戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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北朝鮮をつぶして朝鮮半島を統一せよ

さて、東アジアの地政学的な状況についての中国側からの視点による興味深い論説記事を。

著者は中国共産党中央党校の発行する「学習時報」の副編集長です。

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中国は北朝鮮を見捨てよ
By デン・ユウェン

●北朝鮮の三回目の核実験は、中国にとって金王朝との長年にわたる同盟関係を考え直すいいチャンスだ。

●いくつかの理由から、私は北京政府が平壌政府を諦めて、朝鮮半島の統一を進めるように圧力をかけるべきだと考える。

●その理由の第一:イデオロギーを基盤にした国同士の関係というのは危険だからだ。もしわれわれがイデオロギーだけで同盟関係を選んでいたら、今日の中国が西側諸国ともっている関係というのは存在しなかったはずだ。中朝両国はたしかに同じ「社会主義国家」であるが、その間の違いは西側諸国と中国のそれよりも大きい。

●第二の理由:中国の戦略的安全保障における、地政学的な「同盟国」としての北朝鮮の価値というのは、すでに時代遅れになっている点。たしかに冷戦中は北朝鮮は有益な友好国であったが、今日もひきつづき有益であるかどうかは疑わしい。

●たとえば平壌政府の核兵器開発と先制攻撃の能力を獲得したおかげで、アメリカが北朝鮮を国家安全保障上のさらなる脅威だと真剣に思い始めた場合を考えてほしい。

●この場合、中国は「同盟」という理由から北朝鮮を助ける義務があるのだろうか?これは自分に炎を向けてしまうことにはならないのだろうか?もしそうであれば、そもそも「緩衝国」の意味はあるのだろうか?このような場合、中国にとって最も信頼できるのは自国の強さとオープンさであろう。

●第三の理由:北朝鮮が改革を行って開国することは今後も見込めないという点だ。国際社会は2011年に金 正恩が政権を掌握した時にこれから改革を行うかもしれないと期待し、実際にそのような動きも見えた。

●ところが彼が個人的に小規模な改革を行う意志があったとしても、北朝鮮の支配層はそのようなことを彼に行わせないだろう。改革の動きが始まってしまえば政権は崩壊してしまうからだ。遅かれ早かれ失敗する国の政権と、中国が関係を維持しつづけなければならない理由はどこにもないのだ。

●第四の理由:北朝鮮が北京から距離を置きはじめているという点だ。中国側は、現実よりも「朝鮮戦争で一緒に戦った同士である」という視点から中朝関係を見たがっている。つまり「血で固められた友好関係」ということだが、北朝鮮はこのような感情を中国にたいして全く持ってはいない。

●すでに1960年代から北朝鮮は朝鮮戦争の歴史を書き換えており、建国の父である金日成の絶対的な権威を確立するために、中国側の兵士たちが命をかけて現在南北朝鮮を分断している38度線まで国連軍を押し戻したという事実を抹殺しているのだ。

●中国の多くの義勇兵たちの墓地は完全に破壊されてしまい、その功績はすべて金日成に与えられてしまったのだ。北朝鮮の国民にとって「中国との絆」を断ち切ることは、自国の自主独立のひとつの表現であると見なされたからだ。

● 第五の理由:北朝鮮が核兵器を持てば、気まぐれな北の政権がいつ中国にたいして核兵器を使ったブラックメールを行わないとも限らないのだ。

●スタンフォード大学のある学者によれば、クリントン元大統領が2009年に平壌を訪れた時に、北朝鮮は自分たちの経済の失敗を、中国の「自己中心的な戦略」とアメリカの経済制裁に原因があるとして非難したという。

●その時のリーダーである金正日は、六カ国協議から手を引いた動機として、自国の武器開発計画を進めることによって北京から自由になれるからだとほのめかしたという。つまりこれは、アメリカに対する兵器の開発ではないということだ。

●金正日は、もしワシントン政府が手を差し伸べ続けてくれれば、北朝鮮は中国にたいする最強の防護壁となると示唆したというのだ。そして平壌政府は、中国を強要するために核兵器を使えることを明かしたというのだ。

●北朝鮮の核開発の動機の一部には、アメリカと対等な立場になってワシントン政府に妥協を迫ることができるという幻想がある。

●ところが同時に核武装をした北朝鮮は、もし自分たちの要求が通らなかったり、アメリカからよい反応が得られなかった場合には、中国にたいして無理を迫ってこようとする可能性があることは全く否定できない。

●これらの議論を考慮すれば、中国は北朝鮮を見捨てることを検討すべきである。平壌政府を見捨てるための最適な方法は、朝鮮半島の統一を中国から働きかけて進めることだ。

半島統一の遂行は、日米韓の戦略的な同盟関係を弱めることになるし、アジアの北東部からの地政学的圧力を緩和できるのだ。そしてこれは台湾問題の解決にとっても有用となるはずだ。

●その次に良い解決法は、中国の影響力をつかって北朝鮮に親中政権を育てて安全保障の担保を与えることであり、核兵器を諦めさせて普通の国としての経済発展に向かわせることだ。

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「朝鮮統一を進めてしまえ」というのはけっこう過激ですね。

中国と朝鮮半島の微妙な関係をあらわしている、非常に地政学的な意見ですな。この記事からも中国側の様々な動機や事情(歴史問題も含めて)が見えてきて勉強になります。

ただし、「この“統一”は中国の主導の元に行われるべきだ」という前提で書かれている点は要注目。結局のところはこの半島は大国のパワーバランスから逃れられない、という地政学的な事実が見え隠れしております。


