日中衝突は第一次大戦前夜だ?!
2013年 02月 07日
さて、昨日のTwitterでも少し触れた、FTのラックマンの日中紛争勃発を予測した記事です。
以前ここでも紹介したナイの記事と合わせて読んでいただくと面白いかと。
それにしても一九一四年アナロジーというのは、冷戦時代から頻繁に使われておりますね。日本ではこの辺に詳しい人が少ないのであまりポピュラーじゃないですが・・・・。
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一九一四年の陰が太平洋におちる
by ギデオン・ラックマン
●第一次大戦を描いた白黒映画のようなシーンというのははるか昔のことのように思える。ところが「現在の大国は一九一四年の時の戦争に突入することはありえない」とは断言できない。
●中国と日米間で高まる緊張は、ほぼ一〇〇年前に発生した、このおそるべき大災害と似通った点をもっているからだ。
●もっとも明らかな潜在的発火点は、日中間で未解決の、尖閣諸島の領有権をめぐる問題である。
●ここ数ヶ月間で、この二国の航空機と船はこの諸島の近くでシャドーボクシングを行っている。これを警戒したアメリカは、去年の十月末に北京と東京にたいして、四人の米外交の重鎮を送り込んでいる。
●そのメンバーには、ブッシュ政権で安全保障会議を主宰したスティーブン・ハドレーと、ヒラリー・クリントンの国務省のナンバー2であったジェームス・スタインバーグが含まれている。
●この超党派の米国特使たちが明確にしたのは、「中国の尖閣への攻撃はアメリカが担保している日本への安全保障への挑戦として行動せざるを得なくなるかもしれない」ということだった。
●一九一四年の時と同様に明確な危険として挙げられるのは、小規模な事件が同盟のコミットメントを引き起こして広範囲な戦争に拡大する可能性があるという点だ。
●アメリカ側の特使たちはこのリスクについて十分すぎるほどよくわかっていた。
●この四人のメンバーのうちの一人であったハーバード大学のジョセフ・ナイはこういっている。
●「われわれの中で、一九一四年の例を引き合いに出して議論した。誰も戦争を望んでいないのはわかっているが、それでもわれわれは日中双方にたいしてコミュニケーションの失敗やアクシデントについて注意するよう促した。抑止というのは、合理的なアクターたちの間では大抵の場合には効くものだ。ところが一九一四年の時の主なプレイヤーたちも、実は全員が合理的なアクターたちだったことを忘れてはならない」
●キューバ危機についての古典的な研究(『決定の本質』)を書いた、ナイ教授のハーバード大学の同僚であるグラハム・アリソンも、計算違いによる戦争の危険性があると考えている。
●「一九一四年の時のメカニズムは非常に役立つものだ。セルビア人のテロリストが誰も名前の聞いたことのない大公を殺したことで、最終的には参戦したすべての国々を破壊させてしまった大戦争を引き起こすなんて、一体誰が想像しただろうか?私の見解では、中国の指導部はアメリカにたいして軍事的に対抗しようとするつもりはまだないはずです。しかし中国や日本の頭に血が上ったナショナリストたちはどうでしょうか?」とはアリソン氏の弁。
●このような「頭に血が上った」人々が、現場レベルにいる可能性はある。
●二〇一〇年九月には中国の船長が日本の海保の船に自分の漁船をぶつけた事件が発生したことがあるが、後になってから、当時この船長が酔っぱらっていたことが判明している。
●この時の日本政府は、かなり融和的なアプローチをとっていた。しかしアメリカは、日本の現政権の中には、中国に対決することもいとわないようなタカ派のナショナリストが溢れていることを危惧している。
●新しい首相である安倍晋三は、第二次大戦の時の閣僚(岸信介)の孫であり、日本が当時の罪滅ぼしをするための「謝罪外交」を拒否した人物だ。
●日米安保というのは日本にたいする安心の提供という意味があるのだが、それでも日本の政治家がこのおかげで不必要なリスクを取ろうとする危険があるのだ。
●何人かの歴史家は、ドイツ政府は一九一四年の時点で「より強力な敵に囲まれる前に、なるべく早めに戦争をしておかないとまずい」という結論を出していたと論じている。
●同様に、何人かの日本研究者たちは、安倍政権内のナショナリストたちが「日中間のパワーのギャップが拡大する前に、まだアメリカが太平洋で支配的な軍事力をもっている現在の時点で中国と戦っておくべきだ」という考えに傾くことを心配している。
●日本の政治における「右傾化」にたいするアメリカの懸念は、同様の傾向が中国にも見られることから倍増している。
●中国は100年前のドイツのような台頭する国家であり、既存の大国が自分たちのことを押さえ込もうという意志を持っていることを恐れている。
●現在の中国の父である鄧小平は、「能力を隠して時間を稼ぐ」という対外政策の格言を追求していたが、彼の世代の人間はすでに世代交代で去っており、新しい世代は自信をつけて自己主張が強いのだ。
●また、人民解放軍も対外政策の決定に大きな影響を与え始めている。
●第一次大戦前のドイツとの比較によって、驚くべきことが見えてくる。この時はオットー・フォン・ビスマルクの熟練したリーダーシップが、戦争が発生する前には、はるかに稚拙で不器用な政軍のリーダーシップにとってかわっていたのだ。
●当時のドイツの支配層も、民衆からの民主化のプレッシャーを同じように脅威として感じており、その関心をそらすためにナショナリズムに訴えていた。もちろん中国のリーダーたちも、共産党の正統性を強化するためにナショナリズムを使用している。
●唯一の救いとでも言えるのは、中国の指導者層たちが長年にわたる大国の台頭について、熱心に研究をしており、ドイツと日本の失敗から学ぼうと強い決意を持っていることだ。
●われわれが核兵器の存在する世界に行きているという事実も、一九一四年の危機を繰り返すことはないという一つの論拠にはなる。
●もし事態が悪化しても、日米安保には解釈の余地がある。この条約の第五条は一般的にアメリカが軍事的な手段によって同盟国を守ることが約束されていると解釈されている。
●ところが実際は、日本が攻撃された時に「共通の危険に対処するよう行動する」と書かれているだけだ。
●このような曖昧さは、もし中国が「単なるアメリカのブラフだ」と言うようになれば危険だともいえるが、これは危機の際には役に立つこともあるのだ。
●一九一四年七月の時点で、当事国のリーダーたちは誰も望んでいない戦争に向かわざるを得なくなっていたことで無力さを感じていた。
●そしてこの歴史を研究することで、中国、アメリカ、そして日本の人々は、二〇一四年に同じような運命に陥ってしまうことを回避できるかもしれない。
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日本の「右傾化」をここまで心配してくれているのはある意味でありがたいような、そうでないような(苦笑)
最近のブレマーの論説記事にもありましたが、この辺の「日中衝突論」は騒がしさを増してますね。

