2013年 04月 15日
ルトワックの動画の翻訳:その3 |
またまたつづきです。最後の質問にたいする答えがなかなか面白い。
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(18:00)
●この同盟国の大切さについて、ひとつ例を挙げましょう。
●以前イスラエルを訪れていた時に、私は(イタリアの)カプリ島に急に訪れなければならなくなりまして、非常に値段が張るのですが、とりあえず一番安いジェット機をチャーターしたわけです。ところがこのジェット機はあまりにも小さかったため、途中の空港で燃料を入れないとカプリ島にはいけなかったのです。
●よって途中でギリシャのロドス島に寄ったわけですが、ここにつくと機長が乗組員に「ファックスを送れ」と言って、その後にさっそく給油が行われました。
●ところがトイレを使うために乗組員が飛行場の建物の中にいくと(このジェット機はトイレもないほど小さなやつですから)、豪華なジェット機に乗った大量のアラブの富豪たちが、給油を待つために飛行場の中で待機しているわけです。
●当時のギリシャ(パパンドレウ政府)は非常に反イスラエル的であり、パレスチナを賞賛するようなコメントを連発していたわけなので、われわれのイスラエルを優先し、アラブ(UAE)の富豪たちをわざわざ飛行場の中で待たせるようことをするのは奇妙だと思ったわけです。
(20:00)
●そこで飛行場の人間に、「なぜ俺たちの飛行機に優先的に給油してくれたの?」と聞くと、彼らの答えは「いいか、君たちの飛行機にはX-1と書かれているだろ。自家用ジェット機でXという記号がつくと、それはイスラエルのもので、しかもモサドが使う場合が多いんだ。モサドはいつも急いでいるでしょ?だからわれわれはファックスによる連絡だけでお金もとらずに優先したんですよ」ということ。(会場笑)
●つまり私が言いたいのは、同盟というのは単なる言葉上だけのものではないということです。
●もちろん公式的にはどのようなことを言っていても、実際の「大戦略」のレベルでは、単なる言葉や名目というのは意味がなくて、友と味方を区別する「機能面」が決定的に重要になってくるわけです。
●たとえばインドとイスラエルの関係もその一例です。表面的には色々といいますが、実際にインドとイスラエルは相当深いレベルで協力を進めているため、このようなカンファレンスに政府高官が来ていないくても、実質的なところでは同盟関係が進んでいるわけです。
●これこそが、戦略レベルで本物の力を発揮するのです。
●現実的な問題として、どの国にも外務省と国防省の権力争いというものがあります。基本的に外務省が上であるということが前提であり、アメリカでは国防省と国務省のような例がありますが、イスラエルの場合はとくにこの二つの省庁の勢力のバランスが重要になってきます。
●なぜならこの二つの上下関係が、場合によってはひっくり返されてしまうことがあるからです。その典型的な例が(2010年に起こった)ガザ支援船拿捕事件でしょう。
●なぜならこの事件における大戦略レベルで決定的な役割を果たしたのは、イスラエルの首相ではなかったですし、トルコの首相でもなかったのです。
●では一体誰が決定したのかというと、イスラエル海軍のヘリに乗っていた指揮官であり、下の船の状況を見て攻撃を命令した人物なのです。
●彼は単なる下士官であり、現在の通信手段が発達してコマンド&コントロールがあるはずの時代でも上司に報告せずに作戦を決行したわけです。
●もちろん人間は失敗するものですから彼をそこまで責めるわけにはいかないのかもしれませんが、一番やってはいけなかったのはシステムを逆さまにしてしまうこと、つまり戦術レベルの失敗を大戦略のレベルの問題にしてしまったことです。
●つまり彼がイスラエルとトルコの外交関係を破壊してしまったわけです。
●よってここから得られる教訓は、組織の構造やバランスを再検証するべきだということです。なぜなら短期的な決断が長期的な問題となる場合があるからです。
●ここで質問の時間に移ります。ご質問やご意見、それにクレームのある方は手を挙げておっしゃってください。イスラエル海軍を擁護するご意見でもいいですよ(会場笑)
(質問1)聞き取れず。アメリカのことについて質問?
●二つの選択肢があります。現在のアメリカと交渉するか、「理想的なアメリカ」をつくりあげるかです。
●イギリスはアメリカのひどい仕打ちにも耐えぬきました。たとえば中国にあったイギリスの租界などをアメリカは追い出してますし、イギリスの植民地にいっては「俺たちはイギリスと戦ったんだ、奴らを追い出そうぜ!」と現地にけしかけてます。
●とくに中東の例は有名ですよね。イギリスが持っていたサウジの権益をイギリスには少しも渡しませんでした。
●ようするに「理想的なアメリカ」とつき合うのが無理なわけですから、「現在のアメリカ」で満足しなければならないということです。
●そしてそれ相応の負担をするのが「忍耐」であり、大戦略に必要となるものなのです。
質問2:イランの核武装を防ぐにはどうすれば?
