戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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フェイスブックの幻想

今日の横浜北部は朝から晴れております。

さて、テクノロジーと人間社会についてまた記事の要約です。

今回はアメリカの若手保守系コラムニストによる、「ネット本当に新しいビジネス足りうるのか?」という興味深い分析を。

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フェイスブックの幻想
by ロス・ドーサット

●21世紀の最初の十年間に出てきた経済面での壮大な幻想が二つある。

●一つは「住宅価格はノーマルな経済のトレンドに束縛されずに上がり続ける」というものであり、もう一つは「われわれはウェブ2.0時代にネットを使って大いに稼げるようになる」というものだ。

●もちろん最初の幻想は2007年と2008年の住宅価格と株式市場の暴落で崩壊したが、ウェブ2.0という幻想は長続きしたため、騙されやすい投資家たちは、先週フェイスブックがNASDAQに上場した時に手痛い損害を被ったのである。

●フェイスブックがブルームバーグ・ビジネスウィーク誌に「ここ十年間で最悪の失敗」とされた上場であるが、これについて私は「そら見たことか」とほくそ笑んでしまったことを否定しない。

●ネット関連企業の中でも、マーク・ザッカーバーグのソーシャルネットワーキングサイトは私の中で最も不健全なものであり、ネットの中でも人間にとって好ましくない一面に頼って成功したものだと感じていた。

●その「好ましくない面」とは、個人の自己ファッション化であり、自己宣伝であり、仮想上の「コミュニティー」の追求であり、表層的な「友情」であり、広告費を追求したプライベートな空間の容赦ない削減である。

●本コラムをお読みの方々の中でフェイスブックの愛好者もいるだろうが、ここで気づいていただきたいのは、フェイスブックのマーケットでの失敗は、インターネットの商業面での限界を露呈した、ということだ。

●ニューヨーカー誌のジョン・キャスディー氏はフェイスブックが上場する前に書かれた優秀な記事の中で、「問題は、フェイスブックが儲けることが難しいということではない」と指摘している。

●つまりフェイスブックはそもそもそれほど儲けることができない仕組みであり、さらに儲ける明白なビジネスモデルを持っていないのだ。なぜなら他のサイトと同じように、何百万人もの使用者がいるのに彼らから効果的にお金を支払ってもらうやり方を考えついていないからだ。

●結果的に、会社はたしかに成功しているが、期待されたほどバランスシートの数字は良くないのだ。

●この「広がりは大きいが儲けは限定的」という問題は、デジタル経済全体にも言えることだ。

●ジョージ・メイソン大学の経済学者タイラー・カウエンが2011年に出版した電子書籍『大いなる沈滞』でも述べているように、インターネットというのは「チープな楽しみ」を発生させるという意味では素晴らしい働きをするのだ。

●ところが「あまりにも多くのものが無料」であり、しかも一般的なウェブ会社の作業は「ソフトやサーバーで自動的に行われている」ために、ネットの世界というのは雇用を生み出すという点ではあまり成果をあげていないのだ。

●デジタル時代に成功している会社の名前としてよく挙げられるのがアップルとアマゾンであるというのは非常に興味深い。なぜならこの二社とも、具体的に手に取れる物理的なグッズを生産して届ける、というビジネスモデルを基礎に持っているからだ。

●アップルの「売り」は、美しく高性能な電子機器であり、アマゾンの場合はDVDからおむつに至る様々なものを、あなたの家までお届けするサービスなのだ。

●それに比べて、純粋にデジタルな会社のプロダクトでは絶対的な雇用数を生むことはないし、ユーザー一人から支払われる額も少ない。この現実は、ここ10年間でジャーナリストたちが直面してきたものであり、フェイスブックの投資家たちも直面したのだ。

●もちろん例外はあるだろう。ただし長年ネット上でも最も儲けてきたポルノサイトでさえ、最近はアマチュアが作った動画サイトなどに押されて利益が下がってきているため、「プロ」たちもその産業を独占できなくなってきている。

●ドイツの哲学者ヨゼフ・ピーパーは1952年に『余暇:文化の基礎』という本を出版しているが、彼ならネット上に展開されている文化にはあまり関心を持たないかもしれない。

●ところが、インターネットの基礎にあるのは明らかに「余暇」なのだ

●ウィキペディアなどの例でもわかるように、ネット上の多くのコンテンツは見返りを求めない人々の「余暇」によって提供されたものなのだ。

●この意味で「新しい経済」というのは商業経済でさえないことになる。

●スレート誌のマシュー・イグレシアスが示しているように、ネットというのは趣味人たちの楽園なのであり、これから段々と後を継ぐことになるはずの古い経済の「余剰金」によって補助されているものなのだ。

●アメリカの雇用統計の最新版を見てもわかるように、この現実はよく現れている。つまりほぼ二十年間にわたる「ドットコム経済」への熱狂にもかかわらず、経済全体におけるIT企業の占有率はまだ非常に小さいし、この業界の失業率はいまだに高く、去年の統計では失業率が上がった数少ない業界のうちの一つなのだ。

