戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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ジョン・ボイド

今朝の横浜北部は朝からすっかり晴れておりまして、気温もわずかに暖かめのような。

さて、今年の目標として「毎日一回ブログを必ず更新する」ということでしたので、さっそく実行を(笑

今年最初のネタを何にしようかと考えていたのですが、この年末年始で「戦略理論」について調べているうちにジョン・ボイドに関する本を読みたくなりまして、手元にあった資料を読み返していたのですが、いくつかの興味深い記述がありましたのでみなさんと共有を。


ジョン・ボイドといっても俳優ではなくて、アメリカのパイロットであり、朝鮮戦争でF-86で戦果を挙げた後に戦闘機F-15やF-16の開発に理論面からたずさわり、退役後はOODAループという戦略理論で有名になった戦略思想家でもあります。

この人物なんですが、調べてみるとなかなか面白い人物でして、たとえば一番気に入っていた戦略本は孫子の『兵法』で、とくに勢編の中にある「凡そ戦いは、正を以て合い、奇を以て勝つ。故に、善く奇を出す者は窮まり無きこと天地の如く、竭きざること江河の如し」という記述を、第二次大戦のヨーロッパ戦線で活躍したパットン将軍の発言になぞらえて理解しております。

ボイドは孫子の英語版を最終的に七種類も持っておりまして、最も好んで使っていたのがサミュエル・グリフィスの訳トーマス・クリアリーのものだったとか。

また、先日のエントリーでご紹介したような孫子とクラウゼヴィッツの違いについてですが、彼はこの二人の論者の決定的な違いを、「戦略の階層」ではなくて、以下の2点にあると理解していたということです。その2点とは、

1、クラウゼヴィッツは戦いにおいて敵を大規模な「決戦」に誘い込みたいと考えていたのにたいして、孫子(孫武)は勝負の前に敵を失敗させようとしていたこと。

2、クラウゼヴィッツは味方の「摩擦」をいかに最小限に抑えるかを考えていたのにたいして、孫子はいかに敵の「摩擦」を最大化するかを考えていたということ。

と見ております。

つまり彼の場合は「階層」の上下ではなく、あくまでも戦術・作戦レベルにフォーカスしていて、このレベルにおける勝利の法則を徹底的に探ろうとしていたということがよくわかる分析かと。
Commented by えんき at 2013-01-02 22:03 x
明けましておめでとうございます。毎日更新とは豪気ですね。

ボイド氏の説明を読む限りでは、戦術レベルに於いて、クラウゼヴィッツは徳川家康、孫子は豊臣秀吉に似ています。ところで、空軍戦略家が陸軍戦略に傾倒しているのは意外でした。もちろん、応用が利かない物ではありませんし、そもそも空軍戦略の歴史自体が浅いのというのもあるのでしょうが、それでも畑違いは否めないような気がしました。
Commented by sdi at 2013-01-03 17:42 x
>クラウゼヴィッツは戦いにおいて敵を大規模な「決戦」に誘い込みたいと考えていたのにたいして、孫子(孫武)は勝負の前に敵を失敗させよう

前者の考え方は「いかに損害を受けようともそれを上回る損害を会戦で敵に与えて勝つ」ことが許容される社会とそれが支える軍隊が必要です。後者は「たとえ会戦に勝とうとも、味方に多大の損害を受ける」ことが許容されにくい社会が成立する背景にあります。他にも文化や時代など違いはありますが、軍隊が「公共財」か「私財」かという点も影響しているのではないでしょうか。
by masa_the_man | 2013-01-02 11:30 | 日記 | Comments(2)