2013年 08月 21日
「コネ」か「汚職」か?アメリカの金融会社の微妙な事情 |
今日の横浜北部は朝から曇りがちでした。午後には雨が降ったみたいですが、相変わらず気温は下がってくれません。
さて、非常に興味深い記事がありましたのでその要約を。著者はCNBCで番組を持っている金融系の若いコラムニストです。私も何度かテレビで見たことあります。
内容は、アメリカの金融機関でよく行われている「他社・他国の有力者や高官の娘や息子を雇うのは汚職かどうか」という興味深いもの。
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コネで雇うのはスキャンダルか?
BY アンドリュー・ロス・ソーキン
●先週末のことだが、NYタイムズはアメリカ合衆国証券取引委員会(SEC)がJPモルガンチェイスが中国でのビジネスを円滑に進めるために中国政府高官の子供を雇ったことについて捜査を開始したと報じている。
●この捜査開始の報道は、ウォール街に衝撃を与えた。もしJPモルガンが中国のエリートの子供たちを雇ったことによって「連邦海外腐敗行為防止法」に違反したということになれば、アメリカの金融機関全般がトラブルに陥ることになるからだ。
●アメリカのほぼすべての金融機関は、中国で最もよいコネを持った人物を雇おうとしており、しかもそのような人物は「太子党」に属している人々であることが多い。「連邦海外腐敗行為防止法」では、会社がビジネスの見返りとして意思決定者に個人的な利益を与えることは禁止されている。
●ところが力を持った会社の上層部や政治家の子どもたちを雇うことは、アメリカの銀行たちが中国でビジネスを行う際の特殊なルールであるというわけではない。これはアメリカでも長年行われてきた慣習だからだ。
●ベア・スターンズ社の上級トレーダーであり、現在はアデルフィ大学で教えているマイケル・ドリスコール氏は「これは何千年も行われてきたことですよ」と述べている。彼は「私にも二人の息子がおりますが、一人は大手金融機関でいまインターンをやってます。これは常に行われているものなんですよ」と述べている。
●いくつかの会社では「身内主義」にたいして明確なポリシーを定めている。そしてこれにはそれなりの理由がある。会社の関係づくりのために家族の一員を雇うというのは常に会社の利益になるわけではないからだ。
●ところが金融機関というのは多かれ少なかれ一定のコネを持った人々を雇うものであり、それは家族やビジネス関係を通じて行われるのだ。そしてその考えの背後にあるのは「新しく雇った子がドアを開けてくれるかもしれない」という考えだとドリスコール氏は言う。
●ところが私がこの件に関してインタビューを行った多くの人々と同じように、ドリスコール氏はここに法的な問題があるとは見ていなかった。「子供を雇ったからといって必ずしもコネクションができるわけではないからです。よくても”仲間に入れてもらえる”ぐらいでしょうか」とは彼の弁。
●彼はさらに「チキンスープみたいなものですよ。害はありません」と付け加えた。
●しかし「リンクトイン」で調べてみると、会社のトップの子供たちが、親が関係を持ちたい他の会社で働いていることはすぐにわかる。
●ジェフ・キンドラ―がファイザー社のトップだったときに、彼の息子のジョシュアはモルガン・スタンレーで働いている。広告大手のWPPのマーチン・ソレル代表の三人の息子はゴールドマン・サックスでそれぞれ何度か働いており、もちろんこの会社はWPPとビジネスを行っている。
●ところがこれはキンドラ―氏やソレル氏たちの子どもたちがその会社の職に不適合であったということになるのだろうか?それは全く違う。彼らは全員が聡明で高い教育を受けていたのだ。ソレル氏の息子の一人は独立してゴールドマン・サックスのパートナーになっているほど。
●ではこれは「汚職」になるのだろうか?それにはちょっと無理がある。
●ブラックストーン社の代表であったスティーブン・シュワルツマン氏の息子のテディーは、ゴールドマン・サックスでインターンをしていたが、その後にシティーグループでアナリストをしている。彼はその後にスカデン・アープス・スレート・メガー&フロム社の弁護士になっており、そこから映画業界に進出して成功を収めているのだ。
