2013年 06月 26日
ニカラグア運河の地政学:大計画かサギか |
今日の横浜北部は雨がよく降りました。梅雨に戻りましたね。
さて、ニカラグア運河については日本でもささやかに報道されておりますが、それについて面白い記事がありましたので要約を。
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ニカラグア運河は大プロジェクト、それとも大ペテン?
by アンドレス・オッペンハイマー
●ニカラグア政府が中国の企業と結んだ400億ドル(ほぼ4兆円)の運河建設の契約は、パナマ運河と競うラテンアメリカでここ百年で最も重要な建設計画になるか、それともこの地域の歴史で最大の詐欺になるかのどちらかだ。
●そしてこれが後者になると考えられる理由は多い。
●ところが最大の問題はなぜ評判のよいアメリカのコンサルタント会社(マッキンゼー、マクラーティーアソシエイツ、そして反汚職で有名なロナルド・マクリーン・アバロアを含む)がこれほどまでに怪しげなプロジェクトに参加しているのかという点だ。
●ニカラグアのポピュリスト的な大統領であるダニエル・オルテガは、今月はじめに41歳の中国のビジネスマンであるワン・ジンと契約を結んでおり、これは非公開入札によって行われ、しかもワンの会社は運河を建設した経験があるのかどうかさえ知られていないのだ。
●ワンはオルテガの27歳の息子であるラウレアノ・オルテガのお目付役としか知られておらず、これによってオルテガ家もこの取引にからんでいると疑われている。
●ニカラグアの報道によれば、ラウレアノはニカラグア政府の投資推進部門である「プロ・ニカラグア」で働いているという。
●この合意はオルテガがコントロールしているニカラグア議会をたった48時間の議論で通過しており、ワンのもつ「香港ニカラグア運河開発投資会社」(HKND)に50年間の運河建設許可を与えており、この許可はさらにオプションとして50年以上伸ばせるという。
●論者たちはこれはニカラグアの主権の記念碑的な明け渡しであり、ワンはほぼニカラグアという国家そのものを獲得したも同然だと言われている。
●ニカラグアの「コンフィデンシャル」誌の代表であるカルロス・フェルナンド・チャモロは「近年最大のスキャンダルです」と述べている。「パナマ運河の拡大の時は公共入札が行われ、それが国民投票にもかけられましたが、ここでは政府が勝手に勝者を選んでたった一日半で法律を通してしまったのです」
●駐北京のラテンアメリカ諸国の大使たちが私に教えてくれたところによれば、中国政府はこのプロジェクトにまったく関与していないということであり、中国の政府高官はなるべくそれから距離を置こうとしているという。
●それにたいしてアメリカ側の政府高官たちは、この計画についてあまりよく知らないと言っている。
●国務省のラテンアメリカ担当の高級官僚であるロベルタ・ジャコブソンは「これまで透明性がありませんでしたからわかりません」と私に教えてくれた。
●ところがHKNDのために働いているアメリカのコンサルタントたちは、ワンの経歴などを調べており、彼自身が怪しい人物だったら社の評判を汚すようなことはしないと言っている。
●ところがワンは来年にかけて運河建設の可否を調査するだけで4500万ドルを支払うとしているのだ。
●たしかに公共入札ではなかったが、HKNDの職員によれば、ニカラグアの天然資源法によって投資者に許可を与えることが許されているという。さらに彼らによれば、ニカラグアはこのプロジェクトに投資する会社を何十年間にもわたって探していたというのだ。
●ワシントンのコンサルタント会社のマクラーティーアソシエイツ社(クリントン政権の主席補佐官が率いる)のスティーブン・ドネホーは、「このプロジェクトをとる前にわれわれは彼のことを調べ上げており、彼は中国政府の手先ではないとわれわれは確信しております」と言っている。
●さらに加えて、「彼はチャンスを求めている起業家であり、自分の資金をリスクにさらしながら計画の調査をしているのです」と述べている。
●HKNDの公式報道官であるマクリーン・アバロア(ボリビアの元政治家/対汚職専門家、後に世銀で働く)が私に教えてくれたのは、ワンの狙いはプロジェクトの透明性を保つことにあるという。なぜなら調査が終われば彼は国際的な資金マーケットで資金を集めなければならないからだ。
●「誰もサギにお金なんか突っ込みたくないですからね」とマクリーンは述べている。
●運河計画におけるオルテガの息子の絡みについてマクリーンは、「彼の関与は政府機関としてのものであり、個人的なものではありません。彼の仕事は国家に投資を呼び込むことなのですから」と答えている。
●私の意見はこうだ。それでもこれはかなり怪しい契約だ。ラテンアメリカの中でも最も非民主的な大統領が関わっており、しかも公共入札は行われておらず、そして誰もよくわかっていない中国のビジネスマンがその契約をとっているのだ。
●もしワンが中国政府の手先ではなく、個人的な事業として行いたいのであれば、彼はダニエル・オルテガに国民投票を―ーパナマがやったように――かけて、そのプロジェクトが法律に基づくもので、経済、環境、そして社会的にも正しいものであるか判断させるべきである。
●そうでなければ、他の投資家はあらわれないだろうし、最大の勝者はニカラグアではなく、ワンのプロジェクトからすでに大金を得ているアメリカのコンサルティング会社だということになるのだ。
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ニカラグアに運河つくっても、パナマの三倍近くの長さになってしまうんですよね。それでも中国は自分でチョークポイントを握りたいんでしょうなぁ。
さて、ニカラグア運河については日本でもささやかに報道されておりますが、それについて面白い記事がありましたので要約を。
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ニカラグア運河は大プロジェクト、それとも大ペテン?
