのだ。

●短期的には中国がこの環大西洋の組み合わせにたいして、他の地域の国々との結びつきを強化することで反応するはずだ(というより、そうしている)。

●中国はドルを売ってユーロを買いながら、アメリカ内の企業における結びつきに頼ろうとしており、ロンドンの金融マーケットに参入してアフリカ中に集中投資している。ところがこのような投資が身を結んだわけではない。たとえばスーダンやジンバブエ、ミャンマーや北朝鮮は新たな国際経済秩序の柱になりそうにもない。

●つまり西側の民主制国家の集まりに対抗できるような勢力を中国がつくれるわけではなく、その間に西側はつい最近、新たにクロアチアをEUに参加させているほどなのだ。

●オバマとメルケルの民主制国家規模の拡大の追求というのは、もちろんそれほど目新しい目標ではない。人口、富、そして経済が大きい国のほうが生産力が高く、大規模な範囲で貿易を行うことは、戦略家たちは昔から気づいていたのだ。

●もちろん世界中で貿易の障壁を崩すという試みはすでに失敗しているのだが、オバマとメルケルにとって東洋の国々の台頭に対抗するために行わなければどのようなものなのだろうか?

●これについて、第二次大戦後の戦略家たちは同じような結論に至っている。

●国務省の伝説的な政策企画室の室長であるジョージ・ケナンとポール・ニッツェは「ロシアと中国の物理的な資源とドイツと東欧諸国の技術と機械を組み合わせれば、対抗できないほどの最強の軍事力になる」と認めているのだ。

●したがって、同盟国側は後にNATOを結成するような忍耐強い努力の積み重ねを開始したのであり、これは後にEUとなる経済力の統合によって下支えされることになったのだ。

●ゴルバチョフやとくにエリティンの政権下で、ロシアは西側やEUへの参加を求めていた。1996年の選挙のおかげで、ロシアはとうとう西側のような民主制国家になったと考えた人も出てきたくらいである。

●ところがプーチンが政権につくとこの夢は潰えてしまった。しかも資源の値段が上がったため、ロシアは西側を必要としなくなったのであり、同時に民主制も必要としなくなったのだ。

●結局のところ、冷戦の勝利というのは西側諸国が経済や産業面で決定的な強さを持っていたからこそもたらされたものである。しかもパワーが対等だったからではなく、パワーに差がついていたからこそソ連を西側が打ち負かすことができたのだ。

●もちろんこれは東側にたいする経済戦争開始の宣戦布告ではない。むしろこれは中国とその他の国々が西側に参加することの必要性の認識であり、これによって半分ずつの世界を一つにしようということなのだ。

●アメリカとヨーロッパが今日の状態で組めば32兆ドルの経済規模になるが、これは将来さらに拡大する。

●勢力均衡は紛争につながるが、バランスが一方に傾きすぎると多国はその経済の中心国に引き寄せられることになるのだ。

●そして中国はその中心国に依存している。ロシアとは違って、中国は石油の大半を輸入しなければならず、現在は一日に970万バレルを消費しているのだ。石油と天然ガスを買うための資金は輸出から調達しなければならず、その輸出は主に西側諸国に向けてのものなのだ。

●この点において西側諸国は今後も有利な立場にある。なぜなら中国は輸出したうちのたった50%だけの付加価値しか得られないからだ。その他はヨーロッパやアメリカの会社の利益となっており、これらの会社が中国の輸出品の研究開発や設計、それにマーケティングと資金調達を行っているのだ。

●今後数十年間、中国は資金を得るために西側諸国にモノを売らなければならないし、まだもっていないテクノロジーにアクセスしなければならない。

●つまりヨーロッパとアメリカの経済の統合には、さらにオープンでリベラル、そして法治的になった中国の参加も必要になってくる。

●もちろん批判的な人々は、これはすでに強い関係を段階的に強化していくだけの話であり、新たな貿易協定などなくても中国を取り込んでいけるはずだという

●ところがアメリカはすでに試して失敗している。2009年のG-2がそれであり、二国間だけでやろうとしていたのだが中国のトップはそれを拒否してオバマ側の気候変動について協力する計画を行き詰まらせたのだ。

●つまりアメリカ側にとって、西洋諸国がまとまることによって中国の気を引くことが必要であることは明らかになったのだ。

●ヨーロッパとの新しい貿易協力の主な有利な点というのは、政治・安全保障面での強い土台があるということだ。もちろんこの土台は平和的なものだが、強力な同盟関係は、西側がそれ以外の国々と対処して復活する際に、テクノロジーや軍事力の強さ、そして政治的な意図という要素を加えることになるのだ。

●結局のところ、戦争ではなく貿易が、他国を西側の経済の中心に呼び込むことになるのだ。

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経済圏の拡大がカギであるということですな。


Commented by えんき at 2013-08-25 07:10 x
ヒスパニック化に怯える米国が本当に必要としているのは、欧州の医療機器などではなく、白人移民です。

現在欧州は、多文化主義による移民問題と新自由主義による経済停滞によって蝕まれていますが、不思議な事にそのイデオロギーの一大中心地であるはずの米国では、欧州程の被害は出ていません。これは嘗て優生学に基く社会政策が、米国から欧州に逆輸出される形で猛威を振るった事例を彷彿とさせます。

米国が意図的に仕掛けたかどうかは判りませんが、イスラム教徒がのさばり、経済が停滞した欧州からは、既に米国への移民が出始めています。これに突発的気候変動が重なれば、欧州の白人達は大挙して母国を捨て去る事でしょう。
by masa_the_man | 2013-08-24 22:56 | 日記 | Comments(1)