●もちろんこれらはインターネットの革命性を失うものではない。しかしその「革命」というのは、経済というよりも文化で起こったものなのだ。

●Twitterはフォードじゃないし、グーグルはGEでもない。ザッカーバーグ氏がわれわれの目玉を二束三文で広告会社に売るようなことでも始めない限り、われわれ全員が彼の会社で働くような時代はこないのだ。


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最近は「第三の波」で有名なトフラーの書いたものを読んでいるのですが、地政学や戦略学におけるテクノロジーの発展と同じように、次元というのは重なって発展していくものなんですよね。

つまり「ネットだけで成功する」というのは、エアパワー論者の「戦略爆撃(空爆)だけで戦争に勝てる!」というのと近いのかと。

ここでいう「戦略爆撃」というのは「情報」、そして「戦争」を「ビジネス」といいかえてみれば上の分析にも当てはまりますね。

アップルやアマゾンが「情報」だけでなく、「モノを売る」という基本を忘れていないために成功した、という指摘や、ネットによって革命が起こったのは「経済」ではなく「文化」だ、という分析もなかなか興味深いかと。

重要なのは、やはり二次産業と三次産業の間を狙う、ということなんでしょうか。

別の言い方をすれば、「ソフト」(情報)と「ハード」(具体的なプロダクト)の中間を狙うのがこれからのネット産業の正しい方向なのかと。
Commented by 上山祐幸 at 2012-05-30 09:22 x
こちらへの投稿は久しぶりです。

私は、自分の理論の前提としてサイバースペースも地理空間と認識しうると考えていたのですが、やはり物理的にというのが非常に重要になってきますね。

サイバースペースはむしろ「架け橋」なのかもしれません。でも、架け橋だけでは儲けるのは非常に難しいということが分かったというのが、フェイスブックのつまづきなのかもしれません。

最近の奥山さんのブログは、非常に人文地理学的で「おおっ!」と思わせられてしまいます。
Commented by t at 2012-05-30 13:02 x
んー、原文も見てきましたが、「21世紀の産業ではゲームのルールが違う」という主張の意味を咀嚼しないで書いてる感じですね。
ニューエコノミー派からすれば、だからどうしたの?という反応になると思います。

あと、(雇用数はともかく)一人あたり売上がなかなかのものになっている、グリーやモバゲーを知ったらこの筆者は何と言うんでしょうね。

#まあ株価だけ見て「失敗した!」と言ってるあたり釣り記事なのかもしれませんが。
#シリコンバレー企業は日本と違ってデカくなってからマネタイズするので、Facebookが収益性上げるのはこれからのフェーズですし。
Commented by だむ at 2012-05-30 20:58 x
まあ、この会社がそう長く持ちそうにないのはみんなわかってたしねえ。破綻したところで「まあほかの末路はあり得ないわなあ」ということ。だいたい、爛熟と衰退のフェーズに入った情報技術分野で儲かるビジネスなんか、すくなくともマトモな商売においてはあり得ない。
Commented by na at 2012-05-30 21:22 x
Googleはどういう位置付けになるんでしょか。
Commented by Kenji at 2012-05-31 11:47 x
Facebookがスマートフォンを独自開発してるという噂はそういうことなのかな?
Commented by masa_the_man at 2012-06-24 07:39
上山さんへ

>サイバースペースも地理空間と認識しうると考えていたのですが、やはり物理的にというのが非常に重要

人間は基本的に物理世界に生きてますので

>サイバースペースはむしろ「架け橋」なのかもしれません。でも、架け橋だけでは儲けるのは非常に難しい

ですなぁ。

>非常に人文地理学的で「おおっ!」と

戦略などを学ぶ前はこっちに主な興味があったので、昔に戻っているような気が。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2012-06-24 07:40
t さんへ

>(雇用数はともかく)一人あたり売上がなかなかのものになっている、グリーやモバゲーを知ったらこの筆者は何と言うんでしょうね。

たしかにそれは気になるところ。

>シリコンバレー企業は日本と違ってデカくなってからマネタイズするので、Facebookが収益性上げるのはこれからのフェーズ

なるほど。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2012-06-24 07:41
だむさんへ

>爛熟と衰退のフェーズに入った情報技術分野で儲かるビジネスなんか、すくなくともマトモな商売においてはあり得ない。

まだ「マトモ」かどうかも見極めきれていない、ということなんでしょうかね。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2012-06-24 07:42
na さんへ

>Googleはどういう位置付けになるんでしょか。

鋭いツッコミかと。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2012-06-24 07:42
Kenjiさんへ

>Facebookがスマートフォンを独自開発してるという噂はそういうことなのかな?

かもしれません。リアルな物品販売とつなげたいと。コメントありがとうございました
by masa_the_man | 2012-05-30 09:12 | 日記 | Comments(10)