戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28

「バイトがネットにイタズラ画像」事件と戦略論

今日の横浜北部は朝からけっこう晴れていたのですが、先ほどから雷が鳴って夕立中。

さて、最近頻発している、いわゆる「バイトの店員がネットにイタズラ画像を載っけて処分される」問題ですが、実はこれがアメリカの軍事戦略に関する議論で説明できることがわかったので少し述べてみます。

おそらく全国的な現象かと思いますが、最近バイトの子が、働いているコンビニのアイスクリーム用の冷凍庫に寝転んだところを写真にとってネットに掲載したり、ラーメン屋の冷蔵庫内でソーセージくわえている写真を公開して問題になったりと、実にくだらない事件が連鎖的に起こっております。

これについては色々な解説も出てきておりますので、私はあえて口をはさむつもりはなかったのですが、たまたま読み返していた90年代の戦略論の議論の中で、すでにこれと色濃く関連している話で説明できると思ったので、あえてここでご紹介したいと思ったわけです

まず重要なのは、アメリカでは90年代からRMA、いわゆる「軍事における革命」(Revolution in Military Affairs)と呼ばれる大きな変化が起こっておりました。

これは「情報通信技術の劇的な発展が、軍事組織にとって戦略面でどのような影響を与えるのか」というテーマの一連の議論の名前なのですが、この中で私が注目したいのは、ダグラス・マグレガーという元米陸軍大佐が書いて戦略論の業界では話題になった、ランドパワーの理論書である『重装歩兵方陣の粉砕』(Breaking the Phalanx)という97年の本です(ちなみにこの本はすでに人民解放軍が中国語に翻訳済み)。

b0015356_18555184.jpg


この本の内容を簡単に言いますと、情報化した新しい時代の米陸軍は、それに見合ったドクトリンや組織を構築しなければならないというものでして、マグレガー自身は軍の改革を徹底して主張しております。

これが最近の若者のアホな行動とどう結びつくのか、ちょっと疑問に感じるみなさんもいらっしゃるとは思いますが、私が注目しているのは、マグレガーが「情報化が進むと、戦略の階層がフラット化する」という趣旨のことを述べている点です。一体これはどういう意味?

マグレガーによれば、将来の「情報化時代の戦い」(information age warfare)では、戦争における戦術、作戦、戦略のレベルの分類が全く意味をなさなくなってくるわけで、たとえば戦術レベルの砲撃や部隊の移動などが、そっくりそのまま戦略レベルに直結して影響を与えるということです(上述書の第三章を参照)。

たとえば、精密誘導ミサイルの精度がさらに正確になってくると、たった一発で敵の首都やアジトの破壊ができるようになる、というわけですから細々とした戦闘は不必要ということになります

もちろん「戦略爆撃」のような「首切り戦略」の効果というのはいまだに疑問視されているわけですが、少なくともこのようなマグレガーの議論から暗示されているのは、テクノロジーの劇的な進化によって、一兵卒の(いままでは戦術レベルであった)動きが、思いがけずに戦略(もしくはそれ以上のはるか上の)レベルまで影響を与えることになってしまう、という懸念です。

そしてこの懸念は、まさにわれわれの日常やビジネスの現場でも十分現実化しているんじゃないの?というのが重要なところかと。

もちろんビジネスは「戦争」とは違いますが、ある程度は似たような分析は可能です。そしてそれを最近の一連の事件に当てはめて考えるとどうなるのかというと、

「会社組織でいえば戦術レベルの一兵卒であった単なるバイトが、携帯のカメラとネットという最新のテクノロジーを手に入れたことによって、会社の方針(ポリシー)やイメージ(世界観)を損なうところまでダメージを与えることができるようになった」

ということなのです。

これはつまり「戦略の階層のフラット化」ということですが、マグレガー自身も「階層の平坦化」(flattening the hierarchy)と申しております。

ではこのような困った問題への対処の仕方はあるのでしょうか

実はもうひとりの米陸軍の人間が、すでにこの問題について詳しく論じているわけですが、今日は時間がないので続きはまた明日。


by masa_the_man | 2013-08-12 18:49 | 日記 | Comments(0)