戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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サッカーの地政学:ジブラルタルの場合

今日の横浜北部は怪しい雲がかかっていましたが、それでも雨はギリギリ降らずにスッキリした天気でした。半袖でもいけますね。

さて、興味深い記事の要約です。これは非常に「地政学」してますねぇ。

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ジブラルタルが「サッカーの独立」に一歩近づく

●冷戦時代、アメリカとソ連は互いのオリンピックをボイコットしている。国連はアパルトヘイトを行っていた南アフリカにたいしてスポーツを使って抗議している。

●では最近のスポーツと国際政治がぶつかっているのがどこかというと、イベリア半島の先にあるジブラルタルであり、ここはイギリスとスペインの間で数百年間にわたって争いが繰り広げられている場所だ。

●現在の争いの中心にあるのはジブラルタルのサッカーチームである。このチームはピークをすぎたアマチュアプレイヤーたちの寄せ集めだ。

●もちろんジブラルタルは当分の間はサッカー強国になろうとは考えていない。彼らは単純に自分たちのサッカーチームが政府を代表するものであることを考えているだけであり、いつの日かワールドカップに参戦できればいいと考えているくらいなのだ。

●ところがワールドカップのチャンピオンであると同時にヨーロッパ選手権のチャンピオンでもある巨大な隣国のスペインは、それに反対している。スペインからすれば、ジブラルタルはたとえサッカーでも独立すべきではない「領土」だというのだ

●この問題は、国際スポーツの中でも最も(わかりにくいものかもしれないが)爆発しやすい紛争の一つを燃え上がらせることになった。

スペインはもしジブラルタルが承認されればレアルやバルサのような名門チームをヨーロッパの競技に出場させないと脅しており、昨年ジブラルタルを地方チームとして認定した欧州サッカー連盟は、今週金曜日にフルメンバーにするかどうかを決定することになる。

●「ジブラルタルはスペインの心の奥にあるのです」とは『ジブラルタルの戦い』の著者であるホゼ・マリア・カラスカル氏の言葉。彼は「古い世代にとっては大問題ですが、若い世代もこの問題を発見したということですね。われわれは自分たちの領土に植民地があるということですから」と述べている。

●去年12月に行われた政治家たちからのジブラルタル参加拒否の要求にたいして、スペイン政府は「わが国は引き続きあらゆる法的手段をつかってジブラルタルサッカー協会が欧州サッカー連盟へのフルメンバーとしての参加を拒否していきます。政府としてはジブラルタルの植民地の混合チームとスペインの公式なスポーツチームとの試合を開催することを拒否し続けます」という公式見解を書面で発表している。

●スペイン外務省と首相は、この記事のために私がインタビューの申し入れした時に拒否している。スペイン政府のスポーツ関連の部門は、この問題が最高の外交部門の問題であるとだけ述べている。

●最近行われたビクトリアスタジアムでの公開練習の時に、ジブラルタル代表チームの監督であるアレン・ブラ氏はこの紛争を以下のようにまとめてくれた。「すぐ隣に世界・欧州チャンピオンがいるわけですよ。彼らとはいつでもどこでもどんなことをしても戦ってみせますよ」と彼は500メートル先のスペインとの国境を指差しながら語ってくれた

●「スペイン政府はわれわれが欧州サッカー連盟に参加することを政治的な理由から阻止しようとしたわけで、それでことが進まなかったんですよね。ところがわれわれはスペインが間違っていることを証明したわけです」

●ジブラルタルは人口3万人のイギリスの海外領土だ。1713年のユトレヒト条約で永久に割譲されたわけだが、スペインは長年にわたってこの文書の法的根拠に疑いがあると議論している。

●この条約以来、スペインは二回ほどジブラルタル奪還を試みているが、その二回とも失敗している。イギリスは海軍基地を設置し、これによって地中海の戦略的コントロールを手に入れたのだ

