戦略とは何か:その2
2013年 04月 29日
さて、一昨日のエントリーの続きを少し
戦略の神髄について色々と調べていると、いつも必ず出てくるのが「相手の心理に入る」みたいな表現です。これはボイドのOODAループなどがその典型です。
ボイドというのは戦闘機のドッグファイトという戦術レベルから、後に戦略レベルまで理論を発展させた人なんですが、やはり戦略でも本当に重要なのは「人間の知覚」にあるということをわかっていたみたいで、
「機械が戦争を戦うわけじゃないし、地形が戦争を戦うわけでもない。人間が戦争を戦うのであり、人間の思考の中に入っていかなければならない。戦いの勝敗はそこで決まるのだ」
という有名な言葉を残しております。
彼はこのループを相手よりも加速させることによって敵のループの中に入り込み、これによって相手に「こいつは何をやっているのかようわからん」と(予測不能に)思わせることによって、相手を困惑と混乱を発生させるべし、と言っているわけです。
実は私はこれと同じようなことをある人物の講演で聞いたことがあります。NATO軍でナンバー2までやったイギリスの軍人です。
彼は自分のおじさんが市場でセリをやっており、その様子がまさにこの(OODAループ)状態であったと教えてくれたのです。
どういうことかというと、そのおじさんは、セリを始めると、あまりハッキリしない声で実に早口にセリのかけ声を始めるのです。
そうすると、周りはそのおじさんの言うことを必死に聞こうとして集中するようになり、それで物事がスムーズに運ぶのだということ。
当時の少年だったその軍人がおじさんに「なんであんなに上手くいくの?」と答えると、そのおじさんは、
「いいか坊主、ああいうときはまず自分が“混乱”になるんだ。そうすると周りが秩序を作ろうとして必死に食らいついてくるもんだ。だからうまく行くんだよ」
と答えたとか。
なんだかちょっと意味は違うような気がするんですが(苦笑)、もしかするとこの例は戦略の「強烈な矛盾を抱えた性質」というものを教えてくれているのかもしれません。



「モスクワ以外の都市に地下鉄はない」という言葉を理解する
ソ連のエリートのように、つまりこれは有名にすべきだ!
ということですね!?
ボイディアンはドッグファイトから演繹的に考えられるOODAL
の使用法は、防御的で片面的な見方に過ぎないって拗ねるらしい
ですね。
相手のOODALを破壊する事で勝利ができる、つまり相手の重心
であるから「戦略」にカウントできる、ということなんでしょうか。
でも、一応新戦略とされるNCW関係だと、自身の意思決定速度の
向上は華々しく認めてるんですけど、相手の意思決定破壊は全く
計測していないんですよね。まぁ、下手すると「旧来の軍事
システムを形作るOODAループ」的な扱いだったりするので、
この辺り多分混乱はあるんだと思いますが。