戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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アメリカは同盟国たちに仕事をさせろ

今日の千葉県西部は快晴です。あの震災からもう二年がたつんですなぁ。

さて、また新しい「アメリカ撤退論」が出てきたので、その要約を。

地政学的な「オフショア・バランシング」よりも、むしろ財政や道徳的な面からの「バーデン・シェアリング」系の議論といえるでしょうか。

著者はサンディエゴ州立大学の教授で、この内容は彼女の最新作を反映したもののようです。

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アメリカは世界から撤退すべきだ
Byエリザベス・コッブス・ホフマン

●みんながイラクとアフガニスタンからの撤退を論じている。しかしドイツと日本からの撤退は??

●歳出削減の強制発動――これは今年度の850億ドルの歳出を全分野、とくにその半分を国防費からカットする――は、あまりにも長い間アメリカで議論されてこなかったこと、つまり「アメリカはまだ第二次大戦を戦っているのか?」という疑問について議論するチャンスを与えてくれたのだ。

●ハリー・トルーマン大統領がソ連のさらなく拡大を阻止し、「少数の武装した人々や外からの圧力による征服に抵抗する、自由な人々を支えるための」政策を設定した1947年以来、アメリカは世界の警察官として行動してきた。

●イギリスは、百年以上にわたってユーラシア内部で行われている侵略行為にたいして「抵抗」してきたのだが、第二次大戦によってそれが崩れてしまった。そして連合国がヤルタ会談を行って戦後の世界秩序を決定したそのたった二年後に、ロンドン政府はワシントン政府にたいして、五週間後に世界の警察官としての役割を譲ると言い渡したのだ。

●この時、ギリシャ政府はユーゴスラビアの共産主義によるパルチザンと戦っており、トルコは水際をパトロールしているソ連の部隊から圧力を受けており、スターリンはフィンランドからイランの政府まで武装化させて、強い権力をもっていたのだ。

●歴史家の中には、トルーマンは世界の安全保障に際限なく取り組むようにわざわざアメリカ国民を震え上がらせたという解釈をする人もいる。

●しかしアメリカ国民はすでにその前から恐れていた。1947年に行われたギャロップ社の意識調査では、実に73%もの人々が「第三次世界大戦は起こるはずだ」と答えている

●トルーマンドクトリンから出てきたのは、以下のようないくつかの同盟を構築するという戦略であった。

―1947年リオ協定(南米)
―1949年北大西洋条約機構(カナダ、北欧、西欧)=NATO
―1951年アンザス協定(オーストラリアとニュージーランド)
―1954年東南アジア条約機構(東南アジア諸国)=SEATO

●SEATOは1977年に終了したが、それ以外の条約が効力をもっており、日本、韓国、そしてフィリピンとの集団防衛協定も残っている。その合間にわれわれはマーシャルプランによって対外支援のやり方を発明している。

●このような動きは1940年にフランクリン・ローズヴェルトが大統領選を「アメリカを戦争に突入させない」という公約をして三期目の当選を果たした時からは劇的な変化である。

●アメリカの「孤立主義」は豊かな伝統をもっており、1796年のワシントン大統領による対外的な関与を避けろとする警告から、ヘンリー・カボット・ロッジが「ヨーロッパの紛争において審判の役割や、それにたいする介入するのを少なくすればするほど、アメリカにとっても世界にとっても良いはずだ」と論じた1919年のヴェルサイユ条約についての議論まで様々だ。

●第二次大戦と国連の重要性のおかげで、それ以降の政権たちはこのアメリカの伝統に背き続けているのであり、しかもそれによる「成功」は劇的なものだった。

20世紀後半の世界は、前半に比べてはるかに安全になった。世界の人口の中で国家間紛争で死んだ人の割合は、トルーマンドクトリンから十年ごとにどんどん下がって行ったのだ。

●アメリカはさらに戦争を経験(朝鮮戦争、ベトナム、そして二つのイラク戦争、アフガニスタン)したが、世界全体的にはその経験は少なくなったのだ。

●われわれは「帝国」――学者で元兵士のアンドリュー・ベイセヴィッチが非難し、保守派の歴史家であるニアル・ファーガソンが賞賛するような――ではなく、むしろ国家が政治的・経済的な利益を得たり、国際紛争を平和的に解決したり、貿易やビジネスにおいて透明性を確保する役割を果たすという意味での「審判員」なのだ

●ところが冷戦後に情勢は劇的に変わってきた。アメリカが西ドイツと日本に大規模な基地を設置した頃は、この二国は監視されるべき危険な世界秩序にたいする反逆者たちだと見られていたからだ。

●また、この二国の政府自身もとくにソ連と中国からの脅威からの保護を求めていた。NATOの最初のトップであるヘイスティング・イスメイは、この同盟が「ロシアを排除し、アメリカを入れて、ドイツを抑える続けるためにある」という有名な言葉を残している。

今日でもわれわれはドイツと日本に大規模で恒常的な基地を持っているが、この二国は完全に自分たちだけで国防を担当できるし、周辺国を助けるという点では信頼に足る存在であろう

●彼らが自分たちで経費を払うか、もしくは自分たちの基地を使って活動する時期が来ている。中国の独裁的資本主義は領土の侵略へと変化していないし、ロシアは中央アジアや東欧をもう支配していない。

●軍の幹部はたちは二正面戦争――これはヨーロッパの陸上と太平洋の海上ということだろうが――を戦える能力の維持についてまだ語っているが、これはトルーマンドクトリンが非合理的にいまだに生き続けていることを証明している。

