戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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日本人は孫子をわざと誤解してきたのか?

今日の横浜北部は梅雨が復活したようで、蒸し暑くて曇り時々雨でした。

さて、本日クラウゼヴィッツ学会でランドパワーの理論について発表してまいりましたが、その時に色々と聞いた話などを少し。

すでに前のエントリーでも書きましたが、ランドパワーの理論というのはマハンがシーパワーの理論を言い始めるまでは戦略理論そのもの、つまり「元祖戦略論」だったわけですが、その説明の際に当然ながら古典としてクラウゼヴィッツと孫子を引き合いに出しました。

そしてこれを説明する際に、孫子の兵法における中心的なメッセージである「兵は詭道なり」の部分に触れたわけですが、その時に会場から

「日本の過去の孫子の翻訳(現代語訳)では、なぜかこの部分をオブラートに包んで強調していない」

という指摘がありました。

言われれてみればまさにその通りで、私も前回のボイドの発表の時に、このアメリカの元戦闘機乗りが孫子の本を読んで、

その真髄は、相手を徹底的に騙すことだ

と気づいたことについてちょっと意外な感想を持ったことを思い出しました。たしかに日本の解説本では、孫子についてここまで「相手を騙すこと」を前面に押し出して解説しているものはほとんどありません。

ところが私は一昨日に刊行したルトワック本を訳している時にも、この中国の「騙し好き」なところに警告している文面を何度も見ることになりまして、たしかに日本人は兵法の騙しを回避しているなぁと実感しておりました。

結論として何を言いたいかというと、日本は孫子の兵法をそれほど真面目に実践してこなかったから良かったなぁということです。

実際のところ、孫子の「騙し」が横行するような社会を、日本の中でつくってしまったら悲惨ですからね。

ところが逆にそれで問題なのは、日本人が「騙し」を真剣に実践してこなかったからこそ、今度はそれを心の底から実践している相手にたいして注意しなければならないということです。

自分たち同士で「騙し」を使っていなくても、危険なビジネスである国際関係では「騙し」が横行しているわけですから。

本当の国際親善では、このような相手の汚い「騙し」の部分までしっかりと理解してあげることがきわめて大事なのではないでしょうか?


Commented by takiguchi at 2013-07-25 01:52 x
 面白いテーマなので少しだけ思った事を書き込ませて頂きます。

「騙す」と言うのは、人々(相手、第三者)の認識を操作する、という意味ですよね。そうだとすると、「騙さない」、つまり誠実であり続けるという事も、他人の自分に対する認識を操作する行為の一つなわけで、広い意味では「騙している」と言えるのではないでしょうか。
 ただし、「自分が誠実であれば相手も誠実であってくれる」とか、「自分が誠実であれば相手は自分は誠実であると思ってくれる」等と思ってひとりよがりに誠実であろうとすると、相手や第三者の認識と自分の認識のズレで苦しむ事になるかもしれませんが。
 重要なのは、「誠実でいる=騙さない」にしても、何のためにそういう態度を取るのか、どうやって相手や第三者に自分は誠実で騙さないと認識してもらうか、という点を確り考えて、効果的に「誠実で在り」、その相手や第三者の認識を利用していく事ではないかと思います。
 それさえできていれば、「騙すな、騙されるな」の態度は決して、積極的に相手を騙す態度に劣るものではないかと(私自身の弁によれば、それ自体も相手を騙している事になりますが……)。
Commented by jujuju at 2013-07-25 13:00 x
野球の強豪校などは相手の嫌がることを徹底してやってきますよね。
これと騙すは似ていて用は相手の嫌がることをしていけばいいんだと思います。

ただいくら嫌がることをしてきても(騙してきても)地力が強ければ正攻法で押していけば普通に勝てるんですけどねw
Commented by akashi hyogo at 2013-07-25 19:16 x
「戦場の精神史 武士道という幻影」(NHK books, 佐伯真一)という本に,
「兵は詭道なり」の解釈において、林羅山から山鹿素行へと、虚偽肯定の色彩がしだいに希薄になっていったように、謀略主義の発想は、否定されたわけではないが、太平の世の公的な言説からはしだいに後退していった。
とあり、それが現在に至るんではないでしょうか。
Commented by 中山太郎 at 2013-07-26 10:16 x
シンプルに考えて見ましょう。米の「誠実」を標榜する態度は、takiguchi様が述べるように広い意味で「騙している」としても、それと、幹部の子弟が何十人も強姦しても、本人や夫人が人殺しをしても、逃げおおせられる体制の国とどちらを選択するかとしたら、そりゃーー前者でしょう。(薄熙来夫人は、相手が英国人であったため、かくしおおせなかったのです。)
Commented by とおる at 2013-07-31 19:55 x
国を統治する観点から、「騙し」を徹底的にすると、
・中国のようになる。(逆は日本のようになる。)
・遵法意識が希薄になる。
・契約も信用できない。
・人間の相互不信な社会となる。

日本人の感性に合わないのでしょう。
Commented by masa_the_man at 2013-08-06 17:39
takiguchi さんへ

>他人の自分に対する認識を操作する行為の一つなわけで、広い意味では「騙している」と言えるのではないでしょうか。

それだったら素直に「操作する」でよいのでは。

>ひとりよがりに誠実であろうとすると、相手や第三者の認識と自分の認識のズレで苦しむ事になるかも

ここですね。

>その相手や第三者の認識を利用していく事ではないかと思います。
 
基本はコントロールにあり、ですな。ただし独善的に正直であるというのも相手にとっては迷惑となるパターンがあるので・・・難しいものです。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2013-08-06 17:42
jujuju at さんへ

>相手の嫌がることをしていけばいいんだと思います。

いやいや、それだとけっこう「正攻法」じゃないですか。孫子だと「奇」も重要ですから。

>ただいくら嫌がることをしてきても(騙してきても)地力が強ければ正攻法で押していけば普通に勝てるんですけどね

ここなんです。レッドスキンズがバッファローにスーパーボウルで勝ったときがこれで、相手のやってくるプレーがわかっているのに止められないというものです。こっちの力が圧倒的であればわざわざ奇襲を使う必要もないと。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2013-08-06 17:43
akashi hyogo さんへ

>太平の世の公的な言説からはしだいに後退していった、とあり、それが現在に至るんではないでしょうか。

翻訳したのが儒学者だっというのも一因ではないかと先日ある場所で聞きました。あるかもしれないですなぁ。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2013-08-06 17:44
中山太郎さんへ

>そりゃーー前者でしょう

たしかに。「民度」という言葉が・・・

>薄熙来夫人は、相手が英国人であったため、かくしおおせなかった

かもしれませんな。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2013-08-06 17:45
とおる さんへ

>「騙し」を徹底的にすると、中国のようになる。(逆は日本のようになる

わはは、たしかに。

>人間の相互不信な社会となる。

まあここですね。アメリカの場合はこれを訴訟と弁護士で穴埋めしている部分がありますが・・・コメントありがとうございました。
by masa_the_man | 2013-07-24 23:48 | 日記 | Comments(10)