2012年 05月 18日
アフガニスタン支援の分裂 |
今日の横浜北部は昼過ぎに雷とにわか雨が来た以外は晴れて気持ちよい一日でした。
さて、日本ではあまり報道されておりませんが、今週末からアメリカのシカゴで開催されるNATO首脳会議が安全保障や大戦略の分野としてはビッグニュースなので、その話題についての記事の要約を一つ。
===
サミット直前にアフガニスタン支援で意見の分裂させるNATO諸国
●NATO軍がアフガニスタンからの撤退を加速させている現在、あまり確実なことはない。
●ところがその中でわずかに存在する「確実なこと」というのは、アフガニスタンで達成できることについて、大陸国家たちのほうが英米よりも悲観的である、ということだ。
●ヨーロッパ経済が不安定になる中で、相変わらずアフガニスタンの状態は改善していないし、彼らの支援もすぐにもくずと消えてしまって効果が全く見えないからだ。
●さらに問題なのは、タリバンだけでなく、民族間での武力抗争も次第にアフガニスタン全土で激しくなっていることだ。
●ところが英米両国は状況の改善に楽観的だ。アフガニスタンの警備隊の質は向上しているし、カルザイは再選出馬を否定しているし、タリバンは和平交渉に積極的だというのだ。
●私が現地でさまざまな国の政府高官にインタビューしたところでは、この英米とヨーロッパの大陸国家の間には大きな意識の隔たりがある。
●今週末からシカゴではじまるNATOサミットだが、ここでの中心的な議題は2014年に撤退した後のアフガニスタンの警備隊に対する資金援助を関係各国がどう負担するか、である。
●「ヨーロッパの国々は経済的に困難な状況にあり、しかもその国の市民たちは11年間もアフガニスタンに関与していて疲れております。アメリカにとって重要なのはその資金をアフガニスタン国民軍にどう与えるかですが、ヨーロッパ諸国にとっては違うのです」とは、あるヨーロッパの国の外交官の言葉。
●噂されているのは、シカゴの会合でNATO諸国で2014年以降の10年間のために毎年41億ドルを拠出することを決定する、という取り決めだ。
●アメリカはそのうちの三分の二を提供すると見込まれている。
●ところがヨーロッパ側の国々にとってはかなり厳しい。というのも、彼らはNATO軍よりもその金を病院や学校に使いたいからだ。
●7月には東京で今度はアフガニスタンの再建プロジェクトについて話す会議が開かれるが、そこまでにヨーロッパの国々の議会がシカゴで約束した金額を出すことに合意するという保証もない。
●「カルザイとアメリカにとっては安全保障が一番のテーマであるために、われわれがいくらアフガン政府の統治や腐敗について指摘しても何も意味がないのです」とは別のヨーロッパの外交官。
●もちろん米英側もアフガニスタンの政府の問題については考慮しているところはあるのだが、彼らにとって最大の懸念は、1989年のロシアの二の舞になることを避けることだ。
●その当時にソ連が支援していたナジブラ政府は、ソ連からの資金が途絶えると数ヶ月後に崩壊してしまったからだ。
●アメリカのある政府高官は「みんな自国の経済で苦しんでいるのはわかるが、これはそれ以上に深刻な問題なんです。アフガニスタン軍を崩壊させるわけにはいきません」と言う。
●アメリカはこのシカゴ会談に先立ち、今年の一月の時点で、すでに他の国々の負担すべき額を提示している。
カナダ:1億2千5百万ドル
フィンランド:2千万ドル
フランス:2億ドル
スウェーデン:4千万ドル
ところがギリシャだけは経済危機のために拠出を免除されている。
●もちろん他の国々はこのアメリカのやり方に不満を持っている。たとえば同じくらいの規模の国でも、援助額が微妙に違っていたりするからだ。
●結果として、現在までわかっているのは、アメリカが求めている総額のおよそ6割くらいの額しか出さない、ということ。
●たとえばイギリスは2億ドル拠出するように言われたが、実際はその半分ちょっとの1億1千万ドルだけであり、フランスは大統領選挙で政権が左派に変わったため、新大統領のオランドはシカゴには何も土産を持ってこないと見込まれている。
●彼らの不満は彼らがアフガニスタンになんの利害も持っていないから、というわけではな決してない。彼らは人道目的などで過去25年間にわたって支援してきた。
●ところが彼らを心配させているのは、それだけの期間支えたのに、何も成果が現れていないという部分だ。
●さらにNATOが撤退した後にアフガニスタンが内戦に陥るのは確実であり、彼らはアメリカの予測があまりにも楽観的であると見ている。
●あるヨーロッパの外交官によると、「現在のアフガニスタンで行われている最大の任務は民族間抗争を防ぐことなんですよ。ましてやそれが2014年の後になれば、これは悲観的にならないほうがおかしいですよ」とのこと。
●別の外交官は、「うちの国ではもうメディアもアフガニスタンについては取り上げませんね。国民の意識からアフガニスタンは消えてしまったかのようです」と言っている。
====
七月に日本で次のNATO会議が開催されるということは・・・まあ日本も金をしこたまふんだくられるんでしょうなぁ(苦笑
また、これをNATOという「リムランド連合」の内部での「ランドパワー vs. シーパワー」という対立という面から見ても面白いかと。
さて、日本ではあまり報道されておりませんが、今週末からアメリカのシカゴで開催されるNATO首脳会議が安全保障や大戦略の分野としてはビッグニュースなので、その話題についての記事の要約を一つ。