>「日中間のパワーのギャップが拡大する前に、まだアメリカが太平洋
>で支配的な軍事力をもっている現在の時点で中国と戦っておくべきだ
>」という考えに傾くことを心配している。
ナイは自分たちの足元すら揺らいでいるという認識ないんですかねえ
まあいざとなったら本当に太平洋を中国と2分するだけなんでしょうかね
なんにせよ安倍さんが経済再生に傾注するのは最も合理的ですね
富国なくしては強兵も無理ですからね


安部政権樹立による経済再生の為の金融政策変更は、日中の宣戦布告を意味します。それによって中国からの外資の逃避が起こり、バブル経済崩壊が如実となるからです。日銀が10年以上の長きに渡りデフレ誘導し続けてきた所以は、戦争回避の為でもあったのです。でも、もうそれも限界となったのです。我々日本人は日本文明存続の為、断固戦わざるを得なくなったのです。

本当の問題はむしろ戦争が終わった後に訪れるでしょう。
どのメディアでも中共崩壊後の難民の発生について言及したものを見たことがありません。
難民の大量流入を許して国を乗っ取られてはなんの意味もありません。
戦争に勝利したとしても、また戦術で勝って戦略で負けることになります。
移住先の地元住民を少数派に追い込むランドパワー戦略こそ、最大の脅威です。

セビリアとオーストリアの戦争が一気にWWIに拡大した最大の理由はドイツ帝國の反応です。正確にはロシアが動員を始めた時点で、シェリーフェンの戦争計画が「よーいドン」でスタートして、ベルギー経由でフランスに突進する以外の選択肢をドイツ帝国が持たなかった。現在の日中を囲む諸国でそこまで戦争準備している国は存在しない。
私はむしろ、この騒がしさが「適当なバックパッシング先を見つけた。なんとしてもこいつをパ゛ックキャッチャーに」的は思惑の産物に見えます。