●海外の報道によれば、といってもこのような報道は嘘が多いのですが、イスラエルは約9年間と4000万ドルによって核武装を実現できたと言われてます。
●ところがイランは27年間、しかも20億ドル以上かけているのにたった5キロの核物質しか作れていないということです。
●イランの市場にはとっても豪華なロバ用の鞍をつくる工芸人がいるんですが、彼らの商売が上手くいっているかぎり、イランの核開発はダメなままでしょうね。
●なぜかって?イランの核開発には不正や賄賂、それに手抜き工事などが横行しているため、なかなか進まないからです。
●ところがイスラエルが空爆したらどうなります?
●これは大きな問題です。なぜなら空爆してしまうと、イラクの核開発事業の効率が上がってしまうからです。(会場爆笑)いや、これって笑い事じゃないんですよ。あたりまえの現実なんです。
●たとえば1944年のドイツにたいする空爆の例がそれです。この時のドイツは、空爆されたあとに戦車の生産量を上げているわけですが、これは空爆で焼け出された製本業者や馬具の業者、それに製粉業者たちが、働く場所がないために仕方なく軍需工場で働きはじめたからです。
●現在のイランの政府ですが、彼らはかなりひどい人たちですね。モロッコからインドまで、ユダヤ人が住んでいる国の中でユダヤ人をバカにした発言をしているのはイラン政府だけなんですから。
●ところが彼らを空爆してしまうと、ここで非常に大きな問題をイスラエルは抱えてしまうことになります。彼らは民族間で互いに憎しみあっているわけですが、こうすると「反イスラエル(ユダヤ)」でまとめてしまうことになるからです。
●もちろん脅しをかけてくるイランのような存在にたいして空爆のような形で制裁を行うのはいいアイディアなのかもしれません。われわれは脅されているからですよね。
●しかし空爆によって達成できるのはわれわれの能力を示すということだけで、しかもそれで核開発を数年間だけ遅らせるのが関の山です。
●よって得られる結果は同じなわけですから、わざわざ空爆するのは無意味です。燃料を節約しましょう。ご清聴ありがとうございました。
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以上です。意見はやや過激ですが、なかなか面白いところをついてますね。
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(18:00)
●この同盟国の大切さについて、ひとつ例を挙げましょう。
●以前イスラエルを訪れていた時に、私は(イタリアの)カプリ島に急に訪れなければならなくなりまして、非常に値段が張るのですが、とりあえず一番安いジェット機をチャーターしたわけです。ところがこのジェット機はあまりにも小さかったため、途中の空港で燃料を入れないとカプリ島にはいけなかったのです。
●よって途中でギリシャのロドス島に寄ったわけですが、ここにつくと機長が乗組員に「ファックスを送れ」と言って、その後にさっそく給油が行われました。
●ところがトイレを使うために乗組員が飛行場の建物の中にいくと(このジェット機はトイレもないほど小さなやつですから)、豪華なジェット機に乗った大量のアラブの富豪たちが、給油を待つために飛行場の中で待機しているわけです。
●当時のギリシャ(パパンドレウ政府)は非常に反イスラエル的であり、パレスチナを賞賛するようなコメントを連発していたわけなので、われわれのイスラエルを優先し、アラブ(UAE)の富豪たちをわざわざ飛行場の中で待たせるようことをするのは奇妙だと思ったわけです。
(20:00)
●そこで飛行場の人間に、「なぜ俺たちの飛行機に優先的に給油してくれたの?」と聞くと、彼らの答えは「いいか、君たちの飛行機にはX-1と書かれているだろ。自家用ジェット機でXという記号がつくと、それはイスラエルのもので、しかもモサドが使う場合が多いんだ。モサドはいつも急いでいるでしょ?だからわれわれはファックスによる連絡だけでお金もとらずに優先したんですよ」ということ。(会場笑)
●つまり私が言いたいのは、同盟というのは単なる言葉上だけのものではないということです。
●もちろん公式的にはどのようなことを言っていても、実際の「大戦略」のレベルでは、単なる言葉や名目というのは意味がなくて、友と味方を区別する「機能面」が決定的に重要になってくるわけです。
●たとえばインドとイスラエルの関係もその一例です。表面的には色々といいますが、実際にインドとイスラエルは相当深いレベルで協力を進めているため、このようなカンファレンスに政府高官が来ていないくても、実質的なところでは同盟関係が進んでいるわけです。
●これこそが、戦略レベルで本物の力を発揮するのです。
