戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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ベンチャー企業の地政学

今日の横浜北部はよく晴れました。土曜日でこれだけよく晴れたのは久しぶりじゃないですか?

さて、IT系企業の立ち上げに必要なベンチャーキャピタルについての興味深い記事がありましたのでその要約を。

内容はヨーロッパではなぜフェイスブックのような企業が育たないのか、その考察です。けっこう「地政学的」な話だったのでビックリ。

===

ヨーロッパのテクノロジー会社の立ち上げの苦労

●パリ郊外のヌイイ=シュル=セーヌのオフィスビルの上階には、ネットビジネスで一旗揚げようとする若者が集まっている。

●彼らは次のグーグルやフェイスブック、それにジンガなどを狙っているのだが、シリコンバレーと違って、何かが足りない。

●それは、マネーである。

●アメリカのシリコンバレーでは、ネットビジネスを開始しようとすると、ベンチャーキャピタリストたちがかなり初期の段階から資金を用意してくれることが多い。

●ところがヨーロッパではビジネス立ち上げの資金を得るまでかなり長いこと待たなければならないことが多く、しかもその資金源が、なんとフランスの福祉手当だったりするから驚きだ。

●ある人物によると、最もビジネスの立ち上げに「やさしい場所」とは、フランスでは失業手続き事務所だという。

●ヨーロッパでは経済状態が悪くなっており、ほとんどの大企業は人員削減をしているなか、これから成長が見込まれるのは、新しいテクノロジーを使った小さなベンチャー企業だ。

●ヨーロッパの経済界は、全体的な経済状況が悪いながらも、アメリカでフェイスブックのような会社が生まれていることをうらやましく思っている。なぜならヨーロッパの将来の経済成長をささえるのはそのような小さな企業だと知っているからだ。

●ヨーロッパ自身もハイテクによるイノベーションが重要であることを十分わかっており、さまざまな方針を打ち出しているのだが、現在までの結果はそれほど芳しいものではない。

●たとえばボストンコンサルティングによると、ネットビジネスは2010年の時点でアメリカのGDPの4.7%を占めるが、ヨーロッパでは3.8%である。

●そして興味深いのは、北欧諸国のほうが一般的に上手くやっており、相対的に南のヨーロッパの国々はダメである。

●しかもヨーロッパ内では、フェイスブックやアマゾンやアップルなどのほうが、本国よりもヨーロッパのマーケットでの占有率が高かったりする。

●もちろんヨーロッパにもネット企業で有名なものがある。アングリーバーズというゲームを大ヒットさせたRovioや、音楽のストリームサイトであるSpotify、それにSoundcloudという音楽の共有サイトなどだ。

ヨーロッパでここ数年最もネット企業の設立が盛んなのはベルリンで、ここはロンドンと肩をならべる位になっている。

●ところがヨーロッパのネット企業のほとんどに共通する問題は、国の壁を越えるのがむずかしいという点だ。

●世界的な企業に発展するには、アメリカや日本にある巨大なネット企業に身売りするというのが一般的な形になっている。その典型がTweetDeck やLastFM, それにPriceMinisterである。

●ではなぜヨーロッパはグーグルやフェイスブックをつくれないのだろうか?その理由はかなり複雑だ。

●ある人は、ヨーロッパのベンチャーがシリコンバレーのものをマネしすぎだと分析している。またある人は、ヨーロッパの企業には野心的な野望がないと言っている。またまたある人は、ヨーロッパのマーケットが細かく言語や法体制の違いなどで分裂していることを挙げている。

●ところがブリュッセルのある研究所によれば、ヨーロッパのベンチャーに全て共通している点が一つある。それはリスクのある事業に融資しようという資金、とくにプライベートキャピタルの少なさである。

●とくにヨーロッパの大陸系の投資家たちは、ドットコムバブルがはじけた時に痛手を被ったからだ。ベンチャーキャピタルにつぎ込む投資額は二〇〇七年からはじまった金融危機で下がってきている。二〇〇七年には82億ユーロだったものが、二〇一〇年には32億ユーロまで下がっているのだ。

