戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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経営戦略論の講義を聞いた感想

昨日の横浜北部はしっかりと晴れたわりにはけっこう涼しくて気持ちよかったです。真夏といっても暑さは小休止。

さて、昨日の午後に戦略研究学会の定例会で司会をやってきました。その時に聞いた講義の感想を。

今回の定例会のコンセプトとしては、経営戦略系の先生が軍事・安全保障系の人々に自分たちの専門分野の「概論」を教えるということで、二人の先生に「戦略論」と「組織論」の二つの大まかな流れや論点などをそれぞれ一時間ずつレクチャーしていただきました。

本当に盛りだくさんの内容でして、司会をやっていた私自身もまだ消化しきれていない部分があるのですが、戦略論そのものというよりも、むしろ国際関係論との共通項をたくさん発見できたことが収穫でした。

たとえば出てきているテーマも似ている点がけっこうありまして、そのいくつかを箇条書きしますと、

―一般理論というか、合理性を無理やりすべてのタイプに当てはめるところからはじまっている。

―大きなアクターの動きから研究が始まっている点。国際関係論では大国、経営論では大企業。

―コンサルタント(アドバイザー)が共に議論形成に大きな役割を果たしている部分がある。

―合理性で説明できなくなってきた時に「文化」や「複雑な人間」というファクターを強調するようになってきた。

―アメリカの強烈な単純化への欲望。

―ポーターvsミンツバーグは、まるでネオリアリストと戦略文化派の議論そのもの。

―コンティンジェンシーについての考察。不確実性の強調。

―経営戦略論の権威と言われる人でもクラウゼヴィッツや孫子の古典をほとんど理解できていない。その逆も同じ。

―段々と価値観の話(戦略の階層の上位)に話が移ってきている点。

―計画的戦略vs創発的戦略(ミンツバーグ)は、そのまま順次戦略vs累積戦略

―ともに中国に対してどう対処していいのかわからない。

ーともにNPOやソーシャルというアクターたちにたいして理論化できていない。

―ともに経済学にたいして冷ややかな目で見ている。

ということです。

非常に気になったのが、以前は日本人同士で共通の暗黙知というか、わざわざ言語化しないでもわかっていた「あうんの呼吸」のようなものが若い世代で急速に失われつつあり、何をするにも分厚いマニュアルが必要になってきていると講師の方が指摘していたことでしょうか。

これは日本人の共通ソフトが劣化してきたという風にも言えるのかもしれませんが、見方をかえれば日本人がより世界水準の「普通の人」になってきたとも。

それと、やはり気になったのは経営論の先生たちの使うケースが、非常に短期間に陳腐化するスピードが段々と速くなってきているということでした。つまり論文で使った数ヶ月前の成功例が、論文を出す頃には経営破綻しているという。

たとえばここ数年間「痛くない注射針」で優良企業として様々な媒体で持ち上げられていた岡野工業が、一億円の所得隠しを行なっていたことが最近ニュースになりましたが、このように成功例として持ち上げていたら実際はヤバイことやっていたという例は論文を書く側として脅威だとか。

とにかく私の中で消化するのにやや時間はかかりそうですが、それでも別の知の大系を知ったという意味でとても刺激を受けました。

なんというか、結局のところは「人間」という複雑性をめぐる問題でありまして、問題意識はけっこう近いのかなぁとあらためて感じた次第です。


by masa_the_man | 2013-07-21 00:10 | 日記 | Comments(0)