戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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グレイ著『現代の戦略』を読み解く⑨

今日の横浜北部は暑さがまた復活してきました。しかし夜になるとだいぶ涼しくなりますね。

さて、つづきのグレイの『現代の戦略』の要約です。今回は第十二章と最終章となる第十三章。これでようやく終わりです。

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―12:戦略史における核兵器

本章のテーマは「核兵器が戦略の理論と実践にどのような意味を与えてきたのか」というものであり、それを理解するために実際の戦略が形成されてきたコンテクストを提供。そしてそのためにはクラウゼヴィッツ的なアプローチを使うことを改めて強調。

まずクラウゼヴィッツの理論と核兵器には親和性があるのかどうかを論じる。ないとするローレンス・フリードマンの言葉を引用して批判しつつ、それでも核兵器は単なる「武器」の一つであり、戦略的な効果を発揮するものであると解釈する。核兵器も「兵器」なのであり、そのようにあアプローチしないとダメであると断言。

次に二つの「核時代」について説明。核兵器の観点から考えれば、二〇世紀は主に二つの時代に区別できると著者は主張。一つ目が「第一核時代」で、一九四五年から一九九一年のソ連の崩壊まで。「第二核時代」は、冷戦後以降から現在まで。この区分はテクノロジーによってなされるというよりも、むしろ世界政治の状況によってなされると分析。

現在は「第二核時代」だが、「第三核時代」もありえると主張。その「敵」となりうるのはロシアよりも中国であろうと分析。「第二核時代」は二〇年間続いてからその後に中国と対立することになるのではと予測

その次に、世界政治における核兵器の役割について論じるのだが、基本的に核兵器は「最後の手段」であることを認めつつも、それでも政治によって動かされるものであることを再び強調。

次に「核兵力と核戦略」という本章のメインの部分に移る。核戦略とその歴史の問題点を論じるのだが、そもそも「核戦争」は起こらなかったのであり、この事実が重大であると主張。元軍人のブルース・ブレアの言葉を引用しつつ、彼のような現場で働いていた専門家の分析でも実は怪しいと説く。それらはすべて「仮の歴史」だから。

それと似たような意味から、著者がならった六〇年代の戦略学も怪しいと説く。この分野の初期の学者たちはみんな軍事が専門ではなく、経済、数学、政治科学(合理選択理論)の人間たちばかり。著者は戦略学に文化人類学や歴史を専門とした人間が少ないことに疑問を呈している。

また、著者は戦略学の大きな三つの概念、つまり「抑止」「制限戦争」「軍備管理」の三つがいかにあやふやなものであったのかを、朝鮮戦争やベトナム戦争、それに実際のソ連との兵器削減交渉などの例を豊富に用いて分析。

また、核戦略の歴史の怪しさは、そもそも核兵器の影響がどのようなものか不明であることにもあると指摘。また、核兵器をもった米ソには意外と共通点が多くあったとして、

1、弾頭の数へのこだわり
2、残存性と効果を多様化しようとする動き
3、コントロールへの投資
4、ターゲティングを重要視
5、細部にこだわっていた

という五つの共通点を挙げている。また、核保有国は一様に核兵器を「最後の手段」であると認識していたことを指摘。

本章のまとめとして、「戦略はまだまだ続く」としながら、冷戦が冷戦のまま終わってよかったこと、しかし冷戦を初めから戦わなくてもよかったとする言説は間違っていること、核兵器の重要性を否定するのは間違っていること、そしてウェルトマンの本の意見を引用しつつ、現代の戦略はとりあえず成功してしてきたことなどを主張している。

また、核兵器以外の「非核大量破壊兵器」である生物・化学兵器などについては、①核を持った国というのはその動きがある程度予測できるが、非核兵器の場合は無理、②非核大量破壊兵器も核兵器と同じような倫理問題上の重みが出てきた、③非核大量破壊兵器も戦略的に使える、という三点を指摘して簡単にまとめている。

―13:戦略史における核兵器

本書の冒頭であるイントロで提出された「六つの質問」に答えるという形でまとめる。

①戦略の実践と理論はどのように交わるもの?

これについて著者は、「必要になるから理論が出てくる」という立場から「必要性」を強調。

②複雑化する現代の戦争準備は、戦略にとってどのような意味をもたらす?

これについては戦略の中の一つの要素(例:テクノロジー)だけを優れたものにしても意味がないと指摘。

③なぜ戦略はむずかしい?

上の質問と近いが、戦略には様々な面や要素があるから。戦略には「万能薬」が存在せず、一つの要因に優れていても他の要素との「摩擦」や弱点が浮かび上がってくるという難点があるから。

④戦略の位相の中でいくつかが優れていれば戦争に勝てる?

これについてはクラウゼヴィッツの議論を元にして「全体論的にアプローチすることの重要性」から否定的な見解を提示。戦略の要素は相互依存しており、統合的なアプローチが必要であることをあらためて強調。

⑤二〇世紀において、戦略の何が変わった/変わらなかった?

これについても「人間が変わらないから戦略の本質も変わっていない」という立場を誇示。ツールが変わっても人間のやることは同じなのだと強調。クラウゼヴィッツは「聖典」ではなっく、やはり時代のコンテクストに縛られていると認め、とくに戦闘の実態や政軍関係の難しさについてほとんど言っていないが、それでもかなり普遍的なことを言っているという意味で素晴らしいと断定。

⑥二〇世紀の戦略の経験は、二一世紀に何を教えている?

これについては基本的に「歴史は繰り返す」という立場をとっており、これからも「厳しい時代」は到来すると断言。また、現代でも「厳しい時代」というのは地球上のどこかに訪れれているものであるということを強調。テクノロジーが急速に発展しても戦争の形そのものは変わっていないとして、本書のまとめに、ソ連出身のノーベル賞作家、アレクサンドル・イサーエヴィチ・ソルジェニーツィンの印象的な言葉である、

われわれはコンピューターの時代に生きているのに、いまだに石器時代の法の下に生きている。大きなこん棒をもった男のほうが強いのに、まるでそれがウソであるかのように振る舞っているのだ」

を引用しつつ、戦争はその形が変わっても本質は変わらないことや、戦略史に敬意を払うべき人間は将来についても楽観的になるべきではない、として締めくくっている。

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長々と要約を書いてきましたが、これはある「宿題」のためです。この成果については来年の早春あたりにお見せできるかと思います。いましばらくお待ち下さい。
Commented by フランクリンプランナーに挑戦中 at 2012-11-13 23:45 x
私自身、本を読むのが好きなのですが、特に、このような類のほんを読むのが好きです。記事を読みながら、すごく興味がわいてきたので、さっそく読んでみたいと思います★
by masa_the_man | 2012-08-13 10:52 | おススメの本 | Comments(1)