●ちなみに去年は48億ユーロに戻している。

●驚くのは、緊縮財政が唱えられているにもかかわらず、ヨーロッパでは税金がベンチャーキャピタルの最大の資源となっていることだ。しかもこれらの資金は直接ビジネスの設立資金としても使われいる。

●たとえばフランスの国富ファンドはパリにあるViadeoというソーシャルネットワークの会社や、動画のシェアサイトであるDailymotionに直接出資しているのだ。

●政治家たちもシリコンバレーのような国内環境づくりに努力しはじめている。たとえばイギリスはキャメロン首相が二〇一二年のオリンピックの跡地にIT企業を誘致して特区化する構想を出している。

●ロシアはスコルコヴォという町をシリコンバレー化する計画だ。フランスはサクレーと呼ばれる地区にIT特区を作っている。

●ところがこのフランスの計画はすぐに実を結ぶわけではない。ここにできる予定のパリ・サクレー大学は二〇一四年までオープンしないし、そこに住む住居環境も二〇三〇年まで完成しないという。

●面白い動きとしては、シリコンバレーの投資家たちがヨーロッパに投資しようとしはじめている点であろう。しかしアメリカの投資家たちの特徴は、すでに動き出しているプロジェクトに資金を提供するというものだ。

●よって、ヨーロッパ側の矛盾は、プロジェクトを始めるには金がいるのだが、金を調達するにはまずプロジェクトがすでになければダメ、という悪循環の存在なのだ。

====

非常に興味深い。新規IT事業の立ち上げに必要なのも、やはり「パワー」という意味でのマネーなんですな。ヨーロッパ内の南北差なども地政学的。

そして地理的に言語やルール、それに文化が統一されているアメリカ(と日本?)のほうがベンチャー企業には都合が良い、というのも何かを示しているような気が。
Commented by Kenji at 2012-05-19 23:13 x
つまるところ、地理的な"場所"ではなく"お金(VC等)や人(先輩起業家や投資家のネットワーク)が集まってるところ"ということですね。ヨーロッパでも日本でもなく、アメリカ。。アメリカでも東海岸ではなく、シリコンバレー。。。より大切なのは、お金より人なのかもしれません。
Commented by masa_the_man at 2012-05-19 23:44
Kenjiさんへ

>集まってるところ"ということですね

つまり「地理」ということにもなるかと。

>より大切なのは、お金より人なのかも

同意しますが、その「人」がどこに集まっているのか、というところも重要かと。上のケースで出ているのは、優秀な人(と金とネットワーク)を一カ所に集中させる、ということなので。鋭いコメントありがとうございました
Commented by ko at 2012-05-20 06:40 x
ちなみに、「ウェブはバカと暇人のもの」の著者、中川淳一郎氏は、自分の仕事仲間は、基本的に、自らと気の合う「友達」で固めてるそうです。それが一番「成果」が上がると。あくまでも、出版・編集の世界のお話でしょうが、ここには普遍的な、何かの示唆がありますね。
Commented by ナリ at 2012-05-20 07:19 x
シリコンバレーについては、金及び環境もさることながら、成功者を身近で見れる強みって大きい気がします。「あいつでも成功できるんだから俺だって出来るさ。」こう思って事業をやるのと、遠くのおとぎ話を夢見て事業をやる。そりゃ、前者の方が成功しますよね。
Commented by masa_the_man at 2012-05-20 22:36
ko さんへ

>自分の仕事仲間は、基本的に、自らと気の合う「友達」で固めてるそうです。それが一番「成果」が上がると。

なるほど。

>あくまでも、出版・編集の世界のお話でしょうが、ここには普遍的な、何かの示唆がありますね。

それが「一カ所に地理的に集中する」ということにつながるのかもしれません。コメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2012-05-20 22:38
ナリ さんへ

>成功者を身近で見れる強みって大きい気がします。

あー、それはまったくその通りかと!

