スノーデンは中国の「有益なアホ」か? |
スパイクマンの音声も無事に撮り終えまして、これから土曜日の講演会などの準備をはじめております。その合間にルトワックのゲラもやりながら地政学の本も書くので、けっこう忙しい毎日です。
さて、アメリカ史上最大のリーク事件ともウワサされるエドワード・スノーデンのNSAリークについて、ひとつ面白いコメントがありましたでのその記事の要約を。
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エドワード・スノーデンは中国の「有益なアホ」か?
●スノーデンはアメリカの監視と国家機密を暴きたかったという。ところが香港に逃げたおかげで、彼はその両方の分野ではるかにひどい記録をもつ国を、意図せずに助けたことになる。
●NSAのサイバー監視計画についての機密情報を漏らした人間であると公式に表明してから、エドワード・スノーデンは香港への逃亡を「愛国的な行動である」と主張している。
●その当時に彼は「英雄」と「売国奴」のどちらかと聞かれたときにも、彼はそのどちらでもなく、「ぼくはアメリカ人です」と主張している。
●そして本日のガーディアン紙によって開催された公式の質疑応答セッションでは、この元国防関係者の愛国主義はさらに明確にされている。これから彼と同じようなリークをしようとする人にたいして、スノーデンは単に「この国のために命を捧げてもいい」と言っているのだ。
●皮肉なことに、スノーデンの暴露によって一番得をするのはアメリカというよりも、彼がいま滞在中の中国だ。
●このような奇妙な主張が示しているのは、チェイニー元副大統領のような人々が指摘していように、スノーデンは中国の「ダブルエージェント」であるということであり、これは彼にとっては明らかに笑い話である。
●この質疑応答の時に中国のスパイだったらどうかと聞かれ、スノーデンは「もしぼくがスパイだったら宮殿に住んでいて不死鳥を飼ってますよ」と答えている。
●スノーデンは中国の政府とは何もコンタクトをとっていないと主張しているが、この主張がどこまで正しいのかは怪しい。というのも、彼が泊まっているホテルの周辺のフロアのいくつかは中国側のエージェントによって占められていると考えられているからだ。
●そしてエヴァン・オスノスによれば、北京政府は彼の居場所について詳細に見張っているという
●そして香港の基本法によれば、中国は国家安全保障の名のもとに彼の本国送還を拒否できる権限をもっており、右派の環球時報はすでにこの解決法を主張している。
●ある意識調査によれば、スノーデンの本国送還に反対している中国国民の数はその逆の立場をはるかに上回っており、このアメリカ人は彼らにとってちょっとした「英雄」的な存在になっているのだ。
●中国政府の決定が何であれ、スノーデンの香港への突然の登場は、自国のサイバー詮索を責められていた国にとっては大きな象徴的な贈り物となっている。
●アメリカのセキュリティー会社のマンディアント社が、人民解放軍が上海のビルからアメリカの軍や企業にたいしてサイバーでスパイ活動を行っていると発表してから、北京政府もアメリカが同罪であるとして非難しており、スノーデンのおかげでその正しさが証明されたのだ。
●二つ目としては、アメリカの反体制派の人間が中国の領内に逃げ込むというのは、その逆に中国の高名な反体制派の多くの人々がアメリカに亡命している事実から考えると皮肉なものだ。
●中国側がスノーデンから実際にどのようなインテリジェンスを得たのかは不明だが、これらのゲインはかなり貴重なものなのだ。
●いずれにせよ、スノーデンは中国についてそれほど気にしている様子はない。ガーディアン紙のスペンサー・アッカーマンが中国政府の保護を得るかわりにアメリカの秘密を渡すという噂についてコメントを求めると、スノーデンはこれを古い時代の「赤狩り」と同じだと述べている。
●たしかにその通りかもしれないが、それにしてもスノーデンが中国の利益のために彼の人生と自由を犠牲にしたという疑念はぬぐえないのだ。
●しかもこの国が行っている国家の監視というのは、スノーデン自身が支持している主義そのものに矛盾しているように見えるのだ。
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彼自身の身になってみると、まあ身の安全の保証はないわけで、今後はかなり不安な毎日を過ごさなければいけないのかと。
最悪なのは、中国にとってもアメリカにとっても、彼の存在を「消す」というのは理にかなっている部分があるのがなんとも。
