戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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習近平の発言を「戦略の階層」で

今日の横浜北部は朝から快晴でした。昨日よりはひどくはなかったですが、それにしても寒かったですよね。

さて、われらが習近平総書記の発言を、「戦略の階層」を使って軽く分析を。

その前にまずお断りしておきたいのは、現在の北京政府の上層部の発言というのは、完全に「建前」であるという点は否定できないということです。

それでもこのような「建前」を分析するのにどのような意味があるのかというと、それは彼らの発言にはそれでも国民全体の願望というか、ある方向へ誘導したいという、一つの動機や動因のようなものが代弁されているからです。

まずはウェブマガジンであるWedge Infinityから、元中国人の中国ウォッチャーとして名高い石平氏のコラムの文の引用。

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そして習総書記自身、11月29日、6人の政治局常務委員らを伴い北京市の国家博物館を訪問して中国近現代史の展覧会を参観した後に、「アヘン戦争から170年余りの奮闘は、中華民族の偉大な復興への明るい未来を示している」などと国民に語りかけた。約10分の演説で、彼は「中華民族」や「(中華民族の)偉大な復興」という言葉を合わせて20回近く連呼した。11月15日の総書記就任披露目の内外会見でも、彼の口から頻繁に出たキーワートの1つはやはり「民族の偉大なる復興」なのである。

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そして次の引用は、中国系のニュースサイトから。

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わが民族は偉大な民族だ。5000年余りの文明発展の過程で中華民族は人類文明の進歩に不滅の貢献を果たした。近代以降わが民族は数々の苦難を経験し、中華民族は最も危険な時期に到った。その時以来、中華民族の偉大な復興を実現するため、無数の人徳ある志士が奮起し、抗争したが、1回、また1回と失敗した。中国共産党は結党後、人民を団結させ、率いて、先人の屍を乗り越えて後に続き、粘り強く奮闘し、貧しく立ち後た旧中国を日に日に繁栄し強大になる新中国へと変え、中華民族の偉大な復興にかつてない明るい展望を開いた。

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他にも防衛研究所のレポートからの引用。

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胡錦濤政権が強調していた「平和発展」も「中国の特色ある社会主義の内在的要求」(『人民日報』
2011/11/29)と位置付けられ、中国の発展と台頭が他国の脅威とならないことが再びアピールされた。また習近平自身も、12 月 5 日の外国人専門家との座談会において「中国は覇を唱えず、拡張しない」として平和発展の道を強調している(『人民日報』2012/12/6)。なおこれと関わる新たに加わった言葉として「新型大国関係」がある。これは 2012 年 5 月の米中戦略・経済対話において胡錦濤が米中関係について使用した言葉である。この概念は、中国が大国となった現実を反映し、相互の利益を尊重しつつ、かつ歴史上繰り返されてきた既存の大国と新興国家との摩擦・衝突を回避しようとすることを目指している

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最後はサンケイの社説から、

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胡錦濤総書記が中国共産党大会で、「国家の海洋権益を断固守り、海洋強国を建設する」と表明した。

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というもの。

これらを踏まえるとどのようなことがわかるのでしょうか。

ここで例のごとく「戦略の階層」を使ってみましょう。

この概念で最も重要なのは、階層のトップに位置する「世界観」というもの。なぜならこのレベルは、全ての階層レベルに最も大きい影響を与えるからです。

そして中国の公式文書や要人の発言というのは、どちらかといえばこのような上部の階層を強調するようなものが多く、日本の政治家などと比べるとかなり明確に「世界観」が判明しやすいのです。

たとえば国家の方針、つまり「政策」レベルを見てみましょう。

上記のコメントから引っかかるキーワードは、「中華民族の偉大なる復興」というもの。ようするにパワーの拡大傾向。これには経済だけでなく、軍事力も含まれてくるのは当然。

しかしもっと重要なのは、彼が「アヘン戦争以来の」と「復興」という言葉を使ったところ。

これは戦略の階層でいうところの「世界観」のレベルだが、彼らは基本的に日本を含む西洋列強から19世紀後半から20世紀前半にかけて「辱しめ」を受けており、これからそれ以前の「偉大な状態」に戻したいという欲望を見せているわけです。

いいかえれば、彼らの「本来あるべき姿」というのは「アヘン戦争前」の偉大な帝国なのであり、現在の現状打破プロセスは単に「元の状態」に戻るだけという認識。

これを別の言葉でいえば、「失地回復」、つまり「レコンキスタ」であって、失われたものをただ取り返しにいくだけなのだから自分たちには絶対的な正義がある、ということになります。

すると、彼らは「平和的な台頭」や「新型大国関係」なと言いつつも、その「取り返すべきだ」という世界観と他国との関係における大戦略は矛盾することになります。ここでジレンマ発生。

また、「海洋強国を建設する」というコメントは「大戦略」のレベル。これは戦時の戦略のみならず、貿易を含む平時の戦略が含まれてくるからです。

ということで簡単に分析してみました。ご参考まで。

さらに深い分析については「戦略の階層」のCDを聴いていただきたいのですが、個人的にはこの概念は本当に使えるなぁと実感する今日この頃です。
Commented by sdi at 2012-12-28 00:13 x
中国が取り返そうとしているのは領土だけでなく、アヘン戦争から北清事変にいたる過程で喪われた中華思想を正当化する根拠というか世界の価値観を定める主導権ではないでしょうか。
でも国内情勢を見ていると共産革命が起こってもおかしくない状況なんですが、足元を見ているんですかね。
Commented at 2012-12-28 09:37 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
by masa_the_man | 2012-12-27 22:55 | 日記 | Comments(2)