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サミット直前にアフガニスタン支援で意見の分裂させるNATO諸国
●NATO軍がアフガニスタンからの撤退を加速させている現在、あまり確実なことはない。
●ところがその中でわずかに存在する「確実なこと」というのは、アフガニスタンで達成できることについて、大陸国家たちのほうが英米よりも悲観的である、ということだ。
●ヨーロッパ経済が不安定になる中で、相変わらずアフガニスタンの状態は改善していないし、彼らの支援もすぐにもくずと消えてしまって効果が全く見えないからだ。
●さらに問題なのは、タリバンだけでなく、民族間での武力抗争も次第にアフガニスタン全土で激しくなっていることだ。
●ところが英米両国は状況の改善に楽観的だ。アフガニスタンの警備隊の質は向上しているし、カルザイは再選出馬を否定しているし、タリバンは和平交渉に積極的だというのだ。
●私が現地でさまざまな国の政府高官にインタビューしたところでは、この英米とヨーロッパの大陸国家の間には大きな意識の隔たりがある。
●今週末からシカゴではじまるNATOサミットだが、ここでの中心的な議題は2014年に撤退した後のアフガニスタンの警備隊に対する資金援助を関係各国がどう負担するか、である。
●「ヨーロッパの国々は経済的に困難な状況にあり、しかもその国の市民たちは11年間もアフガニスタンに関与していて疲れております。アメリカにとって重要なのはその資金をアフガニスタン国民軍にどう与えるかですが、ヨーロッパ諸国にとっては違うのです」とは、あるヨーロッパの国の外交官の言葉。
●噂されているのは、シカゴの会合でNATO諸国で2014年以降の10年間のために毎年41億ドルを拠出することを決定する、という取り決めだ。
●アメリカはそのうちの三分の二を提供すると見込まれている。
●ところがヨーロッパ側の国々にとってはかなり厳しい。というのも、彼らはNATO軍よりもその金を病院や学校に使いたいからだ。
●7月には東京で今度はアフガニスタンの再建プロジェクトについて話す会議が開かれるが、そこまでにヨーロッパの国々の議会がシカゴで約束した金額を出すことに合意するという保証もない。
●「カルザイとアメリカにとっては安全保障が一番のテーマであるために、われわれがいくらアフガン政府の統治や腐敗について指摘しても何も意味がないのです」とは別のヨーロッパの外交官。
●もちろん米英側もアフガニスタンの政府の問題については考慮しているところはあるのだが、彼らにとって最大の懸念は、1989年のロシアの二の舞になることを避けることだ。
●その当時にソ連が支援していたナジブラ政府は、ソ連からの資金が途絶えると数ヶ月後に崩壊してしまったからだ。
●アメリカのある政府高官は「みんな自国の経済で苦しんでいるのはわかるが、これはそれ以上に深刻な問題なんです。アフガニスタン軍を崩壊させるわけにはいきません」と言う。
●アメリカはこのシカゴ会談に先立ち、今年の一月の時点で、すでに他の国々の負担すべき額を提示している。
カナダ:1億2千5百万ドル
フィンランド:2千万ドル
フランス:2億ドル
スウェーデン:4千万ドル
ところがギリシャだけは経済危機のために拠出を免除されている。
●もちろん他の国々はこのアメリカのやり方に不満を持っている。たとえば同じくらいの規模の国でも、援助額が微妙に違っていたりするからだ。
●結果として、現在までわかっているのは、アメリカが求めている総額のおよそ6割くらいの額しか出さない、ということ。
●たとえばイギリスは2億ドル拠出するように言われたが、実際はその半分ちょっとの1億1千万ドルだけであり、フランスは大統領選挙で政権が左派に変わったため、新大統領のオランドはシカゴには何も土産を持ってこないと見込まれている。
●彼らの不満は彼らがアフガニスタンになんの利害も持っていないから、というわけではな決してない。彼らは人道目的などで過去25年間にわたって支援してきた。
●ところが彼らを心配させているのは、それだけの期間支えたのに、何も成果が現れていないという部分だ。
●さらにNATOが撤退した後にアフガニスタンが内戦に陥るのは確実であり、彼らはアメリカの予測があまりにも楽観的であると見ている。
●あるヨーロッパの外交官によると、「現在のアフガニスタンで行われている最大の任務は民族間抗争を防ぐことなんですよ。ましてやそれが2014年の後になれば、これは悲観的にならないほうがおかしいですよ」とのこと。
●別の外交官は、「うちの国ではもうメディアもアフガニスタンについては取り上げませんね。国民の意識からアフガニスタンは消えてしまったかのようです」と言っている。
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七月に日本で次のNATO会議が開催されるということは・・・まあ日本も金をしこたまふんだくられるんでしょうなぁ(苦笑
また、これをNATOという「リムランド連合」の内部での「ランドパワー vs. シーパワー」という対立という面から見ても面白いかと。
by masa_the_man
| 2012-05-18 23:26
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