安倍首相の「安全保障ダイアモンド」識者分析比較 |
さて、数日前のエントリーで紹介した安倍首相の「安全保障ダイアモンド」ですが、国内メディアではサンケイと東京新聞、そしてなぜかアサヒ芸能(!)が報じていたらしいので、とりあえずここでは東京新聞の記事の中にあった識者の意見をメモ代わりにまとめておきます。
以下は新聞記事からの抜き書き。
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●立命館大学の宮家邦彦客員教授:「日本は米国、インド、豪州と民主主義の価値観を共有している。中国に尻込みしない民主主義国家をつなぎ、太平洋での自己主張が強まった中国に対し、現状の海洋秩序を守らせようとしている。(自由と繁栄の弧との違いは)戦略の切り口が海か、陸かの違いだ。自由と繁栄の弧が唱えられた当時は、日本がテロ対策をめぐり、イラクやアフガニスタンを支援し、ユーラシア大陸の東西を結ぶ価値観外交に重点が置かれていた。今は中国の海洋進出が大きな問題で、海を意識した構想を立てなければならなくなった」
●東京財団の渡部恒雄上席研究員は「民主主義の価値観を共有しない、と言われることは中国からすればいやなこと。首相は、ダイヤモンド構想の方針を示して中国に圧力を加え、自由主義国が海洋秩序を維持する枠組みに加わらざるを得なくさせる作戦だろう。そうすると、中国は尖閣諸島をめぐる行動も制限されるようになる」
●双日総合研究所の吉崎達彦副所長:「海洋国家である日本の価値感に裏打ちされたものの見方。セキュリティー・ダイヤモンドという言葉も斬新だし、コンセプトで闘うとの発想は今までの日本にはなかった。首相の発言としてはやや軽い印象があるが、政治家・安倍晋三個人の発言なら非常に面白い・・・日本も世論戦でカウンターパンチを出せるんだと、中国に意識させることができる」
●佐藤優・元外務省主任分析官は「ロシアは静観するだろう。しかし、(中国を牽制する意味で)腹の底では歓迎するはずだ」との見通しを示した。
●岐阜女子大南アジア研究センター、福永正明センター長補佐:「『日印の関係が、日米関係を超えるわけがない』というのがインドの一般的な考え方。インドからすれば、日米を基軸としたものよりも東南アジア諸国連合(ASEAN)との関係や自由を中心とした別の枠組みを考えていくだろう。日米同盟の強化や対中政策のためにインドを犠牲にしようとしているのでは、と考えている識者もいる」
●慶応大学の渡辺靖教授:「構想自体は悪くないアイデア、だが日中関係は今、非常に危険な領域に入っている。構想は、『中国にとって脅威になる。拡張路線を進めなければならない』との口実を与えかねず、逆効果になる可能性がある。並行して中国政府の中枢にパイプをつくるなど地道な努力の積み重ねによって、関係改善を図るべきだ。いざという時に落としどころを見つけるのは政治家同士のコミュニケーションなのに、それができていない」
●外交評論家の孫崎亨氏:「インドの中国との貿易量は日本の何倍にも当たり、国の重要度は中国の方がはるかに上。現実的に考えれば、できるとは思えない。日米は価値が共通だとか、中国と連携できるわけがないと主張するが、それは米国の軍産複合体が使うロジック。米国は自国のカネを使わずに、日本などに負担させたいだけのことだ」
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私としてはどちらかというと今回の大戦略は「悲観的なもの」という立場。逆にハッタリを効かせていかないと埋没する、という危機感の現れだと思っております。
それにしても構想はいかにも地政学的。やっぱり大戦略と地理というのは切り離せませんから。