戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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日本が最新の経営戦略論の元祖だった?!:前編

今日の横浜北部は午前中は大雨でして、午後からようやく小雨に変わりました。

さて、久々に戦略に関する小ネタを。

すでにご存知の方もいらっしゃると思いますが、今週から夕刊フジで週一回の連載コラムを始めましたが、これらの原稿を書く合間に色々とイギリス時代に入手した本を引っ張り出して読み返しておりまして、数日前に手にしたのは核戦略についての本。

ここで面白い記述がありまして、それを読み進めているうちに一つの興味深い歴史的なつながり(と言ってもかなり無理があるかもしれませんが)を発見。

それをここで簡単にご紹介しようかと。

アルバート・ウォルステッター(Albert Wohlstetter)といえば冷戦時代の初期を代表する、泣く子も黙る核戦略の理論家。

ネオコン派の頭領的な存在としても知られておりまして、あのリチャード・パールの義理の父でもあります。

元々は数学者でありまして、妻がいたランド研究所(RAND)に研究者として一九五〇年代に入ってからは核戦略では大きく二つの功績を残しました。

一つは「基地研究」(the Base Study)と呼ばれるものでありまして、これはSAC、つまり戦略航空軍団が、あまりにも当時の敵であるソ連にたいして攻撃的なポジションにあり、自分たちの基地が敵の攻撃に脆弱であることを自覚していない、と批判したものです。

このときに使われたのが理系のウォルステッターならではの「システム分析」というものでして、彼はこのアプローチを使って全てを数値化することにより、SACがいかに攻撃に弱いのかを説得力をもって示したわけです。

そしてウォルステッターの二つ目の功績が、抑止論についての新しいアイディア。

この当時もてはやされていたのは、「相互確証破壊」、いわゆるMADという概念であり、これは単に敵に最初に攻撃(第一撃)を受けても、そのあとの敵の都市等にたいする「報復能力」(第二撃)を備えておけば相手は抑止できる、というもの。

ところがウォルステッターは、これではただ単に敵味方の核兵器の「能力」(capability)だけに焦点を当てているだけで、まったく相手を抑止できない、現実的ではない、と批判しました。

その代わりに彼が強調したのは何かというと、「能力」と同じくらいに重要なのが「信頼性」(credibility)というもの。

つまり「抑止」には空の脅しではなく、相手に「核兵器が本当に使用されるかも!」と思わせることが肝心で、この「抑止」(deterrence)と「実現可能性」(probability)という二つをわけて考えることはできない、としたわけです。

このウォルステッターの「新しい抑止論」ですが、実はこれには日本が関係してきます。というよりも、より正確にいえば、日本の真珠湾攻撃を研究した自分の奥さんの意見が関係してくるわけです。

実はウォルステッターの奥さんロバータは、ウォルステッターよりも前にRANDにいた才女でして、日本の真珠湾攻撃について素晴らしい研究書を書いております。

この奥さんの本を読んだウォルステッターは「代替リスク」(alternative risks)という新しい概念を考えつきまして、「日本にとっては攻撃しないリスクのほうが、攻撃するリスクよりも高かった」ととらえます。

ではこの時に日本を「抑止」するためにどうしたらいいかというと、日本の指導者層に対して、攻撃が行われるよりも前の時点で「もし攻撃したらすぐに報復攻撃をしますよ」と言っておくべきだった、というのです。

この「代替リスク」という概念は「際どい恐怖の均衡」(The Delicate Balance of Terror)という彼の超有名論文の中心的なアイディアになったわけです。

ここまで書いて時間がなくなりましたので、続きはまた後ほど。
Commented by sdi at 2012-11-07 00:29 x
>「代替リスク」(alternative risks)という新しい概念を考えつきまして、「日本にとっては攻撃しないリスクのほうが、攻撃するリスクよりも高かった」ととらえます。

この分析には諸手を揚げて賛成です。私も「真珠湾攻撃をやらなかった場合どうなるか」という点から考えて「やらないわけにはいかなかったんじゃないか?」と考えたことはありますが、ここまでコンパクトにそのものスバリの結論まで到底たどりつけませんでした。
しかし「Pearl Harbor: Warning and Decision」がでたのが1962年で、しかもいまだに入手可能というのが凄い。日本の研究書でも引用している人がいる、かなあ・・・・・・。どんな内容の論文なんだろう。
Commented by 待兼右大臣 at 2012-11-08 00:09 x
>> sdi さん

>>「日本にとっては攻撃しないリスクのほうが、
   攻撃するリスクよりも高かった」

これも「真珠湾謀略説」の一因でしょう。

>>どんな内容の論文なんだろう
書評なら、グーグル先生に聞けば、いろいろ出てきます
(ただし英語)

余談
「クラウゼ"ウィツィーズ"」
と言う題名なのに、表紙絵が、スカートの(以下自主規制)・・・
by masa_the_man | 2012-11-06 23:06 | 日記 | Comments(2)