by アンドレス・オッペンハイマー
●ニカラグア政府が中国の企業と結んだ400億ドル(ほぼ4兆円)の運河建設の契約は、パナマ運河と競うラテンアメリカでここ百年で最も重要な建設計画になるか、それともこの地域の歴史で最大の詐欺になるかのどちらかだ。
●そしてこれが後者になると考えられる理由は多い。
●ところが最大の問題はなぜ評判のよいアメリカのコンサルタント会社(マッキンゼー、マクラーティーアソシエイツ、そして反汚職で有名なロナルド・マクリーン・アバロアを含む)がこれほどまでに怪しげなプロジェクトに参加しているのかという点だ。
●ニカラグアのポピュリスト的な大統領であるダニエル・オルテガは、今月はじめに41歳の中国のビジネスマンであるワン・ジンと契約を結んでおり、これは非公開入札によって行われ、しかもワンの会社は運河を建設した経験があるのかどうかさえ知られていないのだ。
●ワンはオルテガの27歳の息子であるラウレアノ・オルテガのお目付役としか知られておらず、これによってオルテガ家もこの取引にからんでいると疑われている。
●ニカラグアの報道によれば、ラウレアノはニカラグア政府の投資推進部門である「プロ・ニカラグア」で働いているという。
●この合意はオルテガがコントロールしているニカラグア議会をたった48時間の議論で通過しており、ワンのもつ「香港ニカラグア運河開発投資会社」(HKND)に50年間の運河建設許可を与えており、この許可はさらにオプションとして50年以上伸ばせるという。
●論者たちはこれはニカラグアの主権の記念碑的な明け渡しであり、ワンはほぼニカラグアという国家そのものを獲得したも同然だと言われている。
●ニカラグアの「コンフィデンシャル」誌の代表であるカルロス・フェルナンド・チャモロは「近年最大のスキャンダルです」と述べている。「パナマ運河の拡大の時は公共入札が行われ、それが国民投票にもかけられましたが、ここでは政府が勝手に勝者を選んでたった一日半で法律を通してしまったのです」
●駐北京のラテンアメリカ諸国の大使たちが私に教えてくれたところによれば、中国政府はこのプロジェクトにまったく関与していないということであり、中国の政府高官はなるべくそれから距離を置こうとしているという。
●それにたいしてアメリカ側の政府高官たちは、この計画についてあまりよく知らないと言っている。
●国務省のラテンアメリカ担当の高級官僚であるロベルタ・ジャコブソンは「これまで透明性がありませんでしたからわかりません」と私に教えてくれた。
●ところがHKNDのために働いているアメリカのコンサルタントたちは、ワンの経歴などを調べており、彼自身が怪しい人物だったら社の評判を汚すようなことはしないと言っている。
●ところがワンは来年にかけて運河建設の可否を調査するだけで4500万ドルを支払うとしているのだ。
●たしかに公共入札ではなかったが、HKNDの職員によれば、ニカラグアの天然資源法によって投資者に許可を与えることが許されているという。さらに彼らによれば、ニカラグアはこのプロジェクトに投資する会社を何十年間にもわたって探していたというのだ。
●ワシントンのコンサルタント会社のマクラーティーアソシエイツ社(クリントン政権の主席補佐官が率いる)のスティーブン・ドネホーは、「このプロジェクトをとる前にわれわれは彼のことを調べ上げており、彼は中国政府の手先ではないとわれわれは確信しております」と言っている。
●さらに加えて、「彼はチャンスを求めている起業家であり、自分の資金をリスクにさらしながら計画の調査をしているのです」と述べている。
●HKNDの公式報道官であるマクリーン・アバロア(ボリビアの元政治家/対汚職専門家、後に世銀で働く)が私に教えてくれたのは、ワンの狙いはプロジェクトの透明性を保つことにあるという。なぜなら調査が終われば彼は国際的な資金マーケットで資金を集めなければならないからだ。
●「誰もサギにお金なんか突っ込みたくないですからね」とマクリーンは述べている。
●運河計画におけるオルテガの息子の絡みについてマクリーンは、「彼の関与は政府機関としてのものであり、個人的なものではありません。彼の仕事は国家に投資を呼び込むことなのですから」と答えている。
●私の意見はこうだ。それでもこれはかなり怪しい契約だ。ラテンアメリカの中でも最も非民主的な大統領が関わっており、しかも公共入札は行われておらず、そして誰もよくわかっていない中国のビジネスマンがその契約をとっているのだ。
●もしワンが中国政府の手先ではなく、個人的な事業として行いたいのであれば、彼はダニエル・オルテガに国民投票を―ーパナマがやったように――かけて、そのプロジェクトが法律に基づくもので、経済、環境、そして社会的にも正しいものであるか判断させるべきである。
●そうでなければ、他の投資家はあらわれないだろうし、最大の勝者はニカラグアではなく、ワンのプロジェクトからすでに大金を得ているアメリカのコンサルティング会社だということになるのだ。
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ニカラグアに運河つくっても、パナマの三倍近くの長さになってしまうんですよね。それでも中国は自分でチョークポイントを握りたいんでしょうなぁ。

by masa_the_man
| 2013-06-26 23:05
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