中国の“リアリスト”曰く、米中は衝突する! |
布団から出るのが厳しいわけですが、イギリスでもカナダでも、これほど家の中が寒い経験はなかったような気が。
さて、メルマガのほうにも載せましたが、朝日新聞がなかなか面白い人物にインタビューをしましたのでその要約を。
「自称」と朝日新聞はつけてますが、「リアリスト」の意味がわかっているかは極めて怪しいかと。
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閻学通・清華大当代国際関係研究院長に聞く
中国・強硬派〜中華民族の復興で米と衝突は不可避 「信頼なき協力」を
●中国と米国との競争は不可避だ。今後十年間でどんどん激しくなるが、軍事衝突というよりは、あらゆる面での競争になる。
●理由は簡単。中国の目標はかつて占めた国際的な地位。かたやアメリカは世界唯一の「超大国」としての立場を譲つもりはないから衝突する。
●過去の中国は弱かったが、それでも米国のリーダーシップに従ってきたわけではない。
●中国は米国と軍事衝突を起したくない。ところが米国が「アジア回帰」で東アジアの同盟ネットワークを拡大している。これは中国の孤立化を狙ったものだ。
●アメリカは表向きには否定しているが、それを中国では誰も信じてはいない。
●TPPは政治目的を隠すための経済的な旗印だ。できるだけ多くの味方をつけて中国との競争に備えるためのものだ。
●アメリカのアジア回帰はたしかに成功している。おかげでフィリピンとミャンマーは中国にたいして急に敵対的になった。
●米中両国は「相互信頼」という幻想は捨てて、「信頼なき協力」を追求すべきだ。過去には出来たし、そうしなければ「衝突」を管理できない。
●いまの米中間は相手を直接殴り合うボクシングではなく、むしろ得点を奪い合うフットボールのようなものだ。激しく得点を争っても、武力行使はない。
●米中間は価値観で争っている面もある。古代から中国には、欧米の近代的な価値観よりも偉大なものがあった。
●たとえば「公平」だが、欧米の「平等」より素晴らしい。「正義」は「民主主義」より高い。バスで真っ先に席につくのが「平等」だとすれば、お年寄りに席をゆずるのが「公平」だ。
●たしかに中国国内ではそのような価値観が実践されておらず嘆かわしいかぎりだ。いまの拝金主義はダメ。
●いままでは米国の一極支配だったが、これからは中米の二極体制に移行していく。経済的利益よりも安全保障の利益が優先されることになる。
●米中だけでなく、日中の衝突も不可避だ。
●米国がまだ中国より強大なのに対し日本は中国より弱い。この現実を日本は受け入れないとマズいことになる。
●日本が「アジアの一国」として振る舞えば中国も協力する。ただし西欧の一員とみなせば色々と面倒なことになるはずだ。
●尖閣問題では「棚上げ」に代わる新たな原則をみつけるべし。ただし今後は新しい政権が互いに出てくるため、事態は来年に向けて沈静化する方向にある。
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歯に衣着せぬ、まさに「ストレート・トーク」な方で、個人的には非常に好感が持てます(笑
彼の意見の中で「おや」と思ったのは、やはりなんといっても中国の「古代思想」を、(無理矢理)現代に結びつけようと努力している姿勢でしょうか。
つまり彼は、今後の中国の台頭のための大戦略における「価値観」の重要性をよくわかっているわけですね。
このような観点から書かれた彼の本は、すでに英訳されております。私もさっそく購入。
ちなみにちょっと宣伝になりますが、彼のような「リアリズム」を理解するために以下の二つのCDが極めて役に立つかと(笑
☆「これから『リアリズム』の話をしよう」
S・ウォルトの「米国世界戦略の核心」解説CD:リアリズムの立場から小国がアメリカにたいして仕掛けている戦略を列挙して解説。実は日本も戦略的だったという意外な姿が浮かび上がる!?
☆「1時間でわかるミアシャイマーの理論」
ミアシャイマー「大国政治の悲劇」解説CD: 強固なリアリズムの立場から米中衝突を予測。閻学通はこの人物の中国版と言えるかも。大国は拡大するという「攻撃的な理論」を豊富な歴史の例を使って論証。