ルトワックの「日本語版へのまえがき」その2 |
さて、昨日の続きを。
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●アジア開発銀行の中国代表が、インドへのローンを突然拒否したのは、まさにこのような状況下であった。このローンには、インド北東部のアルナチャル・プラデシュ州(これは日本の領土の二割以上の大きさをほこる)への道路建設の資金が含まれていたためだ。
●中国側はこの地域を「南チベット」(藏南)の一部であると主張しているのだが、この拒否によって長年主張してこなかった領有権争いを復活させることになったのだ。そのすぐ後にアルナチャル・プラデシュ州出身のインド政府の高官は中国側にビザの発給を拒否されている。「中国生まれの人間はビザを必要としない」というのが、その理由だ(!)。
●ベトナムが海上で直面しているように、中国の新しい行動は以前に比べてかなりフィジカルで荒々しいものであり、漁業を管轄する「漁政」の艦船は、ベトナムの漁船が中国側が領有権を主張している広大な海にしかけた漁網を没収している。しかも実際はベトナムが占拠している島の周辺の海域でこれを行っているのだ。
●尖閣諸島周辺で最初に活動を活発化させたのは、それとは別の海洋機関である「海監」であり、この島々を巡っても中国は静かに領有権争いを復活させている。
●人民解放軍海軍(PLAN)はフィリピン海域へ自ら率先して出て行き、最終的にはインドネシアやマレーシアの海域まで出て中国の海洋権益を主張するために、船からテレビの生中継を行っている。
●この海域の外周は、国際的に認められている排他的経済水域のはるか向こうにある「九段線」、もしくは「牛の舌」と呼ばれる有名な形の線(下の地図参照)によって決められている。実際に、その外周は南シナ海の三万平方キロを含んでおり、この合計サイズは三五〇万平方キロになると推定されている。
●したがって、中国は必然的に自国の岸から数百キロも離れていて、しかもインドネシアやマレーシア、それにフィリピンから見える島々や礁、砂州や岩礁などの領有を主張することになってしまっているのだ。
●陸上でも同じような変化が起こっており、中国はインド側の「実行支配区域」をパトロールしており、これは東のアルンチャル・プラデシュ側と西のラダックの両方にたいして繰り返し侵入するものだ。
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まだまだ続きます。