●われわれが2001年から中東で行っている戦争は、この時代遅れでコストのかかるドクトリンに、さらに賭けを上乗せして突っ込んでしまったのだ。これはベトナム戦争の背後にあったドミノ理論が新しい形で復活したのだが、アメリカという審判員にとって悪い奴(アルカイダ、イラン、北朝鮮)が勝ちそうにな状況だ。

●支持者たちの期待にもかかわらず、オバマ大統領の中東政策は前大統領のそれとほとんど同じようなものとなってきている。彼はイラクから撤退したがアフガニスタンへの介入を深めており、ようやく最近になってそのアフガニスタンから撤退しようというところなのだ。彼はブッシュ政権の最も嫌悪すべき対テロ手法を拒否したが、基本的な政策は変えていない。

●他国と協力する姿勢を示すオバマ氏のジェスチャーは、われわれの同盟国の多くからの見合っただけのコミットメントとマッチしていない。

●冷笑的に見ている人々は、アイゼンハワー元大統領が警告した「軍産複合体」が、アメリカという強欲で帝国主義的な国家の建設に大きな役割を果たしたと論じている。

●ところがアメリカは超大国になるはるか前から繁栄していた。二つの世界大戦の数十年前となる1890年までに、アメリカはすでに世界最大かつ裕福な経済を持っていたのであり、われわれは裕福になるために大規模な軍隊を必要としない。

●実際はその逆で、軍隊というのはわれわれのリソースを使い果たしてしまうものなのだ。

●リアリスト(現実主義者)たちは、「もしわれわれが世界の天然資源(つまり石油)へのアクセスの保護をやめたら、誰もそれを守ろうとしはしない」という。

●ところがそれは本当だろうか?

●たしかにテキサスとアラスカをもつアメリカよりもはるかに多い量のエネルギーを輸入に頼っているヨーロッパ諸国が、すべてを諦めて砂の中に頭を突っ込むようなマネをするとは思えない。そしてアメリカが唯一「必要とされる国家」であるというのは、傲った世間知らずな考え方であろう。

良いリーダーは新しいリーダーを育てるものであり、リビア危機はわれわれの同盟国が多くの貢献を可能なのことを示したのだ。

●アメリカはイランと北朝鮮にたいして核開発を中止するように圧力を与えることができるし、実際に与えるべきであろう。また、国連やIMF、それに世界銀行のような国際制度機関を改革して強化すべきであろう。アメリカはイスラエルを含む小国たちの権利、つまり「恐怖からの自由」を守らなければならない。

●ただしこれらの目標を達成するやり方というのは数多くあるのであり、それらすべてにはアメリカ自身の借金や出費が必要というわけではないのだ。

●国防省の予算のどの部分を何%削るかというような党派間の細かい議論は非生産的だ。しかし共和党/民主党の両党ともコストのかかる国際的な活動を行うというパラダイムから抜け出せず、その間に中国、インド、ブラジル、トルコなどが、アメリカが19世紀に行ったように、富を蓄えて生産性と生活水準を上げているのだ。

●長期的にみれば、この結果は明白だ。

●1945年以降のアメリカは、血を流し、資産を使い、評判を落としている。審判員は必要なのかもしれないが、その定義からしても人気のあるものではないし、勝負に「勝利」することもない。他のプレイヤーたちが立ち上がるのは、おそらくわれわれが舞台から去ると脅した時だけであろう。

●安全保障の重荷を同盟国たちと共有するということは、財政面における必要性だけの話ではない。この共有は世界を「正常な状態」に戻すために必要不可欠なことなのだ。

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アメリカが上のイスメイの言葉に象徴される「二重の封じ込め」を諦めるかどうかというのはまだ微妙なところですが、すくなくとも合理的な説明として今後はこのような議論が米国内で勢いを増すのは確実かと。

また、ロジックとしては「オフショア・バランシング」を唱えるレインとほぼ似たようなものですね。
Commented by sdi at 2013-03-13 01:18 x
>「ロシアを排除し、アメリカを入れて、ドイツを抑える続けるためにある」
訳語が上品になっていますが、内なる脅威と外からの脅威の二つに対する「二重封じ込め」こそがNATOが存続し成功した理由だと、私は考え降ります。
ただ、欧州駐留米軍の存在意義は「ドイツを抑える続ける」よりは「ロシアを排除し」の要素のほうが主要素(皆無ではないと思いますが)ではないでしょうか。
西ドイツ軍(ドイツ連邦軍)の再結成のとき、員数を満たすために志願制ではなく徴兵制を施行しました。アメリカがドイツ連邦軍の量的拡充を望んでも、当時の西ドイツの国内情勢から見てこれ以上の増強は難しかったのではないでしょうか。ただ、アメリカが望んでも欧州諸国の反対して頓挫したかもしれません。
NATOにとって、戦力面で西ドイツ再軍備は不可欠であったのは確かですが、それでもワルシャワ条約機構との戦力格差を埋めるために英米がが欧州(北部ドイツ平原)に地上戦力を派兵する必要があったのです。逆に英米が地上軍を派遣することでドイツ連邦軍の規模の拡大に歯止めをかけた、ということもいえます。でも、それはどちらかというと欧州諸国の意向ではなかったでしょうか。

by masa_the_man | 2013-03-11 10:38 | 日記 | Comments(1)