●ではゴールドマン・サックス、スカデン、シティーグループが彼を雇ったのは彼の父親のせいだろうか?彼らはブラックストーン社とビジネスをすることを望んでいたのだろうか。おそらくその可能性はある。
●ところがそれよりも可能性が高いのは、彼らがその育ちの中で身につけた、素晴らしいコネを持っている考えたからだろう。彼のレジュメはたしかに輝かしいもので、学士はペンシルバニア大学、デユーク大学の法学院を優等で卒業している。
●同じことはチェルシー・クリントンにも言える。彼女は大学を出たあとにマッキンゼー・アンド・カンパニー社で働いており、後にクリントンの選挙資金を集めたマーク・ラズリー氏が創設したヘッジファンドで働いている。
●ところがスタンフォード大学を出たチェルシーは、彼女を知る人物すべてが賞賛しているように、相当頭が良いらしく、同じ年に卒業した生徒とたちとまったく遜色のない能力を持っているのだ。
●では親が誰かというのは重要なのだろうか?もちろん重要ではあるだろう。彼女はその後にバリー・ディラー氏おインターネット会社であるIACグループで働いており、NBCニュースにもゲストレポーターとして出演している。そしてこれも批判の的になっている。
●そしてロバート・ルービンの息子のジェイミーだ。彼は連邦通信委員会(FCC)や富裕層向けの銀行であるアレン・アンド・カンパニーで働いており、しかもこれは彼の父がクリントン政権で財務省長官をやっていた時なのだ。
●私はジェイミーを長年知っているが、彼も家族の名前がなくても同じような職につけたほど能力のある人間だ。いくつかのケースでは、むしろ親の名に恥じないように、他の人よりも能力をつけるために努力したと告白する子供もいる。
●ワシントンではロビー活動と汚職の間はグレーだ。2008年までジョー・バイデン上院議員(当時)の息子であるハンター・バイデンは、連邦議会で定期的にロビー活動を行っていた。
●ワシントン・ポスト紙は昨年の報道で「2007年から、現役の議員の親族の56人が、議会に影響を与えるために雇われている」と報じている。
●連邦議会はロビー活動を制限する法案を通過させているが、それでも議会には議員の息子や娘たちがロビー活動を行う余地は十分にあるのだ。
●もちろんこれはあまりよい印象を持たれないことはたしかだ。ドリスコール氏も「これはあまり見栄えのいいもんじゃないですよね」と言っており、たしかに見苦しいものだ。
●ところが実際のところはこれが世界の現実である。ビジネスにおいては「より良いコネ」を持っている人物を雇うのを禁止するようなことは無理なのだ。
●ただし、わざわざわ見返りを得るためによいコネを持つ人物を雇うとなると話は別問題だ。そして太子党をやとって、彼らが表面上は仕事をしているように見せかけて、実際はビーチで遊んでいるだけというなら、これも問題だろう。これはまさに「汚職」に見えるからだ。
●ところがエリートたちの子供の多くはかなり高い教育を受けており、すごいネットワークの中で生きてきたのだ。よってビジネス側がこれを活用せず、しかもそれに見向きもしないというのは土台無理なことなのだ。
●これは弁護のしようがないかもしれないが、それでも世界の現実なのだ。「重要なのは、君が何を知っているかではなくて、誰を知っているかだ」
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そういえば私の先生も似たようなことを申しておりました。
「イギリス人で、しかもカナダで教えていたのに、なんでアメリカ政府のアドバイザーとして働くことができたんですか?」「そりゃコネだよ。アメリカはとにかくコネ、コネ、コネだ」
アメリカは日本以上にコネ社会、ということですね。
ただし上の記事は一つの真実を述べております。エリートの子たちというのは、一部の例外を除いて、やっぱり高い教育を受けているわけですから、基本的に優秀なのが多いですね。
さて、非常に興味深い記事がありましたのでその要約を。著者はCNBCで番組を持っている金融系の若いコラムニストです。私も何度かテレビで見たことあります。
内容は、アメリカの金融機関でよく行われている「他社・他国の有力者や高官の娘や息子を雇うのは汚職かどうか」という興味深いもの。
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コネで雇うのはスキャンダルか?
