戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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本と電子書籍の違い

今日の横浜北部はまたしてもよく晴れました。暑さは続いております。

さて、久しぶりに軽い読み物を。

といっても、相変わらず「テクノロジー」に関するものなんですが。

===

本は読んでとっておくもの
Byヴァーリン・クリンケンボーグ

●私は一冊の本(エド・マクベインのもの)を自分のiPadで読み終え、これををクラウドに預けたところだ。

●これによって、この本は私の「デバイス」から消え去ったわけであり、同時に私の意識からも消え去ってしまったわけだ。これは非常に奇妙な感覚だ。

●現物の「本」を読むときには、私はその本の文章や本そのもの――その形やジャケット、その重さと印刷の体裁など――を覚えている。

●ところが電子書籍を読んでしまうと、覚えているのは文章だけだ。

●本の「本らしさ」というのは消滅してしまうし、むしろそれはそもそもはじめから存在しないものと言えるだろう。

●アマゾンが私に教えてくれるのは、私が注文しようとしているその本をすでに読んだことがあるということである。ところが実際の本屋では、私はすでに私のiPadで読んだことのある本を「発見」することが多い。

●このようなことから、私は自分の本棚にある本についていままでとは違った見方をするようになった。本棚の本というのはただそこに存在するだけであり、単に「私が読みおわったもの」の集合にしかすぎなかったのだ。

●ところが私の電子書籍から目を移してみると、物理的に存在する本というのは別の目的を持っていることに気づいた。それは、「常に私にたいして読んだものを教えてくれるもの」となったのだ。

●彼らが私に訴えかけているのは、「俺たちはまだここにいるぞ!」ということであり、「俺たちのこと覚えてる??」ということなのだ。

●電子書籍はこのようなことは全く訴えかけてこないし、ソフト上の、クラウドにしまいこまれており、私のiPadの電源を切ると、文字通り「消滅」してしまうのだ。

●これはほんの微妙な違いなのかもしれないが、それでも私にとっては大きな違いだ。読むという行為は実質的にはかないものなのだが、実際の本を読むとそのようには感じない。なぜなら読んだ後も「読んだ行為の証」として物理的にその名残を残してくれるからだ。

●つまりこの想像的な行為が物理的に残ることによって、完全に実在的なものとなるのだ。ところが電子書籍を読む行為というのは、それ自体を目立たないものにしてしまうのだ。

●ここ数年で、私は自分のiPadでおよそ800冊を読んできた。それらは私自身を変えてくれたし、世界についての私の理解を変えて、注意を奪ったと同時に楽しませてもくれた。

●ところが私自身はまだ電子書籍を読むという行為そのものについて悩んでおり、それに完全に慣れようとしていない自分がいるのだ。

●ところが読者というのは読むという行為について考えてきたし、それこそそれはグーテンベルグが印刷機を開発した時から長いこと続いているのだ。

●白い紙の黒い文字、もしくはスクリーン上のドットというのは、われわれの意識を突き動かす何かを大きなものを持っている。しかしそれでもわれわれはそれを「読んだ」という証拠を必要としている。

●そしてこの証拠は、本棚にある本が相変わらず提供しつづけているものなのだ。

===

ちょっと違うかもしれませんが、積読(つんどく)にも効果あり、ということですな。

それにしてもテクノロジーの進化というのは人間のものごとの「体験」まで変えてしまう部分があるわけで。


Commented by waterloo at 2013-08-20 22:16 x
電子書籍と紙の本のは、身体的な情報量に差があるのだとおもいます。
記事中にもありますが、紙の本は本棚から取り出すという行為しまうという行為、本の大きさ、厚さ、材質、ページの開き具合などが情報とセットで記憶されます。また本棚に並んでいれば意識していない時でも目に入ってきます。
紙の本の方が電子書籍より、そこで得た情報を思い出すキッカケが多いという事が、紙の本の記憶が強く残る理由ではないでしょうか
Commented by だむ at 2013-08-20 22:46 x
電子書籍は「貸本」に近い存在なんだと思うよ。