Commented by sdi at 2013-03-09 12:58 x
第3~5の理由を見ると「北朝鮮は中国のコントロール下にない」ということを婉曲な形で自白していますね。少なくとも、この記事を書かせた北京の党中央のグループは「現在、自分たちはコントロールできない」「コントロールする労力と代価を払うくらいなら見捨てよう」と考えているのではないてじょうか。
彼らは、半島を自分達主導で韓国に統一させた後ならコンロールできる自信がある、見ることもできます。少なくとも、北朝鮮を再度コントロール下におくよりも良い結果が得られる、とふんでいるのでしょうね。
なんだか取らぬ狸のなんとやら、という言葉を連想しますが。
Commented by えんき at 2013-03-09 15:12 x
中国の冊封を受けた韓国が朝鮮半島を統一するというシナリオは、既に韓国が中国とFTAや軍事協定を結んで擦り寄っている現状を考えると、十分実現可能な話です。

統一された朝鮮半島を支配下に置く事は、中国にとって多大な利益があります。地球寒冷化の直撃を受ける旧満州地方で発生する難民の棄民先として、朝鮮半島は最適だからです。その後、この中国人達に押し出されるようにして、韓国人が日本列島に押し寄せてくるでしょう。この時までに中国と統一朝鮮の核恫喝に耐えうる体勢を構築していなければ、我が国は先祖伝来の国土を侵略者に明け渡さざるを得なくなるでしょう。
Commented by だむ at 2013-03-09 15:55 x
北朝鮮が中国のコントロール下に無いとすると、北朝鮮が核を手放す可能性は無い。なおかつ、表面的にはサムスンヒュンダイの財閥が繁栄しているが、物価上昇と賃金下落・格差拡大がひどくなっている韓国の貧困層では北朝鮮支持が次第に広がっている。

となると半島統一は確かにあるかもしれんが、それは北朝鮮主導での統一になるんじゃないかなあ。
Commented by 秋の空 at 2013-03-09 18:10 x
在米中国人と過去10年近く朝鮮半島問題を話し合う機会が数多くありましたが、彼ら(中国人)が終始一貫、異口同音に発する本音が、『北朝鮮より南(韓国)のほうが御しやすい』です。国際政治学者の大磯正美さん(www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/5562/column/column-menu.html)が書かれた、過去二ヶ月のコラム、『今や大木となった中韓の中華同盟』や『北朝鮮の核に鈍感な日本』と、今回の論文、読み比べながら、改めて面白い事態だなと思っております。えんきさんのおっしゃるとおり、シナからみたら、十分あり得るシナリオなんでしょう。それにしても、聖徳太子の昔から、大東亜戦争、冷戦を経て、シナと朝鮮半島に振り回されてきた日本、地政学的にこれほど面白い国はないんじゃないでしょうか(笑・・・笑っている場合じゃないか?・・・苦笑)。『北朝鮮は日本に擦り寄ってくる、それで動く金にたかる奴らがもう蠢きはじめてるぞ』といったのは評論家の青木直人(aoki.trycomp.com/)さんでしたな。あり得ない話ですが、北と日本が同盟を結んだらシナと韓国は困るでしょうな(笑)
Commented by ちゃんきり at 2013-03-11 08:30 x
第二の理由部分は中国を米国に、北を日本に置き換えることも出来ますね。やはりコントロールする側というのは似通った思考を持つものなんですかね?それにしてもいつも有意義なネタばかりで有難いです。煽りじゃないですが毎日楽しみにしています(笑)
Commented by 石原 at 2013-03-13 15:42 x
中国の影響下による半島の統一が大中華圏成立のひとつの要素だと考えているのでしょう。半島の先に広がる列島人たる我々にとっては脅威となるでしょう。それまでに列島の南に繋がる沖縄、台湾、フィリピンが現在の状況を持ち堪えることができるかが問題となるように思います。尖閣列島を失えばこの列島線に穴が開くことを意味する。日本としては尖閣を確保し、台湾を引き止めなければ孤立することになる。半島では韓国が経済的に中国への傾斜をますます強めているので、いずれは経済的には中国経済圏に取り込まれてしまう。日本としては半島と大陸への関与を適当な線に留める必要がある。白村江以来日本が半島や大陸に関与してうまくいったケースはない。日本の生命線は半島ではなく、列島線の維持にある
Commented by ばん at 2013-03-16 16:22 x
お久しぶりです。ここ何回かはふざけたレスでブログ汚しましたこと、お許し下さい。

近頃急に「石原莞爾」と言う人物にはまっています。この人の評価は様々でしょうが、今のところの私は「明治以来、日本がはまってしまったアジア主義と欧米主義との対立のなかでアジア主義の亜流を唱えた人」といったところです。

で、未だに日本ではこのアジア主義(戦後単なる中韓すりより主義になってるかも知れませんが 苦笑)と欧米主義(戦後これまた単なるアメリカにおんぶにだっこ主義になってるかも)の対立が延々と続いているように見えるのです。その中で、このエントリと上記の「
アメリカは同盟国たちに仕事をさせろ」は興味深い物でした。
上記の推察が当たるならば、これからの日本はかなり厳しい道を歩かされることになるでしょうね。
by masa_the_man | 2013-03-09 11:56 | 日記 | Comments(7)