戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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ルトワックの動画の翻訳:その1

発言の要約

●時間がないのでみんなが知っている例を挙げて話ます。

●日本が行った「真珠湾攻撃」はご存知でしょう?テクノロジーも未発達の時代にあの広い太平洋を越えてハワイを見つけて、そこにいたアメリカの軍艦に攻撃をしかけたわけです。こりゃ大変ですよ。

●ここで質問です。もしあなたが「愛国的」な日本人で、自分の上司がカリフォルニアに上陸してワシントンD.C.まで軍事侵攻してアメリカ政府に講和を迫るようなアイディアをもっておらず、ただ単にアメリカを怒らせるだけの計画しか持っていないと知ったらどうします?

●ひとつは、爆弾のターゲットをすべてミスさせて真珠湾攻撃を失敗にして(日本人は分厚い眼鏡をかけているド近眼ばかりだと思われてましたから)単なるジョークにするというのもありかもしれません。

●ようするにここで得られる教訓は、戦略の世界では「常識」が通じないということです。

●「常識」のレベルでは、5ドルでものを作って10ドルで買ってもらい、5ドル儲けるというようなものでしょう。

●ところが戦略の世界では、たとえば戦術レベルで最高の結果(戦闘での劇的な勝利)を挙げたり、作戦レベルなどで最高のキャンペーンを成功させ、しかも地域レベルで成功させて軍を敵陣深くまで進めたとしても、軍事の最上階の「大戦略」のレベルで大失敗することなどは多々あるわけです。

●だから終戦間際の1945年の1月や2月の時点でも、たった100人のドイツ側の部隊を倒すのに300人のイギリスの部隊が必要となったりするわけです。

●第二次大戦のヒトラーの戦略も無意味でした、なぜなら相手はロシアとアメリカで、自分たちはイタリアとブルガリアしか同盟できていないわけです。

●もしあなたがイタリアとブルガリアを味方につけて戦い、百戦連勝したとしましょう。でもこの成果は蓄積していかないのです。これが戦略の第一の原則です。

●ようするに戦略では「常識」が通用しないのです。だから最初にやることは「常識」を窓から投げ捨てることです。ビジネスは人生では「常識」は通用するかもしれませんが、紛争の場合は無理です。

●第二の原則はさらに都合が悪い。それは、唯一「矛盾」だけが効果を生む、ということです。正面突破的で直線的な論理は常に失敗します。

●たとえばあなたがエルサレムからテルアビブへ行こうと思ったら、もちろん最短距離をいく道を選びますよね。

●ところが戦略の世界には「敵」という存在がおり、彼が待ち構えておりますので、最悪の選択はまっすぐの最短距離を行くこととなります。

●ではどうすればいいか?敵が思いもよらないようなジグザグの回り道を行くことだったり、晴れた天候の良い日中ではなく、嵐の夜中に行くことだったりするわけです。

(5:00)

●よって、正しいことが矛盾しており、直線的なことは失敗するのです。

●戦略の原則は二つあります。成果が蓄積しないことと、そして「非線的」であるということです。だからこそ、人類の歴史は犯罪と失敗、そして狂気の連続なのです。

●なぜ人類は歴史の教訓を学べないのでしょうか?

●それはわれわれが育つ時に「戦略」を学ばないからです。家族や恋人にたいしては「驚かせる」ということは学びませんよね。

●ところが戦略でやらなければならないのはまさにこのことなのです。敵を驚かせると思考は働いていないために、味方のほうは戦略的な問題はすべて解消してしまって、あとは組織をどう効率よく動かすかという点だけになるのです。

●よって、ここでわれわれには深刻な問題が生まれます。それは「紛争」が実在するからであり、そこで戦略のロジックが働くものだからです。

●このテーマについて私は一冊の本を書いており、ヘブライ語にも訳されているほどです。

●私はこの点について批判されたことがあります。

●実は私はこの本を英語で書いたのですが、これがドイツ語に翻訳されて、そのドイツ語訳が英語に翻訳しなおされたことがあります。これはそうしたほうが「哲学的」に書かれているような感じがするためみたいですが(会場笑)

●しかしこのようなことが起こるのは、このテーマがそもそも非常に難解だからです。

●まず矛盾というメカニズムがありまして、それが「戦略の階層」にかかわってくるとさらに難しくなってきます。

●たとえば上の戦闘のレベルでの勝利が戦術レベルでの勝利を決定しても、その反対はないというものだったりします。

●前線で二つの師団がいて、一方が敵を抑えているとして英雄扱いされていて、もう一方が崩壊しつつあったとしても、もし敵がその崩壊して撤退した師団の後ろを回り込んできたら、英雄的な師団も包囲されて全滅ということになりかねないからです。そして撤退した師団が次の日に生き残って戦い続けることになったら評価は正反対です。

●こういうわけですから難しい本なわけですが、中国にいったらある人民解放軍の大佐がやってきて「あんたのことが嫌いです。だってあんな難しい本書いたからですよ!私は試験にパスするために読まされて散々な目にあいました」と言ってきたこともあります。

●この複雑さは「トランスフォーメーション」がからんでくると、さらにダイナミックで複雑になります。

●ではナポレオンの例を考えてみましょう。彼はいくつもの戦闘を何回も勝ちましたが、勝てば勝つほど前進するために自分の根拠地から部隊が離れていくわけです。

●マクドナルドの場合だったら1000店出したらつぎの1000店を出すのは簡単でしょう。でも戦略の場合はこういきません。

●ナポレオンは(1812年に)ロシアの奥深くまで侵攻しましたが、これは成功したからますます奥深くまで行ってしまったわけです。つまり勝利が敗北につながるわけです。

●ところが撤退して国の近くまで戻ってくると、それまでの敗北が勝利にかわるかもしれない。つまり戦略の世界ではすべてがトランスフォームするわけです。

●イスラエルは1948年から紛争に巻き込まれておりますが、昔から一貫して言われているのは紛争での能力の無さです。しかしこれは彼らの日常生活とは全く違うロジックで動くものだからです。

つづきはまたのちほど。
by masa_the_man | 2013-04-12 20:48 | 日記 | Comments(0)