戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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国際関係論の文献の「歴史調査」

今日の横浜北部はまたまたよく晴れまして、昼間は初夏の陽気でした。GWもいよいよ後半ですな。

さて、久々に国際関係論に関する論文で興味深いものを読んだので、メモ代わりに気付いたことを書いておきます。

国際関係論といえば、私はカナダの大学で授業をとったのに加えて、ミアシャイマーの『大国政治の悲劇』を翻訳した時にかなり勉強をした記憶があるわけですが、あるところでこの科目を教えることになったので、最近になって久々にこの分野についての論文を読み返しているところです。

そこで目にとまったのが、国際関係論(以下、IR)の専門誌(12誌)に過去三〇年間にわたって掲載された「全ての論文」を徹底調査した論文。

これは現在流行している、いわゆる「ビッグデータ」を活用したものと言えるでしょうか。

いくつかの結論があるのですが、私が気になったのは以下のような結論。

1、アメリカのIR学会では理論の細分化が進んでいる。

2、アメリカのIRの入門コースで主に教えられているのは、リアリズム、リベラリズム、コンストラクティビズム、そしてマルクス主義(ただしマルクス主義の割合は激減)。

3、リアリズムは学者たちには最もメジャーな学派だと思われているが、実際に書かれている論文の多くはリベラル(国内政治、国際制度機関、相互依存)のものか、パラダイムのないものばかり。

4、メソドロジーに関しては「定量分析」のものが段々と増加している。

5、アメリカのIR学者たちの間で最も共通してみられるのは実証主義(Positivism)の思想。

6、リアリズムの路線で書かれている論文の絶対数は確かに少ないが、ほとんんどのIR学者たちに「最も重要だ」と考えられていて、実際に引用されることが多いのもリアリズム系の論文。 

などです。

ところが私が最も気になったのは、現役の学者たち(4000人以上)にインタビューして出てきた以下のような答え。それは、

●IRの研究は、実際の政策にほとんど影響を与えていない。

●ところが多くのIR学者たちは、自分たちの研究が実際の政策に活かせるものであるし、政治家にとっても有益だと考えている

●しかし多くのIR研究者たちは、実際には政策に直接活かせるような研究にはあまり興味を示していない面もある。なぜならあまりに政策に寄った仕事をすると、自分の学術的な研究や理論との整合性が取れなくなってしまうから。

●IRの論文の中でも、実際に具体的な政策提言をしているのは全体のうちのたった12%

ということです。

私はどちらかといえば(直接・間接的に)政策に活用されない知識や研究は意味がないものだと考えているくらいなので、アメリカのIR業界でもその政策提言の少なさには驚くと同時に、なぜだかこの結果には妙に納得してしまいました。

かようにして、学術界と実際の政治の現場というのは距離があるわけで、これはアメリカのようなプラグマティズムの根付いている社会でも似たようなものなんでしょうな。
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(ヘビーなデザート)
by masa_the_man | 2013-05-05 22:05 | 日記 | Comments(0)