2013年 05月 19日
新しい「オフショア・バランシング論」? |
さて、久々に本の紹介をします。
いわゆる「オフショア・バランシング」論と少しだけ関係のある学術書なのですが、テーマはいかにもアメリカという感じです。

Cutting the Fuse: The Explosion of Global Suicide Terrorism and How to Stop It
by Robert Anthony Pape & James K. Feldman
題名を直訳すると『導火線の切断』という感じになるのかもしれませんが、表紙の写真からもわかるように、これは自爆テロに関係したものです。
日本の場合だと、どうしても安全保障の関心は中国を中心とした「国家対国家」という形の、いわば伝統的な脅威に関心が集まっておりますが、常に戦争継続中のアメリカの関心は(一時期から多少減ったとはいえ)やはり(自爆)テロというところにあります。
それがなぜ「オフショア・バランシング」と関係しているのかといえば、この著者の一人であるロバート・ペイプが、この本の最後に提案としてこの大戦略を採用すべきだと提案しているからです。
このペイプという人物は、『大国政治の悲劇』のミアシャイマーの弟子で、現在もシカゴ大学で教授をやっているわけですが、戦略学の分野ではなんといっても戦略爆撃(strategic bombing の研究の第一人者として非常に有名。
とくに『勝利のための空爆』(Bombing to Win)は、社会科学的な手法を駆使しながら「戦略爆撃って、実はあまり効果がない」ということを実証した(といっても結論は議論されてますが)すぐれもの。
ところがペイプ自身は2001年の9月11日から研究分野を「自爆テロ」に一気に変えまして、その数年後には『勝利のための死』(Dying to Win)という似た題名で、これまた膨大なデーターを社会科学的に分析しながら自爆テロの実態(とくにナショナリズムという原因)に迫っております。
そして今回ご紹介する『導火線の切断』ですが、これは『勝利のための死』のアップデート版とも言える内容です。
結論としては、「アメリカに対する自爆テロが起こる場所というは、米軍が占領している場所と深い相関関係がある」というすごく単純なことになるわけですが、特徴としてはそれを詳細なデータを使って示していることや、この現象を「肺がん」とかなり似たような部分があること、そしてそれを防ぐにはどうしたら良いのかというところまで踏み込んでおります。
最後の解決法として出てくるのが「オフショア・バランシング」なわけですが、たしかに自分たちが直接手を下すよりも、その地域の同盟国に押さえつけてもらったほうが(アメリカとしては)合理的だ、ということに。
そういうわけで、「オフショア・バランシング」は本書ではメインの議論ではなく、あくまでも「おまけ」のような扱いなわけですが、それでも別の安全保障上の懸念から一つの大戦略の考え方として採用を呼びかけられているという意味では面白いかと。
300頁以上ありますので気軽に読める本ではないですが、その扱っている事象の広さや文の読みやすさなどは、この分野の主著的な扱いという意味で貴重です。
いわゆる「オフショア・バランシング」論と少しだけ関係のある学術書なのですが、テーマはいかにもアメリカという感じです。

Cutting the Fuse: The Explosion of Global Suicide Terrorism and How to Stop It
by Robert Anthony Pape & James K. Feldman
題名を直訳すると『導火線の切断』という感じになるのかもしれませんが、表紙の写真からもわかるように、これは自爆テロに関係したものです。
日本の場合だと、どうしても安全保障の関心は中国を中心とした「国家対国家」という形の、いわば伝統的な脅威に関心が集まっておりますが、常に戦争継続中のアメリカの関心は(一時期から多少減ったとはいえ)やはり(自爆)テロというところにあります。
それがなぜ「オフショア・バランシング」と関係しているのかといえば、この著者の一人であるロバート・ペイプが、この本の最後に提案としてこの大戦略を採用すべきだと提案しているからです。
このペイプという人物は、『大国政治の悲劇』のミアシャイマーの弟子で、現在もシカゴ大学で教授をやっているわけですが、戦略学の分野ではなんといっても戦略爆撃(strategic bombing の研究の第一人者として非常に有名。
とくに『勝利のための空爆』(Bombing to Win)は、社会科学的な手法を駆使しながら「戦略爆撃って、実はあまり効果がない」ということを実証した(といっても結論は議論されてますが)すぐれもの。
ところがペイプ自身は2001年の9月11日から研究分野を「自爆テロ」に一気に変えまして、その数年後には『勝利のための死』(Dying to Win)という似た題名で、これまた膨大なデーターを社会科学的に分析しながら自爆テロの実態(とくにナショナリズムという原因)に迫っております。
そして今回ご紹介する『導火線の切断』ですが、これは『勝利のための死』のアップデート版とも言える内容です。
結論としては、「アメリカに対する自爆テロが起こる場所というは、米軍が占領している場所と深い相関関係がある」というすごく単純なことになるわけですが、特徴としてはそれを詳細なデータを使って示していることや、この現象を「肺がん」とかなり似たような部分があること、そしてそれを防ぐにはどうしたら良いのかというところまで踏み込んでおります。
最後の解決法として出てくるのが「オフショア・バランシング」なわけですが、たしかに自分たちが直接手を下すよりも、その地域の同盟国に押さえつけてもらったほうが(アメリカとしては)合理的だ、ということに。
そういうわけで、「オフショア・バランシング」は本書ではメインの議論ではなく、あくまでも「おまけ」のような扱いなわけですが、それでも別の安全保障上の懸念から一つの大戦略の考え方として採用を呼びかけられているという意味では面白いかと。
300頁以上ありますので気軽に読める本ではないですが、その扱っている事象の広さや文の読みやすさなどは、この分野の主著的な扱いという意味で貴重です。
by masa_the_man
| 2013-05-19 07:00
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