背水の陣
2013年 05月 11日
さて、ここ数日のエントリーに引き続いて、今日も戦略をひとつご紹介。
「背水の陣」といえば、史記や漢書などのエピソードに詳しくなくてもなんとなく聞いたことがある人は多いと思われます。
実はこれも一種の戦略として考えられているフシがありまして、英語の文献などでは「Death Groundを作る」みたいな表現で出てきたりします。
自己啓発本などにも出てくることがありまして、たとえばあのアンソニー・ロビンスなどは「限界まで自分を追い込むんだ、そうすると力が伸びる」なんてけっこう無理なことをさらっと言ったりしてます。
ではこのような戦略が出てくる背景というか、前提にあるのはどういうことかというと、それは、
「自分の最大の敵は、自分自身である」
ということです。
これも当たり前といえば当たり前ですが、自分が何か目標を達成しよう、事業を成功させようというときに限って、一番じゃまをしてくるのは、実は他の誰でもない、自分だったりするわけです。
昔ネットで見たことがあるのですが、これを別の言い方でいうと
「敵は本能にあり」
ということも言えるのかと(笑
これは何も個人レベルだけではなく、組織レベルでも同じことが言えます。だからこそ、
「敵を欺くにはまず味方から」
ということもありますし、プロパガンダ系の文献などを読んでいくと、
「まず自分を騙してから他人を騙す」
みたいな分析が出てきて驚かされるわけです。
また、もう一つの前提としていえるのは、実は「自由」というのは人間にとってけっこう負担だったりするわけで、むしろ何か制約があったほうが、人間にはエネルギーが湧いてきて、ものごとを達成する意欲が高まるというもの。
では自分を追い込むとどうなるかというと、他にすることがないために、それに集中せざるを得ないわけです。また、人間というのはだらけやすいものですから、きっかけがないとやる気が起きません。
孫子も「九地」の中で「死地」(death ground)を説明する際に、
「疾とく戦えば則すなわ ち存し、疾く戦わざれば則ち亡ぶ者を死地しちと為す。死地には則ち戦え」
と書いておりますが、これはつまり追い込むと戦わざるを得ない状況になり、そうなると否が応でも能力を発揮できる、ということになります。
もちろん常に自分を追い込むのもどうかと思いますが(苦笑)、これもようするにバランスでありまして、少し自分がだらけてきたなぁという場合には、締め切りなどをうまく活用して自分を動機づけるということは大事になってくるのかと。