BY アンドリュー・ロス・ソーキン
●先週末のことだが、NYタイムズはアメリカ合衆国証券取引委員会(SEC)がJPモルガンチェイスが中国でのビジネスを円滑に進めるために中国政府高官の子供を雇ったことについて捜査を開始したと報じている。
●この捜査開始の報道は、ウォール街に衝撃を与えた。もしJPモルガンが中国のエリートの子供たちを雇ったことによって「連邦海外腐敗行為防止法」に違反したということになれば、アメリカの金融機関全般がトラブルに陥ることになるからだ。
●アメリカのほぼすべての金融機関は、中国で最もよいコネを持った人物を雇おうとしており、しかもそのような人物は「太子党」に属している人々であることが多い。「連邦海外腐敗行為防止法」では、会社がビジネスの見返りとして意思決定者に個人的な利益を与えることは禁止されている。
●ところが力を持った会社の上層部や政治家の子どもたちを雇うことは、アメリカの銀行たちが中国でビジネスを行う際の特殊なルールであるというわけではない。これはアメリカでも長年行われてきた慣習だからだ。
●ベア・スターンズ社の上級トレーダーであり、現在はアデルフィ大学で教えているマイケル・ドリスコール氏は「これは何千年も行われてきたことですよ」と述べている。彼は「私にも二人の息子がおりますが、一人は大手金融機関でいまインターンをやってます。これは常に行われているものなんですよ」と述べている。
●いくつかの会社では「身内主義」にたいして明確なポリシーを定めている。そしてこれにはそれなりの理由がある。会社の関係づくりのために家族の一員を雇うというのは常に会社の利益になるわけではないからだ。
●ところが金融機関というのは多かれ少なかれ一定のコネを持った人々を雇うものであり、それは家族やビジネス関係を通じて行われるのだ。そしてその考えの背後にあるのは「新しく雇った子がドアを開けてくれるかもしれない」という考えだとドリスコール氏は言う。
●ところが私がこの件に関してインタビューを行った多くの人々と同じように、ドリスコール氏はここに法的な問題があるとは見ていなかった。「子供を雇ったからといって必ずしもコネクションができるわけではないからです。よくても”仲間に入れてもらえる”ぐらいでしょうか」とは彼の弁。
●彼はさらに「チキンスープみたいなものですよ。害はありません」と付け加えた。
●しかし「リンクトイン」で調べてみると、会社のトップの子供たちが、親が関係を持ちたい他の会社で働いていることはすぐにわかる。
●ジェフ・キンドラ―がファイザー社のトップだったときに、彼の息子のジョシュアはモルガン・スタンレーで働いている。広告大手のWPPのマーチン・ソレル代表の三人の息子はゴールドマン・サックスでそれぞれ何度か働いており、もちろんこの会社はWPPとビジネスを行っている。
●ところがこれはキンドラ―氏やソレル氏たちの子どもたちがその会社の職に不適合であったということになるのだろうか?それは全く違う。彼らは全員が聡明で高い教育を受けていたのだ。ソレル氏の息子の一人は独立してゴールドマン・サックスのパートナーになっているほど。
●ではこれは「汚職」になるのだろうか?それにはちょっと無理がある。
●ブラックストーン社の代表であったスティーブン・シュワルツマン氏の息子のテディーは、ゴールドマン・サックスでインターンをしていたが、その後にシティーグループでアナリストをしている。彼はその後にスカデン・アープス・スレート・メガー&フロム社の弁護士になっており、そこから映画業界に進出して成功を収めているのだ。
●ではゴールドマン・サックス、スカデン、シティーグループが彼を雇ったのは彼の父親のせいだろうか?彼らはブラックストーン社とビジネスをすることを望んでいたのだろうか。おそらくその可能性はある。
