戦略や地政学の視点から国際政治や社会の動きを分析中


by masa_the_man
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野中氏による特別講演のメモ

今日の横浜北部は朝から雨でした。まるで梅雨みたいですね。

さて、昨日参加した戦略研究学会の年次大会での野中郁次郎氏の講演内容をここにアップしておきます。

野中氏についてはご存知の方にとっては言うまでもないことですが、経営戦略の理論ではハーヴァードビジネスレビューに論文が何度も載るほど世界的に有名な人物です。

最近では名著『失敗の本質』の執筆者の一人としても再び注目されておりまして、今回の特別記念講演はそれにそった軍事戦略に関係した内容でした。

実は私は体調が万全でなかったためにどこまで正確にメモがとれているか怪しいのですが、学会のホームページなどにはおそらく講演の要約などは掲載されないと思うので、私がボランティアでここに簡単なものを載せておきます。

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●日本は過去の成功にとらわれすぎるところがある。英語でいえばoveradaptation to past successという感じだ。

●司馬遼太郎は小説で明治のリーダーたちに「リアリズム」があったと何度も主張しているが、これは英語でいえば「プラグマティズム」(pragmatism)のことだろう。それはつまり物事の判断にイデオロギーを持ち込まなかったということ。

●この「プラグマティズム」については、シンガポールのリークワンユー大学のマブマニ学長と話していたときにひどく一致したことがある。

●アメリカもそういう意味では「プラグマティスト」だが、ときどきひどく理想主義に振れるところがある。

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●最近また売れている『失敗の本質』だが、これは執筆者が歴史家と経営学者でわかれていたために生まれたものだと思っている。

●最初にダイアモンド社に持ち込んだときは編集者の人に「これは売れませんよ」と言われた。その編集者は後に偉くなって社長までつとめたが。

●この本を書くときは正直気持ちが暗くなった。生き残りの方々にインタビューも行ったのだが、とにかく日本の「失敗」がテーマなので暗くなって当たり前だ。

●それで同じ執筆者で「成功した事例をまとめよう」と思って書いたのが、『戦略の本質』だ。
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●ところが日本には負けそうになっていたのに逆転して勝ったという事例が少ないので、使う戦史の幅を広げてグローバルにした。

●執筆者が歴史家と経営学者でわかれていたと言ったが、歴史家たちは何よりも証拠やデータの存在が全て。

●ところが私のような経営学者がやるのは、未来を作るためのフィクションの提供なのだ。いわば、ストーリーやナレティブを作る仕事だから、当然のように話が合わなくなる。

●最近の経営戦略では、よく「針ネズミ」と「キツネ」という二つのモデルから戦略を分析するものがある。イザヤ・バーリンの分析が元になっている?

●「針ネズミ」はいわば単眼志向で、一つの要素・モデルに注目するものだ。効果を上げるときはものすごいが、悪く働くとイデオロギーに陥りがち。

●「キツネ」のほうが物事を複雑なまま理解しようとする、いわば折衷主義。研究によればこちらのモデルのほうがベターな結果を得られるらしいが、グレートな結果は出ない。

●チャーチルの戦略にたいする取り組みを見てみると、コンテクストごとにさまざまなアプローチをしていることがわかる。

●ギリシャ哲学が参考になる。「アテネの学堂」という有名な絵があるが、あれが象徴的だ。
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●左のプラトンは天にある「イデア」のほうが大事だと説くが、その弟子のアリストテレスはただひたすら現実の中に真理があるとし、そこから見いだされる「フロネシス」(賢慮)が大事だと説いた。これは「演繹」と「帰納」の違いと言っても良い。

●われわれの世代にとって原節子という存在は「アイドル」だ。これはまさに「イデア」だ。

●マイケル・ポーターはcreating shared value(CSV)が大切だと言った。

●私は「フロネティックリーダー」が必要であると思って提唱している。実践知のあるリーダーということだが、以下のように六つの能力が必要だと考えている。

1、善悪の判断ができる
2、コンテクストの共有感覚を熟成できる(ユーモア・ジョークが上手い)
3、現実を見つめる目を持っている(realityではなくactuality)
4、本質や直観で得たものを、生きた言葉で再構築できる能力。
5、共通善に向けて実現する能力。組織力。
6、賢慮を育成する能力

●優れた日本のリーダーを調査してわかった面白いことがある。例えば本田宗一郎などは、半分以上が猥談。いまならセクハラで訴えられるレベル。これも時と状況を上手く使い分けないとだめ。

●realityは自分が入っていない、いわば客観的な観察。しかしactualityのほうは自分がそこに入って体験しているレベル。

●レトリックは非常に重要である。なぜならリーダーというのは、自分のビジョンを言葉を使って他人にも共有させる必要があるからだ。

●アンソニー・ビーバーの『ノルマンディー上陸作戦』はすぐれた本だ。日本ではこういう本は書かれないはず。ここまで調べられない。
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●ノルマンディーは『戦略の本質』にも入れたかったが無理だったエピソード。

●チャーチルからわかるのは「歴史的想像力」があったこと。彼は前任者であるドレークやジョン・チャーチル、ネルソン、ウェリントンについてよく読んでいた。

●チャーチルは「数人で議論して、最後は私が独断」という方式でやっている。

●マイケル・ポランニーが「暗黙知」というヒントをくれた。「暗黙知」を身につけるには経験しかない。

●まとめていえば、リーダーには、「教養」と「至高体験」、それに「実践と伝統」のいずれかが必要。

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ということです。なんか思ったよりメモ取れてないですね・・・・。

どなたか補足情報があれば、コメント欄にお願いしたいところです。

ちなみに野中氏が講演の最初で言っていることは、戦略学では「勝利病」(victory disease)と呼ばれております。
by masa_the_man | 2012-04-23 21:00 | 日記 | Comments(0)