民法に定められているとおり「所有権」というのは、「使用する権利」「誰かに貸す権利」「誰かに売る権利」の三つから成り立っているけど、電子書籍には「使用する権利」だけがあって「誰かに貸す権利」も「誰かに売る権利」も存在しない。

つまり、電子技術を抜いて考えると電子書籍てのは「一定額を払って当面の間(業者がサービスを続けている間だけ)書籍を借用する事が出来るが、貸与も売却も出来ない権利」を借りる契約という事。
Commented by ドイツ暮らし at 2013-08-21 02:38 x
この記事やコメントになるほどなるほどと頷きつつ、いつかは奥山先生にお伝えしたかった話を。

5月に以下の本をhontoの通販で買いました。
・地政学
・武器捨て本
・悪の論理
・大国政治の悲劇
・米国世界戦略の核心
・戦略論の名著

これらを船便でドイツに送ったら、まさかのMOL Comfort号の海難事故でアラビア海の藻屑と消えました。

武器捨て本だけは急いで読みたかったので航空便で難を逃れましたが、他はもう一度買い直しです。
事故の直後は電子書籍があったらなぁ、と少し思いましたが、この記事を見てやっぱりリアル書籍で買い直そうと心にきめました。

駄文失礼しました。
Commented by masa_the_man at 2013-08-21 16:54
waterloo さんへ

>電子書籍と紙の本のは、身体的な情報量に差がある

たしかに・・・・

>電子書籍より、そこで得た情報を思い出すキッカケが多いという事が、紙の本の記憶が強く残る理由

これを原文を書いた著者に教えてやりたいですね。貴重なコメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2013-08-21 16:56
だむ さんへ

>電子書籍には「使用する権利」だけがあって「誰かに貸す権利」も「誰かに売る権利」も存在しない。

なるほど。

>当面の間(業者がサービスを続けている間だけ)書籍を借用する事が出来るが、貸与も売却も出来ない権利」を借りる契約という事。

つまり、レンタルであるという・・・・それだったら図書館で本を借りたほうが物理的な情報(本の体裁など)が自分の記憶に残る意味でまだマシかもしれませんね。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2013-08-21 16:57
ドイツ暮らしさんへ

>船便でドイツに送ったら、まさかのMOL Comfort号の海難事故でアラビア海の藻屑と消えました。

な、なんと!

>この記事を見てやっぱりリアル書籍で買い直そうと心にきめました。

うわー、これはありがたいことですね。わざわざ本当にすみませんでした。コメントありがとうございました
Commented by prof at 2013-08-21 20:47 x
学生時代は、バイトの金が入ると早稲田や神保町に直行しましたが、当時買った本の多くは今でも書斎にあり、それらを見ると、当時の記憶がよみがえります。

ここ数年はKindleも併用していますが、自分の人生や記憶と重ね合わせることはできないですね。本棚を眺めたり紙のページを指でめくるときに経験する記憶のフラッシュバックは、デバイスでは経験できません。

あとは、いらない本は定期的に処分するか、佐藤優氏のように書庫専用の別荘を持つかのいずれかだと思いますが、これはこれで一生悩みそうな気がする。一番の問題は、本棚は最後は自作するしかないという結論に至りつつも、いまだにできていない自分のふがいなさである!(笑)。
Commented by masa_the_man at 2013-08-22 11:33
prof さんへ

>それらを見ると、当時の記憶がよみがえります。

これは私も同じですね。

>本棚を眺めたり紙のページを指でめくるときに経験する記憶のフラッシュバックは、デバイスでは経験できません。

情報量が多いんでしょうな。

>一番の問題は、本棚は最後は自作するしかないという結論

自分専用の図書館を大きな自宅に!いつかは実現してみたいですね・・・コメントありがとうございました
by masa_the_man | 2013-08-20 19:35 | 日記 | Comments(8)