●今日のジブラルタルは、まるで「小さなイギリス」である。ジブラルタル・ポンドはイギリスのホンドとしてそのまま使える法定貨幣である。赤いイギリスの電話ボックスは通りに立ち並んでおり、警察官はイギリス式のヘルメットをかぶって街を歩いている。LCCはイギリスの観光客を運んでくるのだ。

●ジブラルタルにかんするスペインとイギリスの関係は1980年代から大きな騒動は起こっていないが、ラホイ首相率いるスペインの右派が政権をとってからその態度は硬化している。

●ジブラルタルサッカー連盟の代表であるガレース・ラティン氏は欧州サッカー連盟への参加の提唱者だが、彼はそれほど心配していないという。

●「この欧州サッカー連盟参加の動きは16年前にはじまりましたが、われわれはその家族の一員になりたかったからです」とは彼の弁。

●「スペインは公式にわれわれの参加を拒否をしていますが、われわれは他の53カ国と友好関係を築きたいだけであり、われわれを認識してもらいたいだけなのです」と言っている。

●ラティン氏は世界で最も古いサッカー連盟のトップである。1895年に結成され、この領土には二つのトップリーグに16チームがひしめくのだ。

●ところが彼らが欧州サッカー連盟に公式に参加を表明したのは1997年のことであり、そこから法的な争いがはじまって、最終的にスポーツ仲裁裁判所(CAS)は欧州サッカー連盟にたいしてジブラルタルを地方チームとして受け入れるよう指示したのだ。

●アメリカのスポーツ弁護士であり、裁判でも何度か勝訴を勝ち取った経験のあるポール・グリーン氏は、「スペインがCASの決定を無視することはできませんよ。CSAの狙いは政治を介入させないことでして、この場合は政治がポイントじゃなくて、法律がどう言っているかというところなんですから」と述べている。

●ジブラルタル代表の選手たちのほとんどはアマチュアで、本職を他に持つ人々ばかりだ。多くは30歳に近づいていて最盛期をすぎており、次のヨーロッパ選手権やワールドカップは次の世代の仕事である。現世代はただ単に次の舞台を設定しようとしているだけだ。

●ジブラルタルの地方チームとしての資格は、他の小国との試合を可能にした。たとえば現在ヨーロッパの最低ランクにあるサンマリノにたいして7−5で初勝利をあげたし、フェロー諸島にも去年の親善試合で3−0で勝っている。この勝利は「ヨーロッパ中に衝撃を与えた」という。

●ジブラルタルのキャプテンであるロイ・チポリーナ氏は「サンマリノを倒したことによってわれわれはすでに彼らのレベルにあることを証明できました。彼らはすでに8年から10年くらいプレーしてまだ勝利をおさめていないわけですが、われわれはたった3ゲームで勝利したわけですから」。

●監督のブラ氏は、いつかはスペインからも勝利したいと言っている。「私が代表監督になったときから目的は一つでした。それは世界にたいしてスペインが言っていることはむちゃくちゃであること、つまりわれわれが政治的な理由から欧州サッカー連盟に参加したくて、われれにはその資格がないということなんですが、それがいかに間違っているかを証明することだったんです」とのこと。

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こういう点を考えると、イギリスというのはなんとも罪作りな国ではありませんか。

それにしても世界が安定してくると、逆に自治・独立の機運が高まるということも言えそうな。サッカーだけでなく、あらゆるスポーツにも戦略や政治が密接にからんでおりますね。
Commented by 待兼右大臣 at 2013-05-27 00:07 x
そういえば、サッカーの代表チームでは北アイルランドとアイルランドとに分かれていますが、ラグビーでは統一アイルランドだったと思います。

で、ラグビーにはブリティッシュライオンズが存在し、連合王国代表チームはありませんが、逆に、サッカーには、ブリティッシュライオンズに相当するチームがなく、(実際のチーム編成はともかく)連合王国代表チーム(オリンピック代表チーム)が存在します。
Commented by いちバルサファン at 2013-05-27 01:06 x
ジブラルタルを認めるなら次はカタルーニャ、バスクと来るからスペインとしては絶対阻止したいだろう。
by masa_the_man | 2013-05-26 22:02 | 日記 | Comments(2)