●現実的な問題として、どの国にも外務省と国防省の権力争いというものがあります。基本的に外務省が上であるということが前提であり、アメリカでは国防省と国務省のような例がありますが、イスラエルの場合はとくにこの二つの省庁の勢力のバランスが重要になってきます。
●なぜならこの二つの上下関係が、場合によってはひっくり返されてしまうことがあるからです。その典型的な例が(2010年に起こった)ガザ支援船拿捕事件でしょう。
●なぜならこの事件における大戦略レベルで決定的な役割を果たしたのは、イスラエルの首相ではなかったですし、トルコの首相でもなかったのです。
●では一体誰が決定したのかというと、イスラエル海軍のヘリに乗っていた指揮官であり、下の船の状況を見て攻撃を命令した人物なのです。
●彼は単なる下士官であり、現在の通信手段が発達してコマンド&コントロールがあるはずの時代でも上司に報告せずに作戦を決行したわけです。
●もちろん人間は失敗するものですから彼をそこまで責めるわけにはいかないのかもしれませんが、一番やってはいけなかったのはシステムを逆さまにしてしまうこと、つまり戦術レベルの失敗を大戦略のレベルの問題にしてしまったことです。
●つまり彼がイスラエルとトルコの外交関係を破壊してしまったわけです。
●よってここから得られる教訓は、組織の構造やバランスを再検証するべきだということです。なぜなら短期的な決断が長期的な問題となる場合があるからです。
●ここで質問の時間に移ります。ご質問やご意見、それにクレームのある方は手を挙げておっしゃってください。イスラエル海軍を擁護するご意見でもいいですよ(会場笑)
(質問1)聞き取れず。アメリカのことについて質問?
●二つの選択肢があります。現在のアメリカと交渉するか、「理想的なアメリカ」をつくりあげるかです。
●イギリスはアメリカのひどい仕打ちにも耐えぬきました。たとえば中国にあったイギリスの租界などをアメリカは追い出してますし、イギリスの植民地にいっては「俺たちはイギリスと戦ったんだ、奴らを追い出そうぜ!」と現地にけしかけてます。
●とくに中東の例は有名ですよね。イギリスが持っていたサウジの権益をイギリスには少しも渡しませんでした。
●ようするに「理想的なアメリカ」とつき合うのが無理なわけですから、「現在のアメリカ」で満足しなければならないということです。
●そしてそれ相応の負担をするのが「忍耐」であり、大戦略に必要となるものなのです。
質問2:イランの核武装を防ぐにはどうすれば?
●海外の報道によれば、といってもこのような報道は嘘が多いのですが、イスラエルは約9年間と4000万ドルによって核武装を実現できたと言われてます。
●ところがイランは27年間、しかも20億ドル以上かけているのにたった5キロの核物質しか作れていないということです。
●イランの市場にはとっても豪華なロバ用の鞍をつくる工芸人がいるんですが、彼らの商売が上手くいっているかぎり、イランの核開発はダメなままでしょうね。
●なぜかって?イランの核開発には不正や賄賂、それに手抜き工事などが横行しているため、なかなか進まないからです。
●ところがイスラエルが空爆したらどうなります?
●これは大きな問題です。なぜなら空爆してしまうと、イラクの核開発事業の効率が上がってしまうからです。(会場爆笑)いや、これって笑い事じゃないんですよ。あたりまえの現実なんです。
●たとえば1944年のドイツにたいする空爆の例がそれです。この時のドイツは、空爆されたあとに戦車の生産量を上げているわけですが、これは空爆で焼け出された製本業者や馬具の業者、それに製粉業者たちが、働く場所がないために仕方なく軍需工場で働きはじめたからです。
●現在のイランの政府ですが、彼らはかなりひどい人たちですね。モロッコからインドまで、ユダヤ人が住んでいる国の中でユダヤ人をバカにした発言をしているのはイラン政府だけなんですから。
●ところが彼らを空爆してしまうと、ここで非常に大きな問題をイスラエルは抱えてしまうことになります。彼らは民族間で互いに憎しみあっているわけですが、こうすると「反イスラエル(ユダヤ)」でまとめてしまうことになるからです。
●もちろん脅しをかけてくるイランのような存在にたいして空爆のような形で制裁を行うのはいいアイディアなのかもしれません。われわれは脅されているからですよね。
●しかし空爆によって達成できるのはわれわれの能力を示すということだけで、しかもそれで核開発を数年間だけ遅らせるのが関の山です。
●よって得られる結果は同じなわけですから、わざわざ空爆するのは無意味です。燃料を節約しましょう。ご清聴ありがとうございました。
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以上です。意見はやや過激ですが、なかなか面白いところをついてますね。
by masa_the_man
| 2013-04-15 11:33
| 日記