FTの記事における安倍首相へのプロパガンダ、さらにはFTを含む英米紙へのシナの宣伝工作、戦闘行為ぎりぎりの挑発行為の繰り返しによる自国権益の既成事実化、中西輝政京大名誉教授の言う国連敵国条項を利用したシナの外交政策。兵頭二十八氏の『北京は太平洋の覇権を握れるか――想定・絶東米中戦争』にあるシナ指導者の共産党政権崩壊後を見越した生き残り策。私はナイ
論文を含めて第一次大戦より『第二次世界大戦(大東亜戦争)未だ終結せず』のほうが実感があります。奥山さんのサイトの活発な議論で勉強させてもらいたいです。

日本のナショナリズムだけを原因みたいに言うのは、中国を叩く勇気がない、日本をたたくほうが安全と言うのがあるのでしょう。

その最大の理由は、①お前らはフォークランド戦争を忘れたのかということ、と②ヨーロッパ諸国(イギリスを含めるのは異論あるかも知れぬが)が自由主義の優等生である日本と共産主義・膨張主義の中国をまるで同じメンタリティを持つ国のように扱っていること。
この論での米国知日家の発言が本当であれば、日米安保条約は内容を問われ今後確実に変質していくだろう。


http://walt.foreignpolicy.com/posts/2013/02/08/good_news_world_war_i_is_over_and_will_not_happen_again
ウォルトはむしろ日中が限定戦争にとどめられると思うことの方が心配なようですね。ぼくは彼の第一次大戦の解釈をサポートします。

>自分たちの足元すら揺らいでいるという認識ないんですかねえ
イギリス人ですからねぇ
>いざとなったら本当に太平洋を中国と2分するだけ
選択肢があるというのは強い。
>なんにせよ安倍さんが経済再生に傾注するのは最も合理的ですね
富国なくしては強兵も無理ですからね
パワーの源泉です。コメントありがとうございました
>中国からの外資の逃避が起こり、バブル経済崩壊が如実となる
これは今後の経過が気になるところです。
>日銀が10年以上の長きに渡りデフレ誘導し続けてきた所以は、戦争回避の為でもあったのです
日銀にどこまでその「意図」があったかどうだかはわかりませんが・・・・
>断固戦わざるを得なくなったのです。
まあどこかの時点で衝突はあるでしょうなぁ。コメントありがとうございました
>私が見るに北京の本当の脅威とは軍事でも経済でもなく、移民や難民です
それと「環境汚染」
>どのメディアでも中共崩壊後の難民の発生について言及したものを見たことがありません
北朝鮮の場合はありますがねぇ
>移住先の地元住民を少数派に追い込むランドパワー戦略こそ、最大の脅威です。
たしかに。コメントありがとうございました
>ドイツ帝國の反応です。正確にはロシアが動員を始めた時点で
準備してましたなぁ
>現在の日中を囲む諸国でそこまで戦争準備している国は存在しない。
これですね、キーポイントは。
>私はむしろ、この騒がしさが「適当なバックパッシング先を見つけた。なんとしてもこいつをバックキャッチャーに」的は思惑の産物
一理あるかと。コメントありがとうございました
>私はナイ論文を含めて第一次大戦より『第二次世界大戦(大東亜戦争)未だ終結せず』のほうが実感があります。
なるほど。たしかに国際秩序の面からいえばこっちに直結しておりますからね。コメントありがとうございました
>結局、アメリカは自分達がどうしたら無関係でいられるのかという事で、頭がいっぱいなんじゃないですかね。
というか、無傷のままいかにパワーを得られるか、というほうが本音に近いかと。まあどの国もそうなんですが(笑
>日本のナショナリズムだけを原因みたいに言うのは、中国を叩く勇気がない、日本をたたくほうが安全と言うのがあるのでしょう。
それはありますね。コメントありがとうございました
>FTの中国寄りの論評はロビーイングによるものか日経における単なる中国好きと同様の経済紙における雰囲気そのものなのか
日経と近いスタンスかと。彼らも香港もっていたわけですから。
>①お前らはフォークランド戦争を忘れたのかということ、と②ヨーロッパ諸国(イギリスを含めるのは異論あるかも知れぬが)が自由主義の優等生である日本と共産主義・膨張主義の中国をまるで同じメンタリティを持つ国のように扱っていること。
たしかに(笑
>この論での米国知日家の発言が本当であれば、日米安保条約は内容を問われ今後確実に変質していくだろう。
いや、日本側に変質させるだけの意志があるかどうかというところが一番重要でしょう。変質させようという気がなければ同じです。コメントありがとうございました
>この辺の議論はウォルトがまとめてくれました
さっそくエントリーに使わせいただきました!ご紹介いただきありがとうございます。
>ぼくは彼の第一次大戦の解釈をサポートします。
なるほど。コメントありがとうございました