●ところがそれよりも可能性が高いのは、彼らがその育ちの中で身につけた、素晴らしいコネを持っている考えたからだろう。彼のレジュメはたしかに輝かしいもので、学士はペンシルバニア大学、デユーク大学の法学院を優等で卒業している。
●同じことはチェルシー・クリントンにも言える。彼女は大学を出たあとにマッキンゼー・アンド・カンパニー社で働いており、後にクリントンの選挙資金を集めたマーク・ラズリー氏が創設したヘッジファンドで働いている。
●ところがスタンフォード大学を出たチェルシーは、彼女を知る人物すべてが賞賛しているように、相当頭が良いらしく、同じ年に卒業した生徒とたちとまったく遜色のない能力を持っているのだ。
●では親が誰かというのは重要なのだろうか?もちろん重要ではあるだろう。彼女はその後にバリー・ディラー氏おインターネット会社であるIACグループで働いており、NBCニュースにもゲストレポーターとして出演している。そしてこれも批判の的になっている。
●そしてロバート・ルービンの息子のジェイミーだ。彼は連邦通信委員会(FCC)や富裕層向けの銀行であるアレン・アンド・カンパニーで働いており、しかもこれは彼の父がクリントン政権で財務省長官をやっていた時なのだ。
●私はジェイミーを長年知っているが、彼も家族の名前がなくても同じような職につけたほど能力のある人間だ。いくつかのケースでは、むしろ親の名に恥じないように、他の人よりも能力をつけるために努力したと告白する子供もいる。
●ワシントンではロビー活動と汚職の間はグレーだ。2008年までジョー・バイデン上院議員(当時)の息子であるハンター・バイデンは、連邦議会で定期的にロビー活動を行っていた。
●ワシントン・ポスト紙は昨年の報道で「2007年から、現役の議員の親族の56人が、議会に影響を与えるために雇われている」と報じている。
●連邦議会はロビー活動を制限する法案を通過させているが、それでも議会には議員の息子や娘たちがロビー活動を行う余地は十分にあるのだ。
●もちろんこれはあまりよい印象を持たれないことはたしかだ。ドリスコール氏も「これはあまり見栄えのいいもんじゃないですよね」と言っており、たしかに見苦しいものだ。
●ところが実際のところはこれが世界の現実である。ビジネスにおいては「より良いコネ」を持っている人物を雇うのを禁止するようなことは無理なのだ。
●ただし、わざわざわ見返りを得るためによいコネを持つ人物を雇うとなると話は別問題だ。そして太子党をやとって、彼らが表面上は仕事をしているように見せかけて、実際はビーチで遊んでいるだけというなら、これも問題だろう。これはまさに「汚職」に見えるからだ。
●ところがエリートたちの子供の多くはかなり高い教育を受けており、すごいネットワークの中で生きてきたのだ。よってビジネス側がこれを活用せず、しかもそれに見向きもしないというのは土台無理なことなのだ。
●これは弁護のしようがないかもしれないが、それでも世界の現実なのだ。「重要なのは、君が何を知っているかではなくて、誰を知っているかだ」
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そういえば私の先生も似たようなことを申しておりました。
「イギリス人で、しかもカナダで教えていたのに、なんでアメリカ政府のアドバイザーとして働くことができたんですか?」「そりゃコネだよ。アメリカはとにかくコネ、コネ、コネだ」
アメリカは日本以上にコネ社会、ということですね。
ただし上の記事は一つの真実を述べております。エリートの子たちというのは、一部の例外を除いて、やっぱり高い教育を受けているわけですから、基本的に優秀なのが多いですね。

by masa_the_man
| 2013-08-21 22:28
| 日記