>「あいつでも成功できるんだから俺だって出来るさ。」こう思って事業をやる

違いが出ますね。コメントありがとうございました
Commented by 待兼右大臣 at 2012-05-20 22:40 x
>>自らと気の合う(以下略)

これは、「世界観」のすりあわせが必要ないということだと思います。
(場合によっては、戦略レベルまで)

勿論、組織としては、係長やヒラレベルでは
「【世界観】はともかく、戦術レベルでの共通理解」
があればいいということもあります。

会社の幹部や個人営業的な仕事であれば、
1 大方針は一致しているが、方法論が異なる
2 大方針は異なるが、方法論は同じ
のどちらかを選べというのであれば「1」を選ぶことになると思います。

少し、強引にひきつければ、電力事業の「発送電分離」や鉄道の「上下分離」のデメリットとして、【分離】した会社間の方向性(世界観~戦略レベル)のすり合わせに手間 (経済学では「取引費用」といいます) がかかり、回りまわって、料金や事故処理等々に跳ね返ってくることになるからです。
Commented by ko at 2012-05-21 07:00 x
>>これは、「世界観」のすりあわせが必要ない

なるほど!確かにそれは仰る通りですね。
この「摺り合わせ」ってのが何気に難儀ですからねぇ〜(^^;...

Commented by masa_the_man at 2012-05-24 18:18
待兼さんへ

>これは、「世界観」のすりあわせが必要ないということだと思います。

なーるほど!たしかに・・・

>勿論、組織としては、係長やヒラレベルでは「【世界観】はともかく、戦術レベルでの共通理解」があればいい

そうなりますなぁ

>どちらかを選べというのであれば「1」を選ぶことになると思います。

ふむふむ。

>電力事業の「発送電分離」や鉄道の「上下分離」のデメリットとして、【分離】した会社間の方向性(世界観~戦略レベル)のすり合わせに手間

ここがネックだと。鋭いコメントありがとうございました
Commented by masa_the_man at 2012-05-24 18:20
ko さんへ

>この「摺り合わせ」ってのが何気に難儀ですからねぇ

人間の「思想」が入ってくるので、かなり厳しいところかと。とくにこれからの「考えの多様性」とかを尊重する変な「多元主義」の時代には大変ですよねぇ。コメントありがとうございました
Commented by Escher at 2012-05-30 23:50 x
>同意しますが、その「人」がどこに集まっているのか、というところも重要かと。上のケースで出ているのは、優秀な人(と金とネットワーク)を一カ所に集中させる、ということなので。鋭いコメントありがとうございました

はじめてお邪魔します。「ベンチャー成功の条件が人と金とネットワークの集中」であるならば、シリコンバレーに次ぐ成功の地は関東地方になるのではないでしょうか? 人とネットワークはシリコンバレーよりも集積度が高いくらいで、問題なのは言語(日本語)だけというのが今の東京なのではないでしょうか?
Commented by Escher at 2012-05-30 23:53 x
社内公用語を英語化し、ここにも登場したPriceMinisterなどヨーロッパのベンチャーをグループ化し始めた楽天は、「非米国ベンチャーの連合体による世界制覇」の外線戦略をもっているのではないでしょうか?
Commented by masa_the_man at 2012-06-24 07:45
Escher さんへ

>「ベンチャー成功の条件が人と金とネットワークの集中」であるならば、シリコンバレーに次ぐ成功の地は関東地方

これを考えれば、韓国のソウルも。

>人とネットワークはシリコンバレーよりも集積度が高いくらいで、問題なのは言語(日本語)だけというのが今の東京なのではないでしょうか?

ありえますね。

>楽天は、「非米国ベンチャーの連合体による世界制覇」の外線戦略をもっているのではないでしょうか?

できるかどうかはわかりませんが、そっちを狙っている部分はあるでしょうねぇ。コメントありがとうございました
by masa_the_man | 2012-05-19 22:57 | 日記 | Comments(13)